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第4話 猟奇的な師団長
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「おい起きろ」
低く響く声が聞こえてくる。
昨日テレビつけっぱなしで寝ちゃったんだっけ? それにしてもいい声だな。
リモコンを探そうと目を瞑ったまま手を伸ばすと、暖かい何かに触れた。
びっくりして目を開ける。
「うわー!」
私が握ったのは人の手だった。
目の前に顔があり、更に私はその人の手をしっかりと握りしめてしまっていた。
ぼんやりとした視界に、呆れたような声が聞こえる。
この声は間違いない。昨日の師団長だ。
しかしわかったのはそれだけで、全く状況がわからない。
戸惑う私に、ため息交じりに師団長が呟く。
「なんだその色気のない反応は」
「……色気」
色気は確かにないけれど……。
ぺたりとした自分の身体を見て凹んでいると、ふっと笑った気配がした。
「まあいい。とりあえず手を離してくれ」
「わー! ごめんなさい! ……こんな早朝に一体どういったご用でしょうか師団長」
私は慌てて握り続けてしまっていた手を離した。そして、他意はないことを示すために、両手をあげて見せた。
でも良く考えたら、一応私室なのだ。
こんな早くに女子の部屋に入るのは、この世界では問題ないのだろうか。
「私の名前はフィスラ・コノートだ。この国で魔法師団長を務めている。君の名は?」
「ええと、コノート師団長様、ですね。私は朝比奈つむぎといいます」
カタカナの名前で一瞬びっくりする。確かにこの世界の人は彫が深めなので違和感はないけれど。私が名乗ると、師団長は首を傾げた。
「ツムギ? 君たちの世界の名前はなかなか不思議な響きだな」
「うーん。そうかもしれませんね。でも、言葉はちゃんと通じるんですね」
「それは、そうだ。召喚の儀の際に、その辺は調整される」
「わー魔法って便利なんですね。言葉を新たに覚える必要ないとか、旅行し放題じゃないですか。……ええと、それでコノート師団長」
私の呼びかけに、彼は首を振った。
「フィスラでいい」
「師団長って偉い人ですよね。そんな人を名前呼びしたら、私訴えられたりしませんか?」
「私が許可したものに、意を唱えるものなどいない」
予想以上にフィスラの地位は高そうだ。それともこの雰囲気のせいだろうか。
「例えば、昨日一緒に居らっしゃった王子様、とか」
「魔法師団は独立した団体なので、誰の下にもいない。王政ともお互いに干渉は出来ないようになっている」
そうなると、本当に誰も何も言えない状況なのかもしれない。ここでごねても良くない。
私はすぐさま権力にひれ伏した。
「じゃあ、フィスラ様と呼ばせて頂きますね。それで、どうされましたか?」
私の言葉に、彼はやっと頷いた。
「昨日、ミズキにも魔法をかけてみたけれど、彼女には魔法は効いた。もう一度ツムギにも試してみようと思うのだが問題はないだろうか」
これが本題だったらしい。
魔法が効かなかったのは相当珍しかったのだろうか。
「どうやるんですか?」
「これで手を切って、回復魔法をかける」
「うわー!」
彼はさっとナイフらしきものを取り出した。
短めだが刃はきらりと光り良く切れそうだ。
恐ろしすぎる。
こんなぶっ飛んだ人は嫌だ。
「ええと、ミズキちゃんは聖女の子ですか? 彼女の手も切ったんですか?」
「そうだが?」
これはやばい奴。ミズキちゃんなんで逃げなかったの。
いや、女子高生にこんなレベルの高いやばい人の相手は難しかったのかもしれない……。
大人である私が助けてあげられなくて、申し訳なく思った。
それはそれとして手を切られるのは嫌すぎる。
「もうちょっと穏便な方法はないでしょうか。治らないかもしれないのに手を切られるとか困るんですけど」
「うーん。そう言われればそうかも知れないな。聖女の傷は問題なく治ったが」
良かった。思いとどまってくれたようだ。
治るとしても痛いのはそもそも嫌だけど……。
低く響く声が聞こえてくる。
昨日テレビつけっぱなしで寝ちゃったんだっけ? それにしてもいい声だな。
リモコンを探そうと目を瞑ったまま手を伸ばすと、暖かい何かに触れた。
びっくりして目を開ける。
「うわー!」
私が握ったのは人の手だった。
目の前に顔があり、更に私はその人の手をしっかりと握りしめてしまっていた。
ぼんやりとした視界に、呆れたような声が聞こえる。
この声は間違いない。昨日の師団長だ。
しかしわかったのはそれだけで、全く状況がわからない。
戸惑う私に、ため息交じりに師団長が呟く。
「なんだその色気のない反応は」
「……色気」
色気は確かにないけれど……。
ぺたりとした自分の身体を見て凹んでいると、ふっと笑った気配がした。
「まあいい。とりあえず手を離してくれ」
「わー! ごめんなさい! ……こんな早朝に一体どういったご用でしょうか師団長」
私は慌てて握り続けてしまっていた手を離した。そして、他意はないことを示すために、両手をあげて見せた。
でも良く考えたら、一応私室なのだ。
こんな早くに女子の部屋に入るのは、この世界では問題ないのだろうか。
「私の名前はフィスラ・コノートだ。この国で魔法師団長を務めている。君の名は?」
「ええと、コノート師団長様、ですね。私は朝比奈つむぎといいます」
カタカナの名前で一瞬びっくりする。確かにこの世界の人は彫が深めなので違和感はないけれど。私が名乗ると、師団長は首を傾げた。
「ツムギ? 君たちの世界の名前はなかなか不思議な響きだな」
「うーん。そうかもしれませんね。でも、言葉はちゃんと通じるんですね」
「それは、そうだ。召喚の儀の際に、その辺は調整される」
「わー魔法って便利なんですね。言葉を新たに覚える必要ないとか、旅行し放題じゃないですか。……ええと、それでコノート師団長」
私の呼びかけに、彼は首を振った。
「フィスラでいい」
「師団長って偉い人ですよね。そんな人を名前呼びしたら、私訴えられたりしませんか?」
「私が許可したものに、意を唱えるものなどいない」
予想以上にフィスラの地位は高そうだ。それともこの雰囲気のせいだろうか。
「例えば、昨日一緒に居らっしゃった王子様、とか」
「魔法師団は独立した団体なので、誰の下にもいない。王政ともお互いに干渉は出来ないようになっている」
そうなると、本当に誰も何も言えない状況なのかもしれない。ここでごねても良くない。
私はすぐさま権力にひれ伏した。
「じゃあ、フィスラ様と呼ばせて頂きますね。それで、どうされましたか?」
私の言葉に、彼はやっと頷いた。
「昨日、ミズキにも魔法をかけてみたけれど、彼女には魔法は効いた。もう一度ツムギにも試してみようと思うのだが問題はないだろうか」
これが本題だったらしい。
魔法が効かなかったのは相当珍しかったのだろうか。
「どうやるんですか?」
「これで手を切って、回復魔法をかける」
「うわー!」
彼はさっとナイフらしきものを取り出した。
短めだが刃はきらりと光り良く切れそうだ。
恐ろしすぎる。
こんなぶっ飛んだ人は嫌だ。
「ええと、ミズキちゃんは聖女の子ですか? 彼女の手も切ったんですか?」
「そうだが?」
これはやばい奴。ミズキちゃんなんで逃げなかったの。
いや、女子高生にこんなレベルの高いやばい人の相手は難しかったのかもしれない……。
大人である私が助けてあげられなくて、申し訳なく思った。
それはそれとして手を切られるのは嫌すぎる。
「もうちょっと穏便な方法はないでしょうか。治らないかもしれないのに手を切られるとか困るんですけど」
「うーん。そう言われればそうかも知れないな。聖女の傷は問題なく治ったが」
良かった。思いとどまってくれたようだ。
治るとしても痛いのはそもそも嫌だけど……。
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