皇女ルーナリア――「悪女」と呼ばれた少女

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第七章 遠ざかる距離

ルーナリアとセドリックは、何度も言葉を交わし、少しずつ心を通わせていった。

だが、身分の差という壁は、彼らの間に確かに存在していた。

「ルーナリア様は、皇族です」
「お前は、それが障害になると思っているの?」
「ええ。皇女が没落貴族の息子などと――許されるはずがない」

彼はそう言いながらも、彼女の手を離さなかった。
それが、ルーナリアを余計に苦しめた。

「あなたは……私と共に生きる気はないの?」
「そんなことは……でも、私は……」

セドリックの表情は苦しげだった。
彼は自分の無力さを知っていた。
彼女を愛していたが、彼女にふさわしい存在ではないと感じていた。

ルーナリアもまた、彼の悩みを理解していた。
だからこそ、彼を責めることはできなかった。

第八章 別離

やがて、宮廷に縁談の話が持ち上がった。

「第四皇女を他国の王太子に嫁がせる」

それは、皇帝の決定だった。
皇女として生まれた以上、政略結婚は宿命だと知っていた。

しかし、ルーナリアの心は揺れた。

「セドリック……」

彼の元へ向かったルーナリアは、彼に最後の問いを投げかけた。

「私は、あなたと共にいたい」
「……でも、私はあなたを幸せにできない」
「それは、あなたが決めることじゃない」
「ルーナリア様……」

セドリックは苦しげに顔を伏せた。

「私は、あなたの幸せを願っています。それが、たとえ私と共にいる未来でなくても」

それは、彼の精一杯の想いだった。

彼は彼女の手を取らなかった。

――それならば、私はこの想いを胸に秘めて生きていく。

ルーナリアは、何も言わずに背を向けた。

涙を流すことはなかった。
ただ、胸が締めつけられるように痛んだ。

第九章 運命の逆転

縁談が正式に決まり、ルーナリアは皇宮を去る準備を始めた。

そのときだった。

「待ってください!」

駆け込んできたのは、セドリックだった。
息を切らし、乱れた髪のまま、彼は彼女の前に立った。

「……何のつもり?」
「行かないでほしい!」

初めて、彼が自分の想いを口にした。

「あなたを愛しています。ずっと愛していました。でも、私は臆病だった。あなたを幸せにできる自信がなかった」

彼の目には、涙が滲んでいた。

「でも、あなたを失うくらいなら、何もかも捨ててもいい」
「セドリック……」

彼の言葉に、ルーナリアの心は震えた。

――彼が、私を選んでくれる。

それは、彼女がずっと望んでいたことだった。

ルーナリアは微笑み、手を伸ばした。

「それなら、一緒に行きましょう」

二人は手を取り合い、宮廷を去った。

第十章 新しい人生

ルーナリアは皇族の身分を捨て、セドリックと共に生きる道を選んだ。

二人は小さな町で静かに暮らしながら、新たな人生を歩み始めた。

彼らの未来は決して平坦ではなかった。

しかし、ルーナリアはもう孤独ではなかった。

彼女の隣には、愛する人がいたのだから。

――そして、彼女の美しき物語は、今も語り継がれている。
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