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2章 森の中の託児所が始まったようです

45 ハーツとお別れのようです

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『ほほう?春の芽吹きを思い描いたら、目を開けた時に世界樹の上の方でキラッと強い光が輝いた気がする、と。ふむ』

 ハーツと並んで日課の世界樹へ行った翌日の朝。獲物を届けに来たアーシュに早速昨日の光のことを聞いてみた。

「すぐに消えちゃったから、見間違えかとも思ったんだけど、でもドライ達も光を見たって言ってたし」

 一応あの後他の子供達にも聞いてみたが、全員があの光を目撃していた。
 一瞬の晴れ間から陽が差したのだったら全員が光ったと言う程の光量はないだろうから、そうなるとあの時見たあの光は見間違えではなかった、ということだ。

「その後いつものように幹がキラキラしていたのは同じだったんだけどな」
『……では、そろそろなのかもしれんな。思ったよりも早かったか。まあ、イツキに関しては予測できないことばかりだからな』
「え?あの日課には、やっぱり何か目的があったのか?思ったより早いって、何が早いんだ?」
『いいからお前は気にするな。気にせず毎日今まで通り日課に励め。いいな!……ああ、ただ。もうそろそろ雪解けだし、イメージは春の芽吹きでやれ』

 なんだよ、まだ俺には秘密なのか?いやまあ、確かにこうして気安く話しているけど、アーシュは神獣フェニックス様、しかも守護地の管理者だしな。そりゃあこんなどこからか湧いたか分からない俺に、全て話せって方が無理だろうけど。でも、俺がやっていることの意味くらい、教えてくれてもいいのにな。

「ああ、分かったよ。今日から昨日と同じイメージで魔力を注いでみるよ。でも、その結果くらいは出てからでもいいから教えてくれよな」
『……まあ、その時になれば分かる。ああ、何か変わったことがあったら、すぐに報告しろ。あと、フェンリルが明日、子供を迎えに来ると言っておったぞ。ではな!』
「って、ええぇえっ!!ちょっ!それはついでで言うことじゃないだろうっ!」

 フェンリルがハーツを迎えに来る、ということは、もう当分、来年の冬までハーツとはお別れってことじゃないかっ!そりゃあそろそろかな、とは思っていたけど、明日だなんて急すぎる!

「うわぁ、どうしよう!今日はお別れ会をやった方がいいのか?いや、でもお別れ会なんてやると、もう会えないって感じになっちゃうよな!」

 思わずうろたえてブツブツ言いながら広場をうろうろしてしまった。

『なあー、イツキー。それより朝食にしてくれよーーーー。俺、腹減ったって!』
『そうだぞ、イツキ。俺たち今日は訓練の日だから、気合入れてたくさん食べとかないとならないんだからな!』
「ええーーーーーっ!アインスにツヴァイも、お前たち冷たくない?冬の間ずっと一緒に暮らしていたハーツが、明日帰っちゃうんだぞ!」
『ワフゥ?』

 自分の名前を呼ばれたことに気づいたのか、走り回っていたハーツが寄ってきて小首をかしげながら俺を見上げる。

「くぅ。ハーツはかわいいなぁ……。ハーツ、明日お迎えが来るってさ。明日はお父さんに会えるぞ」

 思わず座ってハーツを抱き寄せてもふもふ撫でながらそう告げる。

『ワッフゥ。……クーーーン。キューーー』

 最初はうれしそうだった鳴き声が、寂しそうな声に変り、ハーツも俺たちとの別れを寂しく思ってくれているのかと、もふもふする手と止めてギューッと抱き寄せる。

「でも、これでお別れじゃないもんな?確かにもう雪もほとんど解けたから今はお別れでも、また来年も来てくれるよな?」
『ワンッ!ワンッワンッ!』

 ベロンっ!と顔を舐められて笑うと、更に舐められる。
 そうしてじゃれていると、待ちくたびれてしびれを切らしたのかドライに襟を嘴でつままれて吊り上げられそうになってしまった。

『イツキ、朝食にして下さい。もうクオン達が来てしまいますよ!』
「ああ、そうだった!ごめん、今すぐ焼くから!」

 慌ててハーツにもちょっと待っててと声を掛けてから火を入れておいた竈へ駆け寄り、切ってマジックバックへ入れておいた肉を鉄板に乗せて行ったのだった。


『イツキ!来た、よ!』
『お久しぶりです。今日からまた、よろしくお願いします』

 必死で肉を焼き、せっせとアインス達へ食べさせて訓練へと送り出し、ようやく自分の食事を食べている時、一番先にやって来たのは、雪が降って以来ほとんど来ていなかったセランとフェイだった。
 駆け寄り、椅子に座る俺に首筋を擦り寄るセランがかわいくて、箸を置いてセランの首筋や鼻先を撫でる。

「久しぶりだなぁ。セラン、会いたかったぞ」
『僕も!僕もイツキ、会いたかった!』

 ひとしきりセランが気が済むまで撫で、フェイにも声を掛ける。

「フェイも久しぶりだな。なんだか体がまた大きくなったんじゃないか?」
『はい。雪が降る間は群れでじっくり飛行訓練をしていました。しっかりと力がなじみ、成長したようです』
「それは良かったな!まあ、でも急いで大きくなると寂しいから、根を詰めすぎないようにな。今日からまた、セランを見ていてやってくれな」
『はい』

 そっと鼻先を撫でると、うれしそうに眼を細めてくれた。
 フェイは元々ここに来た時から大きかったが、今ではすっかりサラブレッド馬とほぼ変わらない大きさに成長していた。ペガサスはもっと大きいので、これからもどんどん成長するのだろう。

『フェイ、ずるい!どんどん大きくなるの!』
「ふふふ。セランがすぐに大きくなっちゃったら、俺が寂しくなっちゃうから、ゆっくり成長しような。ホラ、セラン。明日には帰っちゃうけど、冬の間ずっと預かっていたフェンリルのハーツだよ。セランより小さい子なんだよ」

 前脚をタシタシしながら怒るセランを、そんな姿もかわいいけどな!と思いつつ見慣れない顔に寄って来たハーツを手招きして紹介する。
 すると、その時初めてハーツに気づいたのか、セランが驚いた顔でじーっとハーツを見つめた。ハーツの方も、そんなセランのことをじーっと見つめている。

『うわぁ、もこもこ!ふわふわだね!』
「そう、ハーツはすっごくふわふわなんだよ。フェンリルは雪がある場所で生活しているから、温かい毛皮なんだよ。ここの雪がもう解けてしまうから、来年までお別れになるなんだよ」
『ふうん……』
『ワンッワンッ!』

 観察が終わったのかセランにじゃれだしたハーツに、セランもうれしそうに一緒に走りだした。
 そんな二人を見守りつつ朝食を食べ終え、片付けをしている間にクオンとライ、ロトムがやって来た。


「皆ー、今日も聖地へ行くよー!あと、明日ハーツのお迎えが来るそうだから、ハーツとは明日で来年の冬までお別れになるよ」

 そう告げると、いつも一緒にはしゃいでいたクオンが残念そうに『えーーー!』と声を上げていた。
 それからロトムも同じ犬系だからか、寂しそうにハーツに挨拶に行く。
 
 よし!今日はめいいっぱい、皆で遊ぼう!来年の冬までお別れなのは寂しいけれど、だからこを楽しい思い出を作らなきゃな!

 子供たちが皆が団子となってはしゃぎながら歩く姿を見つつ、そう決意したのだった。


 


****
お別れ……まで行きつかなかった( ´艸`)
次の最初でお別れですかね。

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気になる!という方はどうぞ見てやって下さい(この後すぐに書きますね)
どうぞよろしくお願いします<(_ _)>
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