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シェニー視点
しなきゃいけないこと。
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朝。小鳥の鳴き声がさえずる。
今日の天気は快晴で
雲一つない澄み切った空はどこまでも続いている。
昨日アインス様に言われて私は朝早く
王宮の門の前で彼を待っていた。
彼の従事の人に
少し馬車の中でお待ちください。と言われ
王族専用の馬車に乗り込む。
カーテンが閉められていて
外の景色は見えなくなってしまったが
私はそのまま彼を待った。
すると外で侍女らしき人たちの声が聞こえてきて
静かな馬車の中にいると侍女のたちの話が
聞く気はなくても自然と耳に入ってくる。
「だけど本当に王太子様は健気というか、奥手というか。」
「こら!あんまり大きな声で話しちゃだめよ。誰か聞いているかもしれないでしょ。」
話声からしておそらく結構若手の侍女の方だろうか。
ごめんなさい。がっつり聞いてます。
「大丈夫よ。べつに悪口を言ってるわけじゃないもの。」
「そうだけど・・。」
「王太子様って本当は、
学園に行かなくてもいいように
すべての勉学を就学しているのに
わざわざ心配だからって一緒に通われてるんですよ。健気すぎないですか?」
彼女の声に目を丸くする。
学園に行かなくてもいい?
どういうこと?
「健気っていうか。王太子様はただ拗らせているだけよ。」
「この王宮内で有名ですよね。それ。
一度でいいから王太子様に求愛されたい。」
うっとりする彼女の言葉は私の頭には届いていなくて
先ほどの侍女の方の言葉が
私の頭の中で反復する。
彼は勉学をすべて就労しているなら何故学園にいくのかしら。
どうして?
どうしても気になってしまい詳しく
侍女の方達に聞こうと馬車の扉を
開けようとした時。
「こら。お二人とも口を慎みなさい。
門前のお掃除は終わったのかしら?」
声からすると侍女長のメアリーだった。
ぐっとつかんでいた扉の取手から手を放して再び腰を下ろした。
侍女の方達ははい!と言って
慌てて走っていく足音だけが聞こえる。
「まぁ少しはシェニー様の耳に入ってるといいけど。」
メアリーが何か言っていたけど
馬車の中からは聞こえなかった。
そしてメアリーもいなくなり
再び静かになる。
その数分後にアインス様は遅れて馬車に乗り込んできた。
「悪い。少し朝から父上たちの補佐を頼まれていた。」
最近アインス様は頻繁に国王様の下で執務補佐をしている。
サラさんのこともあってアインス様は朝からすごく疲れているみたいだ。
それなのに昨日は私に会いに来てくれたんだ。
「アインス様。お体ご自愛下さい。」
少し赤い目が細くなり意地悪な笑顔で
「限界が来たらシェニーの膝の上貸せよ。」
「な。まだ嫁入り前ですわ!」
顔に一気に熱が集中する。
「仕方ないから今は肩だけ借ります。」
そういうと顔を真っ赤にしている私をよそに
隣に座ってきて
頭を私の頭にのせて体をもたれかけてくる。
肩じゃなくて頭じゃない!
「ちょ、アインス様!」
いくら王族専用の馬車といえどそんなに広くはない。
横に座られると肩だけではなく腕まで密着してしまう。
心臓の音が急激に早くなっていく。
「悪いな。少しだけ寝る。昨日は寝てなく・・て・・・。」
言い終わる前に彼はスースーと寝息をたてて眠ってしまった。
「アインス様?」
それほどまでに疲れているのだろうか。
早くなっていた音は次第に落ち着きを取り戻し
学園に着くまでの間、彼を起こさないように
そっとしてあげる。
聞きたいことがあったけどまた今度でいいや。
少しでも疲れが取れてくれるといいな。
私も学園に着くまで目を閉じ彼の寝息を聞きながら
馬車に揺られていく。
◇◇◇
「悪い。寝てしまった。」
学園につきカバンを持ちながら
馬車を降りて私の目の前に立つ。
「気にしていませんわ。それより私にしっかり寝とけって言ったのに当の本人様こそしっかり寝てくださいな。」
「はいはい。わかりました。じゃあシェニー教室でな。」
そういうとアインス様はちょうどやってきたサラさんの乗っている馬車までいくと
降りてくるサラさんに手を差し伸べる。
ズキリと胸が痛くなる。
頭を横に振って振り返り教室に向かった。
教室に入るまで周りの人からの視線と
こそこそと話す声に
少し嫌気をさしながらも聞かぬふりをした。
教室に入るとクラスの人たちが
「シェニー様。おはようございます!」
と噂が流れる前と同じように接してくれる。
「・・・おはようございます。あの・・」
「わかってます!私たちはあんな噂信じていません!だってシェニー様はすごく優しくて身分が違うからと言って私たちを虐げたりしませんわ。クラスの人たちはシェニー様を信じています!」
クラスの人たちが駆け寄ってきてくれてみんな私の見方だって
微笑んでくれた。
あまりにもうれしくて涙がたくさんあふれてくる。
昨日のアインス様との約束を早速破ってしまう。
だけどこんなにたくさんの人が私を信じてくれるのが
どうしようもなく嬉しくて
「あーシェニー様!泣かないでください!!アインス王太子様が来られる前に涙拭いてください!僕たち目で殺されます!」
わはははとみんなで笑う。
目で殺されるとはどんな魔法を持っているんだ、アインス様。
というかなんで私が泣くとアインス様にそんなことされるのよ。
「ごめんなさい。皆様ありがとうございます。」
この世界の人たちはすごく優しくて
ここに転生できて本当によかったと思う。
そうして鐘がなって教師がやってきて
「何してるんですか?ほら皆さん席についてください。」
教師の声とともに皆席に着いた。
アインス様は少し遅れてから教室に入ってきた。
すぐに授業は始まり、
教室内は教師の声と教本をめくる音が響く。
噂は黙っていれば
そのうち消えてくれると願う。
サラさんを虐めてる奴らも
アインス様たちは見当がついていると
言っていたし、早く見つかってほしい。
私もずっと背けていたサラさんと
向き合わなければいけない。
少しずつでも話をしていこう。
今まで嫉妬やいろんな感情が邪魔をして
サラさんと向き合うことを恐れていたけど
私自身このままではよくない。
私の態度や行動で招いた噂。
私自身が彼女と真剣に向き合っていかなくちゃいけない。
今日の天気は快晴で
雲一つない澄み切った空はどこまでも続いている。
昨日アインス様に言われて私は朝早く
王宮の門の前で彼を待っていた。
彼の従事の人に
少し馬車の中でお待ちください。と言われ
王族専用の馬車に乗り込む。
カーテンが閉められていて
外の景色は見えなくなってしまったが
私はそのまま彼を待った。
すると外で侍女らしき人たちの声が聞こえてきて
静かな馬車の中にいると侍女のたちの話が
聞く気はなくても自然と耳に入ってくる。
「だけど本当に王太子様は健気というか、奥手というか。」
「こら!あんまり大きな声で話しちゃだめよ。誰か聞いているかもしれないでしょ。」
話声からしておそらく結構若手の侍女の方だろうか。
ごめんなさい。がっつり聞いてます。
「大丈夫よ。べつに悪口を言ってるわけじゃないもの。」
「そうだけど・・。」
「王太子様って本当は、
学園に行かなくてもいいように
すべての勉学を就学しているのに
わざわざ心配だからって一緒に通われてるんですよ。健気すぎないですか?」
彼女の声に目を丸くする。
学園に行かなくてもいい?
どういうこと?
「健気っていうか。王太子様はただ拗らせているだけよ。」
「この王宮内で有名ですよね。それ。
一度でいいから王太子様に求愛されたい。」
うっとりする彼女の言葉は私の頭には届いていなくて
先ほどの侍女の方の言葉が
私の頭の中で反復する。
彼は勉学をすべて就労しているなら何故学園にいくのかしら。
どうして?
どうしても気になってしまい詳しく
侍女の方達に聞こうと馬車の扉を
開けようとした時。
「こら。お二人とも口を慎みなさい。
門前のお掃除は終わったのかしら?」
声からすると侍女長のメアリーだった。
ぐっとつかんでいた扉の取手から手を放して再び腰を下ろした。
侍女の方達ははい!と言って
慌てて走っていく足音だけが聞こえる。
「まぁ少しはシェニー様の耳に入ってるといいけど。」
メアリーが何か言っていたけど
馬車の中からは聞こえなかった。
そしてメアリーもいなくなり
再び静かになる。
その数分後にアインス様は遅れて馬車に乗り込んできた。
「悪い。少し朝から父上たちの補佐を頼まれていた。」
最近アインス様は頻繁に国王様の下で執務補佐をしている。
サラさんのこともあってアインス様は朝からすごく疲れているみたいだ。
それなのに昨日は私に会いに来てくれたんだ。
「アインス様。お体ご自愛下さい。」
少し赤い目が細くなり意地悪な笑顔で
「限界が来たらシェニーの膝の上貸せよ。」
「な。まだ嫁入り前ですわ!」
顔に一気に熱が集中する。
「仕方ないから今は肩だけ借ります。」
そういうと顔を真っ赤にしている私をよそに
隣に座ってきて
頭を私の頭にのせて体をもたれかけてくる。
肩じゃなくて頭じゃない!
「ちょ、アインス様!」
いくら王族専用の馬車といえどそんなに広くはない。
横に座られると肩だけではなく腕まで密着してしまう。
心臓の音が急激に早くなっていく。
「悪いな。少しだけ寝る。昨日は寝てなく・・て・・・。」
言い終わる前に彼はスースーと寝息をたてて眠ってしまった。
「アインス様?」
それほどまでに疲れているのだろうか。
早くなっていた音は次第に落ち着きを取り戻し
学園に着くまでの間、彼を起こさないように
そっとしてあげる。
聞きたいことがあったけどまた今度でいいや。
少しでも疲れが取れてくれるといいな。
私も学園に着くまで目を閉じ彼の寝息を聞きながら
馬車に揺られていく。
◇◇◇
「悪い。寝てしまった。」
学園につきカバンを持ちながら
馬車を降りて私の目の前に立つ。
「気にしていませんわ。それより私にしっかり寝とけって言ったのに当の本人様こそしっかり寝てくださいな。」
「はいはい。わかりました。じゃあシェニー教室でな。」
そういうとアインス様はちょうどやってきたサラさんの乗っている馬車までいくと
降りてくるサラさんに手を差し伸べる。
ズキリと胸が痛くなる。
頭を横に振って振り返り教室に向かった。
教室に入るまで周りの人からの視線と
こそこそと話す声に
少し嫌気をさしながらも聞かぬふりをした。
教室に入るとクラスの人たちが
「シェニー様。おはようございます!」
と噂が流れる前と同じように接してくれる。
「・・・おはようございます。あの・・」
「わかってます!私たちはあんな噂信じていません!だってシェニー様はすごく優しくて身分が違うからと言って私たちを虐げたりしませんわ。クラスの人たちはシェニー様を信じています!」
クラスの人たちが駆け寄ってきてくれてみんな私の見方だって
微笑んでくれた。
あまりにもうれしくて涙がたくさんあふれてくる。
昨日のアインス様との約束を早速破ってしまう。
だけどこんなにたくさんの人が私を信じてくれるのが
どうしようもなく嬉しくて
「あーシェニー様!泣かないでください!!アインス王太子様が来られる前に涙拭いてください!僕たち目で殺されます!」
わはははとみんなで笑う。
目で殺されるとはどんな魔法を持っているんだ、アインス様。
というかなんで私が泣くとアインス様にそんなことされるのよ。
「ごめんなさい。皆様ありがとうございます。」
この世界の人たちはすごく優しくて
ここに転生できて本当によかったと思う。
そうして鐘がなって教師がやってきて
「何してるんですか?ほら皆さん席についてください。」
教師の声とともに皆席に着いた。
アインス様は少し遅れてから教室に入ってきた。
すぐに授業は始まり、
教室内は教師の声と教本をめくる音が響く。
噂は黙っていれば
そのうち消えてくれると願う。
サラさんを虐めてる奴らも
アインス様たちは見当がついていると
言っていたし、早く見つかってほしい。
私もずっと背けていたサラさんと
向き合わなければいけない。
少しずつでも話をしていこう。
今まで嫉妬やいろんな感情が邪魔をして
サラさんと向き合うことを恐れていたけど
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私の態度や行動で招いた噂。
私自身が彼女と真剣に向き合っていかなくちゃいけない。
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