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拗らせ王子視点
未定
しおりを挟むシェニー本人は自分は
強気、勝気でいつも冷静沈着な態度でいると思っているみたいだが
本当は少し弱気で
俺がちょっかいを出すといっぱい怒るし
俺がサラと仲良くしていると
いつもあの可愛い泣きそうなぷくっと顔で恐る恐るやってくる。
それがまた俺の加虐心を煽っていた。
でもベンチに座っている彼女は
俺が知らないシェニーだった。
時には本を読み、時には聞こえるか聞こえないかの鼻歌を歌い時にはうたた寝をしたり。
穏やかな表情のシェニー。
いつも俺でいっぱいいっぱいなはずなのに
そのわずかな時間。
そこは彼女ひとりだけの世界があった。
その日もシェニーの気を引きたくて
お昼休みになるとサラを迎えにいき
弁当片手に追いかけっこをスタートさせた。
弁当はいつもサラが持ってきてくれるのを食べていた。シェニーに仲の良さを見せつけて嫉妬させたくていつも用意してもらっている。
城の料理長はさすがに困惑していたが
俺の拗らせ具合は城内では有名だった。
その日はただなんとなくどこで食べるか
迷った俺はいつもシェニーが時間を潰していたベンチを思い出しなんの躊躇いもなくそこでシェニーが来るまで弁当を食べながら時間を潰した。
そして今座っているベンチがシェニーのお気に入りの場所というのはわかっていた。
どんな顔でここに来るのだろう
加虐心に煽られた。
しばらくしてからシェニーは悲痛な面持ちで座っている俺たちを見つめながらやってきた。
それは子供が大事にしていたおもちゃを無理やり取り上げられた時に見せる
沈痛な表情だった。
いつもの俺たちにむける顔とは
あきらかに違う悲しげな表情に
さすがにやりすぎたと思った。
俺はシェニーから大切な心安らげる場所を奪ってしまったのだ。
その日以来、彼女は放課後そのベンチに
行くことはなくなった。
そしてそれ以来シェニーは
俺に対して無機質に接してくるようになる。
前と変わらず休憩時の時は俺の元にやってくるし昼の時もサラといるところに
追いかけてはきてくれる。
だが以前の怒ったような悲しいような顔は一切なくなりそこにはただ無機質な面をつけたシェニーの姿しかなかった。
それはどこか諦めを感じるような。
俺はムキになって
そこから必要以上にサラと一緒にいるようになった。
少しでも嫉妬してほしくてこっちを見てほしくて。
それでも効果は一切なかった。
救いはまだ俺のところに来てくれることだけだった。
そして約半年が過ぎた頃。
春が終わりかけ夏に入る前の暑い日。
相変わらず無機質なその表情。
父上と俺を比べてくることに対しての劣等感。
俺をみているようで見ていない。
シェニーに対する不安と不満は爆発した。
する気もない婚約破棄の話を
口が勝手について出た。
可愛くないなんて思ったことなんか
一度もないくせになぜか俺の口から
発していた。
その途端今まで俺の前では泣かなかった
シェニーがポロポロと大粒の涙を流した。
今まで悲しい表情はするが決して涙なんか見せなかったシェニーが。
驚いた俺は自分は怒ってたはずなのに
シェニーの涙を必死で服の袖で拭いていた。
そのうち俺によりかかるようにして
シェニーは倒れた。
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