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導入
神様の降臨、異世界転生
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「ここは……」
「狭間。あの世とこの世の中継ポイント」
気がつくと、真っ白い無機質な部屋に居た。あまり広くはない。
目の前にはひとりの女がいる。若い。同年代か……にしては奇抜な制服だ。
多分、学校の制服だと思うが、上半身は全体的に薄いピンクで、胸部が白、その上に乗っかっている黒に近い赤のリボンが特徴的。スカートは濃い赤の生地に、黒いチェック、白いヒラヒラがついている。丈は短く、下着が見えそうな程だ。その更に下に目をやると、白のハイソックス。黒のリボンが上の方についている。
何者だよ。
「神様」
少女は白い髪を揺らしながら、答えた。まるで、心の中を読んでいるようだ。
少女の口が動く。
「その通り」
「……何が? 」
「心の中」
文字通り、心の中を読んでいるってことか?
「ダー(はい)」
「ああ、そうですか」
「驚かない。不思議」
「いいや、驚いた。本当に驚いた。その服装には驚いた」
「どうして」
「その胸のせいじゃないか? 」
俺は自称神様の豊かな胸部を指さした。
彼女は首を傾げて「ヤりたい」と言った。
疑問形のつもりなのか?
でもまあ、生前“そういうこと”は、やれなかったな。今思うと、少し惜しい。
「……タダなら」
「素直。好き」
「そりゃどうも」
「だから、チャンスあげる」
「本当に!? 」
俺は少女との距離を詰めると、その肩に両手を乗せる。この少女、よく見るとメチャクチャかわいい。がっつく。
「身体じゃない。……第二の人生」
「それは嫌だ」
俺はブサイクの身体から手を離し、距離を取る。
人生が嫌で自殺したのに、もう一度やれと? ふざけるな。
「拒否権はない」
彼女は微笑んで、話を続けた。
「才能を与える。複数の才能……、絶対大丈夫。それに、中世ヨーロッパ風の異世界。ロマンある」
「いや、そもそもなんで転生しなきゃなんねえんだよ。魂ごと消滅させてくれ。その方がよっぽどマシだ! 」
「本来ならそう。自殺者の魂、消滅する。来世まで、もたないから」
「なんでさ、なんで俺は転生するんだよ」
生きたくなくて死んだ人間を……もう一度転生させるって……ただの拷問じゃねえか。……それか、自殺した罰か。
こんなことなら、自殺なんて辞めておけばよかった。
「キリがいい」
「キリがいい? 」
俺は少女の言葉を反復する。
「そう。歴代自殺者数……あなたはキリがいい数字。だから――」
「だから転生しろと? それだけの理由で? 」
「そう。あと、自殺した罰」
「そんなふざけた理由でか!? 誰が得するんだよ。俺は嫌だ」
「私が得する」
「はあ!? 」
「苦しむ顔、好き。見るの、好き」
一発殴ってやろうか。
「じゃあね」
少女が手を振ると、視界がぼやけてくる。
目覚めると……どこだここ? よくわからん。
白黒の世界。音が凄い。ガチャガチャという音が聞こえる。情報が多すぎて、理解も表現もできない。
「……ッ!!」
何かが腕の肌に触れた。柔らかい。触感は機能しているようだ。
しばらくすると、慣れてきた。この音は金属音だ。なんでそんな音が聞こえるのかわからないが、とにかく金属の発する甲高い音が……遠くの方から聞こえる。
またしばらくすると、少しずつ目の方も機能してきた。相変わらずモノクロではあるものの、何となくは理解出来るようになってきた。
それでも白と黒の塊が動くように見えるだけ、白が何か、黒が何かなんてわからない。まるで正義と悪だな。
またまたしばらくすると、ようやく理解した。どうやら俺は乳幼児になっているらしい。幼いときは目がほとんど機能しないが、代わりに耳は比較的良いと聞いたことがある。多分それだった。
またまたまたまたしばらくすると、ようやく親の顔が認識できるようになった。鼻が高く、ヨーロッパ人っぽい顔だった。名前はまだわからない。とにかく、第二の母は美人だと認識した。
……どうやら家族は俺含めて三人か四人。父、母、俺(に加えて謎の女、多分召使い)だけらしい。父は時折外に出ていって、しばらく帰って来ない日々が続いたと思ったら、忘れた頃にひょっこり顔を出した。
その時、彼は必ず甲冑を着て行った。初めはコスプレだと思ったが、あまりにもクオリティが高いんで、どうも違うように思えてきた。
もしかしたら、ここは剣と魔法の世界で、ドラゴン討伐とか戦争にでも行っているのかもしれない。そうだ。その方が夢がある。
とりあえず、現実逃避も兼ねて、そういう設定にしておいた。
……こっちに来て半年程が経った。奇妙な事に、自殺をしたいと思わなくなった。
原因は色々とあるだろう。環境が変わったからとかさ。でも一番は、この身体だと思う。
身体が別人のものになったから、脳とか神経とか、身体的なものは健康(というか新品)になった。
全く劣化してないから、当然だよな。
……これはチャンスかもしれない。
少し、生きてみようと思った。やり直しがきくかもしれない。こちらの世界で、なりたかった医者になったり、友達つくったり、そういった“ささやかな幸せ”が手に入るかもしれない。
やってみよう。やってやろう。
試してみるんだ、もう一度。
俺は母乳を口に含みながら、そう決心した。
「狭間。あの世とこの世の中継ポイント」
気がつくと、真っ白い無機質な部屋に居た。あまり広くはない。
目の前にはひとりの女がいる。若い。同年代か……にしては奇抜な制服だ。
多分、学校の制服だと思うが、上半身は全体的に薄いピンクで、胸部が白、その上に乗っかっている黒に近い赤のリボンが特徴的。スカートは濃い赤の生地に、黒いチェック、白いヒラヒラがついている。丈は短く、下着が見えそうな程だ。その更に下に目をやると、白のハイソックス。黒のリボンが上の方についている。
何者だよ。
「神様」
少女は白い髪を揺らしながら、答えた。まるで、心の中を読んでいるようだ。
少女の口が動く。
「その通り」
「……何が? 」
「心の中」
文字通り、心の中を読んでいるってことか?
「ダー(はい)」
「ああ、そうですか」
「驚かない。不思議」
「いいや、驚いた。本当に驚いた。その服装には驚いた」
「どうして」
「その胸のせいじゃないか? 」
俺は自称神様の豊かな胸部を指さした。
彼女は首を傾げて「ヤりたい」と言った。
疑問形のつもりなのか?
でもまあ、生前“そういうこと”は、やれなかったな。今思うと、少し惜しい。
「……タダなら」
「素直。好き」
「そりゃどうも」
「だから、チャンスあげる」
「本当に!? 」
俺は少女との距離を詰めると、その肩に両手を乗せる。この少女、よく見るとメチャクチャかわいい。がっつく。
「身体じゃない。……第二の人生」
「それは嫌だ」
俺はブサイクの身体から手を離し、距離を取る。
人生が嫌で自殺したのに、もう一度やれと? ふざけるな。
「拒否権はない」
彼女は微笑んで、話を続けた。
「才能を与える。複数の才能……、絶対大丈夫。それに、中世ヨーロッパ風の異世界。ロマンある」
「いや、そもそもなんで転生しなきゃなんねえんだよ。魂ごと消滅させてくれ。その方がよっぽどマシだ! 」
「本来ならそう。自殺者の魂、消滅する。来世まで、もたないから」
「なんでさ、なんで俺は転生するんだよ」
生きたくなくて死んだ人間を……もう一度転生させるって……ただの拷問じゃねえか。……それか、自殺した罰か。
こんなことなら、自殺なんて辞めておけばよかった。
「キリがいい」
「キリがいい? 」
俺は少女の言葉を反復する。
「そう。歴代自殺者数……あなたはキリがいい数字。だから――」
「だから転生しろと? それだけの理由で? 」
「そう。あと、自殺した罰」
「そんなふざけた理由でか!? 誰が得するんだよ。俺は嫌だ」
「私が得する」
「はあ!? 」
「苦しむ顔、好き。見るの、好き」
一発殴ってやろうか。
「じゃあね」
少女が手を振ると、視界がぼやけてくる。
目覚めると……どこだここ? よくわからん。
白黒の世界。音が凄い。ガチャガチャという音が聞こえる。情報が多すぎて、理解も表現もできない。
「……ッ!!」
何かが腕の肌に触れた。柔らかい。触感は機能しているようだ。
しばらくすると、慣れてきた。この音は金属音だ。なんでそんな音が聞こえるのかわからないが、とにかく金属の発する甲高い音が……遠くの方から聞こえる。
またしばらくすると、少しずつ目の方も機能してきた。相変わらずモノクロではあるものの、何となくは理解出来るようになってきた。
それでも白と黒の塊が動くように見えるだけ、白が何か、黒が何かなんてわからない。まるで正義と悪だな。
またまたしばらくすると、ようやく理解した。どうやら俺は乳幼児になっているらしい。幼いときは目がほとんど機能しないが、代わりに耳は比較的良いと聞いたことがある。多分それだった。
またまたまたまたしばらくすると、ようやく親の顔が認識できるようになった。鼻が高く、ヨーロッパ人っぽい顔だった。名前はまだわからない。とにかく、第二の母は美人だと認識した。
……どうやら家族は俺含めて三人か四人。父、母、俺(に加えて謎の女、多分召使い)だけらしい。父は時折外に出ていって、しばらく帰って来ない日々が続いたと思ったら、忘れた頃にひょっこり顔を出した。
その時、彼は必ず甲冑を着て行った。初めはコスプレだと思ったが、あまりにもクオリティが高いんで、どうも違うように思えてきた。
もしかしたら、ここは剣と魔法の世界で、ドラゴン討伐とか戦争にでも行っているのかもしれない。そうだ。その方が夢がある。
とりあえず、現実逃避も兼ねて、そういう設定にしておいた。
……こっちに来て半年程が経った。奇妙な事に、自殺をしたいと思わなくなった。
原因は色々とあるだろう。環境が変わったからとかさ。でも一番は、この身体だと思う。
身体が別人のものになったから、脳とか神経とか、身体的なものは健康(というか新品)になった。
全く劣化してないから、当然だよな。
……これはチャンスかもしれない。
少し、生きてみようと思った。やり直しがきくかもしれない。こちらの世界で、なりたかった医者になったり、友達つくったり、そういった“ささやかな幸せ”が手に入るかもしれない。
やってみよう。やってやろう。
試してみるんだ、もう一度。
俺は母乳を口に含みながら、そう決心した。
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