デッドエンド・ウェディング

うてな

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38 シトリン:金運

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数成と遊びに出かけた広也と進也は、服屋に来ていた。レイアウトや服の並びからして、高級なブランドの並んだ洋服屋という事がわかる。そんな店に中学生の子供が来るなど、実に場違いだろう。双子に両腕を引っ張られる数成の表情は、疲れきっていた。広也は怒った様子で言う。

「ざけんな オレ様達と遊ぶのにそんな地味な格好許さねぇ まるで駄犬みたいなカッコしやがってェ!」

広也は家族の前だと常に冷静沈着だが、友達の前だと表現が豊かになるようだ。

「そうっすよ!今から『宇宙人ゲーム』するんすから、そのダサい眼鏡は取ってもらわないと困るっす!」

進也はいつも通りである。

「お前ら一言多いぞ。」

数成は不機嫌そうに言うと、数成は試着室に放り込まれた。そして進也が共に入っていくと、広也は服を選び始める。そこに颯爽と店員が来ると、ニコニコ笑顔で言った。

「こんにちはお坊ちゃま。今日はどの様なお洋服をご所望ですか?」

胡麻を擦るような笑顔の店員。広也は試着室を指差すと言う。

「これからアイツと遊びに出掛けんだ アイツに適当に服を選んでくれ」

「畏まりました!」

店員が早速服を選びに立ち去ると、試着室から数成が顔を出した。既に眼鏡は取られている様で、人形の様な整った顔を見せていた。眼鏡を外すとくすみ一つない若々しい肌に、現実に存在するには少し現実味が無いほど顔のパーツが整った美少年。

「おい広也!服装とかどうでもいいだろ!」

「ダメだ! 休日に制服で遊ぶヤツがどこにいる!」

「どこにでもいるだろ、そんな学生…!」

数成の言う通りなのだが、広也はそうもいかないらしい。むしろ遊びに誘われた嬉しさからか、暴走気味なのかもしれない。

「案ずるな この店のセンスは確かだぜ」

「そういう問題じゃなくてな…!」

そこで進也が顔を出して、目を丸くして言う。

「綺瑠にナイショで服を選んでいいんすか?」

「ここはアイツの店だし 文句は言わねぇだろ」

どうやらここは、綺瑠と繋がりのある店のようだ。さっきの店員の態度も、それによるものだろう。

「そういう問題じゃないっす。『自分も行きたかった』って拗ねるっすよ!」

「ほっとけ」

二人の会話を聞きつつ、数成は冷や汗。

(やっぱり住む世界の違う人間だな…この双子は。)

普通の暮らしをしている数成にとっては、金持ちの会話など到底わかるものではなかった。

それから数十分後。三人は近くの公園に来ていた。数成の服は見た目からは伝わりにくいものの、ブランド物の洋服を身に纏っていた。ブランドと美少年が合わさったら、それは神光を放つほど眩しい姿だろう。それに整った顔の為か、公園に来ているママ達の視線が数成に集まっていた。進也は眉を潜める。

「なんか『宇宙人ゲーム』する前から目立ってるっす!俺達もう顔を知られてるんすかね!?」

「いや 後ろで輝きを放ってる男がいるからだ」

広也はいつも通り冷静だった。すると広也は公園で知っている人を見かける。それは公園の砂場で遊ぶ、海とエリコだった。

「あ エリコ」

その声に気づいた海は、広也の方を見た。広也と進也を見ると、海は笑顔を向ける。

「あら、二人も遊びに公園に来たの?中学生なのにアクティブねぇ。」

「中学生の本分は遊ぶことっすよ!!」

「勉学にも勤しむように。」

と横から話したのは数成。数成を見るなり、海は刺さったのか頬をピンクに。

「あらヤダ、イケメン。」

更にエリコも数成を見ると、同じような表情を見せた。そして親子して眩しいものを見るかの様に、顔を庇う。それらを見ていた広也は無表情のまま言った。

「似た者親子だなお前ら」

「なんか笑えるっす。」

進也は常に笑った顔の為、イマイチ感情が読めない。続いて広也は言った。

「そう言や ヒナツから何もされてねぇか?」

「え?そうねぇ…今の所は全くよ。ちょっと怖いくらいなのよぉ。」

海は眉を困らせてそう言うと、広也は難しい表情に。流石の進也も話を聞かされていた為か、困った様子を見せていた。外野の数成とエリコは二人顔を見合わせると、数成はエリコに手を伸ばした。

「一緒に遊ぶか?」

するとエリコは緊張した様子で、でも嬉しそうに何度も頷いた。そして数成の手を取り、別の遊具へと向かう。
一方、広也達の会話は続いていた。

「美夜とヒナツは同じ職場なんだが、いつもと相違ない様子で仕事に来ているらしいんだ。対し、弟のリョウキ曰く部屋が散乱するほど荒れてる様子らしい。」

それを聞いた海の顔が青ざめた。

「裏表激しい女だからよ…!人の前で平気な顔をする代わりに、家じゃすっごく荒れるのよ…!」

「アレほどの計画を立てた女だ エリコの親権が奪われた程度で諦める様には感じないが…」

すると進也は周囲をキョロキョロする。そして考え込む二人の肩を叩くと言った。

「エリコと数成はどこっすか?」

「アン!?」

広也も周囲を見回すが、二人はどこにもいない。海は顔が真っ青になる。

「エリコぉ!?まさか誘拐!?」

「バカ 数成はそんな事しねぇよ!」

「二人とも喧嘩してる場合じゃないっすよぉ!探すっす!」

進也に言われ、二人は手分けして二人を探し始めた。

そして、エリコと数成は公園の散歩道を二人で歩いている。エリコは道端の花や蝶に興味を持っているようだった。それを微笑ましく見守る数成。するとエリコは、道路の方を見て言う。

「あ!せんせーだ!」

「先生?」

数成がその方向を見ると、白い乗用車の前に人影を見つける。それはマヒルで、綺瑠や美夜の命を狙った綺瑠の元カノの一人であった。エリコは笑顔で言う。

「小学校の先生なの!まひるせんせー!」

エリコが駆けて向かうので、数成は納得した様子。駆けるエリコに対し、数成は歩いて向かった。
マヒルはスマホのメッセージを眺めながら、つまらなそうに溜息。

(あーあ。せっかくの金蔓だったのに、ドタキャンした上に「別れろ」なんて…!はぁ、買いたいブランドまだ沢山あるのに…。綺瑠からもっと金をふんだくっとくんだったなぁ。)

するとそこへ、エリコが走ってきた。

「まひるせんせー!」

それに気づいたマヒルは、目を丸くする。

(本郷さんの娘だったわね。確か最近、親権が父親に移ったせいで本郷さん荒れてた様な…。近々娘を連れ戻す作戦を決行するとも言ってたわね。あの人、綺瑠とその彼女を殺害するのに協力したら大金をくれるって言ってたし…)

マヒルはそれを思うと、怪しく笑みを浮かべた。

(じゃあ、娘を連れてきてあげたら?もっとお金を無心できちゃうかも…?)

マヒルは優しい笑顔を浮かべると、エリコに言う。

「あらエリコちゃん。遊びに来たの?」

「うん!」

「そっかぁ。楽しい?」

「うん!ママが沢山遊んでくれるから!」

エリコの笑顔にニコニコで頷くマヒル。マヒルはエリコの頭を撫でると言った。

「そう言えば、ハナトくんからエリコちゃんへプレゼントがあるんだけど…。先生、それを預かっているの。今から取りに行く?」

「プレゼント!?行く行く!」

エリコが飛んで喜ぶと、マヒルは怪しく笑みを浮かべた。

「じゃ、先生のお車に乗ろうか。大丈夫、すぐ近くだから。」

エリコは一瞬、海のいる公園の方を見たが言う。

「うん!」

マヒルに案内され、車の後部座席に乗るエリコ。その動きを見た数成は異変を感じ、慌てて駆け寄った。マヒルが車の運転席に座って扉を閉めようとした途端、数成は反射的にマヒルの腕を掴んだ。驚いたマヒルが顔を挙げると、数成を見て頬を赤らめた。突然走って向かった為に息が切れ体で息をする姿、桃色に染まった頬、見下ろされた視点、女性にとってドキドキなシチュエーションである。

(美青年…!しかもこの服…ブランドだわ!金持ちに違いない…!)

やはりお金に目がないのか、マヒルは真っ先にブランドの方へ視線が向かった。数成はその反応を見ると言う。

「あの…!」

そう言いつつも、数成は考えていた。

(いくら学校の先生と言えど、子供を車に乗せるなんて異常だ。でも、赤の他人の僕が首を突っ込んでいい話だろうか…?)

「は、はい…?」

マヒルは急にしおらしくなり、上目遣いで数成を見た。数成は好意的なのを見て、軽く穏やかな笑みを向ける。

「あの、どこかでお会いした事…ありますか?」

「えっ」

マヒルは目を丸くした。

(いやいや、こんな美青年で金持ちっぽい匂いのする男を私が見逃すわけないじゃない…!でも、相手が運命を感じてくれてるんなら…)

「えっと…連絡先、交換します?」

マヒルは照れ気味に答えると、数成は少し悲しそうな表情を浮かべた。悲しみの表情までも美しい為か、ドキッと来るマヒル。数成は答えた。

「もう少し、お話したいのですが…。できれば直接…。」

(時間を稼ごう。せめて、彼女の親御さんがこっちに来るまで…!)

「じゃ、じゃあ!車に乗ってください!」

マヒルの思わぬ提案に、数成は一瞬停止する。

「えっと…友人を待っていて…。」

「ではこの後すぐ、また会えるので。その時にお話しましょう。」

マヒルがそう言うと、数成は焦りを覚えたのか言った。

「そんな、寂しいです。やはりご一緒してもよろしいですか?友人には断っておきます。」

そう言われると、マヒルは目を丸くしてから微笑んだ。

「では、隣にどうぞ。」

(これは脈アリね…!)

こうして数成は助手席に座るが、内心は考えていた。

(後部座席の方が良かった…。)

知らない大人についていくのは、内心怖いのだろう。エリコは数成が来たのを見て、笑顔を見せる。

「お兄ちゃんも来るんだ!」

それに対し、数成は笑顔で応えた。車は発進し、少しずつ公園から遠のいていった。
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