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2章 接続独唱
第27音 心機一転
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【心機一転】しんきいってん
ある動機をきっかけとして、
すっかり気持ちがいい方向に変わる事。
=================
いつもの服にショルダーバッグ。
児童園近くの緩やかな坂道の上、ルネアは一人心に決めるのである。
(今日は運命の日…
そう、僕は産まれて初めて…一人で買い物に行きます!)
と、真剣な眼差しで実況。
本当はお買い物なんて誰も頼んではいない。
ルネアが勝手に地図を見つけ、勝手に行こうとしているだけである。
(先日の屈辱…!児童園のみんなは買い物に行った事あるのに、僕だけないだなんて…!)
ルネアは悔しそうな顔を見せて思った。
そしてラムの煽り顔が浮かんできた。
――「行った事もないのか?仕方ないヤツ。」――
ルネアは悔しくて悔しくてたまらなかった。
そして次に余裕な表情を浮かべる。
(ふふ、でも僕は見つけた…地図をね!これで行けるんだ!お店に!買い物に!)
そうしてルネアはバッグを漁るが、何かに気づく。
「あ…」
(地図…忘れた…)
しかしルネアはめげなかった。
(いやいや!地図がなくてもお買い物出来る事を証明するチャンスじゃないか!)
ルネアは無駄にポジティブだった。
何も知らないのは幸せな事、ルネアは夢見勝ちなのだ。
そしてルネアは、張り切って出かけるのであった。
数十分後、ルネアは楽しさのあまり道を覚えずに知らないところまで来てしまう。
今日の天気は曇り、薄暗い湿った空気の木々が並ぶ道。
それを意識すると、ルネアの心は窮屈になり不安を覚えた。
(まさか…ヤバイ所に来てないよね…?)
ルネアは気分が落ち込んでいくと、急に児童園のみんなや未来の家族を思い出す。
(怖い…なんで過去のサグズィは、こんなに静かなんだろ…)
そして戦争を思い出す。
(戦争で…みんな息が苦しいのかな…今の僕みたいに…)
ふと、ルネアの目には涙が浮かんだ。
(ダメだよここで泣いちゃ…!僕…弱いからすぐ泣いちゃって…)
ルネアは悔しさからか、更に涙が溢れてしまう。
その時だ、遠くから人の声が聞こえた。
ルネアは呼び寄せられるように、その声の方向へ走った。
ルネアにとって、この窮屈で静かな森は監獄のようだった。
だから人を見たかった。
きっと心が軽くなるだろうと、彼はそう思ったろう。
声が近くになるにつれ、それが歌声だと知る。
力強く芯のある声。
木々を抜けると、目の前は崖。
崖の向こう側には、出っ張った崖に立つアールが歌っていた。
崖に吹く強い風に立ち向かうように、一直線に歌い上げる。
彼の表情や歌声には、様々な感情が入り組んでいた。
崖の下の生物は、彼の歌声に崖を見上げる。
彼の迫真の歌声に、曇り空も嵐の空に錯覚してしまう。
リートの心包む歌声とはまた違う。
心を騒がせ、誰をも奮い立たせる、狭い奥地から解放される歌声。
力強い歌声に、暫くの間唖然として聞いていたルネア。
盛大に終わる歌声は、そのまま虚空へと響いた。
アールは歌いきるとハンカチで汗を拭い、いつものクールな様子に戻っていた。
そのまま近くの木に歩くと、頭だけを木につける。というかぶつけた。
ルネアは何事かと思っていると、アールはゆっくりルネアのいる方向を見る。
この不機嫌な顔、大方ルネアに聞かれてしまったからだろう。
ルネアは遠回りしてアールのいる崖まで走った。
「そんな顔しなくていいじゃないですかー!とても良かったですよ!
なんで練習でもこのくらい出さないんですか?」
アールは木に寄りかかって座ると言う。
「機嫌が悪いとよく声が出る。」
「え!?普通逆じゃありません?」
「どっちもある。」
即答されると、ルネアはふと聞いた。
「歌は好きですか?」
「…別に。」
「え?」
「みんながやっているからやってるだけ…」
ルネアは苦笑してしまうと思う。
(これじゃいつまで経っても練習に力が入んないわけだ…)
アールはルネアのショルダーバッグを見つめた。
「ショルダーバッグ…」
「そうだ!僕お買い物しようとしたら道に迷っちゃったんだ…!」
ルネアは自分の目的を思い出したところで、アールは言った。
「買い物ができるところなら近くにあるが。
…。…案内してやろうか?」
アールは若干言おうか迷っていたが、案内すると言ってくれる。
ルネアはその言葉に甘えようとしたが、一人で行くと決めた事を思い出す。
「いいえ、結構です。近くにあると分かればそれで。
僕は今一人で買い物チャレンジしてますので!」
ルネアは格好つけて言うと、アールは小さく俯いた。
「そう…か。」
ルネアは張り切って歩いていくと、アールは小さな声を出して手を伸ばした。
「逆…」
なんとルネアが向かった先は、アールが教えようとしていた道の逆らしい。
小さな声だったので、ルネアには勿論聞こえない。
アールは一歩前に出たが、考えてしまう。
(…ついて行ったら迷惑…迷惑…)
アールは自分にそう言い聞かせ、ルネアの後ろ姿を見守るしかなかった。
モヤモヤしつつも、まずは深呼吸をしようとしたアール。
吸った空気を吐こうとした時、
「アールさん。」
とレイが背後に現れる。
そのせいで「うっ」と息を止めてしまうアール。
レイは忍者で足音も立てずに歩くので、耳の良いアールにとっては足音無しの急な挨拶はとても心臓に悪かった。
ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*
「ルネアはどこだよっ!」
ラムは児童園のみんなに聞いた。
ラムの声を聞いたツウは言った。
「さあ、どこか出かけて行ったよ。」
「はぁ!?ちょ、俺探してくるわ!」
ラムはそう言って外に出かけると、入れ違いになるようにルカがツウの元にやってくる。
ルカは一枚の地図を持っていた。
「ツウ?地図が児童園の前に落ちてたけど誰のん?」
「そう言えば今朝、王子が地図を見つけて喜んでたような…」
ツウがそう言うと、ルカは地図を見つめる。
すると目を大きくして驚くのだ。
「んげっ!これ闇市に丸ついてるぅう!
ヤバい取引しかされてないお店!」
「なんだって!?」
ツウも驚いて地図を見せてもらうと、ツウは少し考えてから言った。
「もしかして、これ王子が…?」
「えぇ!?ルネアが!?」
「ここは僕が過去に売りに出されそうになってた闇市じゃない、そんな事は児童園のみんなが知ってる。
他に誰がこんな所に丸つけるのさ!」
「危ないよ!凄く危ない!」
ルカが慌てると、ツウは冷静になって言う。
「わかってる!まめきちさんに相談しよう!」
こうして二人は部屋を出るのであった。
ラムは走ってルネアを探していると、アールとレイが一緒にいる所を目撃。
ショックした顔をしてしまうと、ラムはこっそりと覗いてしまう。
アールはラムに気づくと、わざとレイから距離を離してラムの方へ来た。
「ラム?どうした、そんな急いで。」
レイは空かさずアールの隣に来て、ラムを睨みつける。
ラムはレイと目を合わせないようにしてアールに言った。
「ルネアを探しててよ!アイツ誰にも言わずにどっかに出かけたみたいで!」
するとアールは言う。
「さっき会ったぞ、あっちに向かった。
買い物と言っていたが、逆の道へ行ってしまって…このままだと近くの崖か闇市に…」
それを聞くと、ラムは咄嗟にアールに怒った。
「おい!なんで止めなかったんだよ!!
どっちも危険な場所だろうがよ!」
アールはそれに驚いてしまうと控えめに言う。
「言い訳をするようだが…一人で行くと言われたから一人にしてしまった…すまない…。」
反省している様子だったが、ラムはそんなアールを許そうとしなかった。
「ったくよ!アイツの身に何かあったらどうすんだ!
…アイツはこの世界の危険なんてこれっぽっちもわかってない平和脳なんだぞ!ちっとは考えろ!」
ラムはそれを言い捨てると、走ってルネアが向かった方向へ走るのだった。
アールは何か言いたげだったが、あまりの罪悪感に声が出ない。
そんなアールを見て、レイはふふっと笑った。
「さあ、行きましょう。」
アールはラムが向かった方向を見つめながらも、渋々レイについていく。
ルネアは草花を見てスキップをしていた。
更に歩いていると、その先は崖だと気づく。
(そう言えば、さっきアールさんが崖で歌ってる時、なんか凄くスッキリしたな!
僕も崖で歌ってみればスッキリするかも!)
ルネアは歩いて崖の先端まで歩くと、崖の下の光景に目を疑う。
火に巻かれた小さな町、木々が炎を纏いながら倒れた。
建物は半壊状態で、建物とわかる建物はごく少ない。
瞳に赤く映る炎、巻き上がる火の粉。
遠すぎて細かい事は分からないが、きっとこの中には人もいる。
(戦争…?)
ルネアは初めて見た恐怖の光景に佇んでいると、ラムがそこにやってきた。
「ルネアっ!そこ危ない!」
ルネアはその声に驚いて、足を滑らせてしまう。
「うわぁっ!」
ルネアは崖から落ちそうになり、ラムはそこに全力で向かう。
反応が遅すぎたせいか、ルネアは崖に生える草しか辛うじて掴めなかった。
根の部分を掴んだので少し安定していたが、すぐにブチッと千切れてしまう。
「いやぁっ!」
ルネアは叫ぶと、ラムが間に合ってルネアの腕を掴んだ。
宙にぶら下がるルネア。
こんな経験は初めてで、服や体の重みをしっかり身に染みて感じる。
厳かな風に体は揺らされ、下には戦火。
「ルネア!しっかりしろ!」
ボーっとしていたルネアを見かねてか、ラムが声をかけた。
ルネアはラムの声に気づくと、ラムの手を強く握る。
「お願い…は…離さないでぇ…落とさないで…」
ルネアは気が動転しているのかそう言うが、ラムは落ち着いている。
ラムは溜息をついて言った。
「引き上げるぞ?」
返事はなく、ラムはルネアを引き上げた。
引き上げた後、ラムは崖の下を覗く。
戦火に包まれた町や草木、ラムもルネアと同じくらいショックを受けた。
(これが…戦争に巻き込まれた町…)
ルネアは初めて見る光景だが、ラムだって見るのは初めてだったのだ。
突然、ルネアはラムを押し倒す。
ラムは驚いていると、ルネアは目に涙を溜めながら言った。
「危ないです…もっと下がらないと落ちちゃいます!」
ラムはルネアがまだ落ち着いていない事を知ると答える。
「そうだな、もう少しバックするか。」
数分後、ラムとルネアは近くの木に二人で寄りかかっていた。
「買い物の道、逆だぞ。」
「え…」
ラムの言葉に、ルネアは鼻をすすりながら掠れた声を出した。
ラムはその様子に少し困りつつも言う。
「間違った道行ってたんだよ、お前。」
そしてルネアは拗ねた顔を見せる。
「アールさんが買い物できる所あるって言ってたもん。」
「道も聞かないくせして、アールは逆の方向を言ったに決まってんだろ。」
するとルネアは俯いてしまう。
ラムはルネアの顔色を伺うと、ルネアは言った。
「迷惑ばっかりかけてるね僕…。
本当はみんなを救わなきゃいけない立場なのに…いつもみんなに助けてもらってばかり…!」
「そ、そんな事言うなよルネア。」
ラムはどう慰めようか迷いながらもそう言うと、ルネアは続ける。
「過去を…未来を変えるってどうすればいいんだろう…。
わかんないんだ…
みんなが僕みたいな部外者をどう思ってるとか、本当に救えるとか、
僕…一国の王子だけど責任を背負った事なくて…!」
ラムはなんとも言えない気持ちになった。
ラムはつい、自身の胸に手を当てた。
(コイツ…ヘラヘラしてるだけじゃなかったんだ…。
常に疑われている不安があって、多くの人の命を背負ってここに来てる…。
コイツが一番苦しいだろうに、俺なんで気づいてあげられなかったんだろう。
俺の小さな不安と比べたらコイツの不安は…コイツの苦しみは…。
全く恥ずかしくなってくるぜ。)
ラムは自分がいつも小さな事でメソメソしてしまうのが恥ずかしくなる。
ルネアは長い沈黙の先にこう言った。
「ごめんね。
大丈夫、僕は未来の王子なんだ、このくらいできなきゃダメだよね。」
ルネアはラムに笑顔を向ける。
その笑顔に、ラムは強く心を動かされた。
(またこんな顔して…!痩せ我慢してんじゃねぇよ…!)
ラムはそう思うと、ラムは呟く。
「素直じゃねぇな。お前も相当、強がりだ。」
ラムはそう言ってルネアの目を見ると、ルネアは目を丸くした。
そんなルネアを見て、ラムは笑顔を見せる。
「俺、人の弱音聞くの初めてなんだ。弱音を言えないアールといるせいか、いつも俺が弱音吐いちゃう立場でよ。」
すると、ラムはルネアを抱擁した。
ルネアはさっきから涙を堪えていたが、大きく包容力のある腕と暖かさに粒の涙がこぼれる。
「でも俺はお前の事嫌いじゃねぇぞ。こうして言ってくれたからな。
…無理すんなよ、一人でできねぇなら俺も手伝う。そうなんでも背負い込むもんじゃねぇよ…」
そのラムの穏やかな顔は、ルネアには見えていはない。
ルネアはそれでも温かい心を感じ取り、目を閉じて静かに涙を流した。
「あり…がと…」
ルネアはそう言った。
(きっと…過去のサグズィは恐ろしい事だけじゃなく、素敵な事もいっぱい…だよね…)
ルネアは涙が止まるまで、暫くそのままの状態でいた。
ある動機をきっかけとして、
すっかり気持ちがいい方向に変わる事。
=================
いつもの服にショルダーバッグ。
児童園近くの緩やかな坂道の上、ルネアは一人心に決めるのである。
(今日は運命の日…
そう、僕は産まれて初めて…一人で買い物に行きます!)
と、真剣な眼差しで実況。
本当はお買い物なんて誰も頼んではいない。
ルネアが勝手に地図を見つけ、勝手に行こうとしているだけである。
(先日の屈辱…!児童園のみんなは買い物に行った事あるのに、僕だけないだなんて…!)
ルネアは悔しそうな顔を見せて思った。
そしてラムの煽り顔が浮かんできた。
――「行った事もないのか?仕方ないヤツ。」――
ルネアは悔しくて悔しくてたまらなかった。
そして次に余裕な表情を浮かべる。
(ふふ、でも僕は見つけた…地図をね!これで行けるんだ!お店に!買い物に!)
そうしてルネアはバッグを漁るが、何かに気づく。
「あ…」
(地図…忘れた…)
しかしルネアはめげなかった。
(いやいや!地図がなくてもお買い物出来る事を証明するチャンスじゃないか!)
ルネアは無駄にポジティブだった。
何も知らないのは幸せな事、ルネアは夢見勝ちなのだ。
そしてルネアは、張り切って出かけるのであった。
数十分後、ルネアは楽しさのあまり道を覚えずに知らないところまで来てしまう。
今日の天気は曇り、薄暗い湿った空気の木々が並ぶ道。
それを意識すると、ルネアの心は窮屈になり不安を覚えた。
(まさか…ヤバイ所に来てないよね…?)
ルネアは気分が落ち込んでいくと、急に児童園のみんなや未来の家族を思い出す。
(怖い…なんで過去のサグズィは、こんなに静かなんだろ…)
そして戦争を思い出す。
(戦争で…みんな息が苦しいのかな…今の僕みたいに…)
ふと、ルネアの目には涙が浮かんだ。
(ダメだよここで泣いちゃ…!僕…弱いからすぐ泣いちゃって…)
ルネアは悔しさからか、更に涙が溢れてしまう。
その時だ、遠くから人の声が聞こえた。
ルネアは呼び寄せられるように、その声の方向へ走った。
ルネアにとって、この窮屈で静かな森は監獄のようだった。
だから人を見たかった。
きっと心が軽くなるだろうと、彼はそう思ったろう。
声が近くになるにつれ、それが歌声だと知る。
力強く芯のある声。
木々を抜けると、目の前は崖。
崖の向こう側には、出っ張った崖に立つアールが歌っていた。
崖に吹く強い風に立ち向かうように、一直線に歌い上げる。
彼の表情や歌声には、様々な感情が入り組んでいた。
崖の下の生物は、彼の歌声に崖を見上げる。
彼の迫真の歌声に、曇り空も嵐の空に錯覚してしまう。
リートの心包む歌声とはまた違う。
心を騒がせ、誰をも奮い立たせる、狭い奥地から解放される歌声。
力強い歌声に、暫くの間唖然として聞いていたルネア。
盛大に終わる歌声は、そのまま虚空へと響いた。
アールは歌いきるとハンカチで汗を拭い、いつものクールな様子に戻っていた。
そのまま近くの木に歩くと、頭だけを木につける。というかぶつけた。
ルネアは何事かと思っていると、アールはゆっくりルネアのいる方向を見る。
この不機嫌な顔、大方ルネアに聞かれてしまったからだろう。
ルネアは遠回りしてアールのいる崖まで走った。
「そんな顔しなくていいじゃないですかー!とても良かったですよ!
なんで練習でもこのくらい出さないんですか?」
アールは木に寄りかかって座ると言う。
「機嫌が悪いとよく声が出る。」
「え!?普通逆じゃありません?」
「どっちもある。」
即答されると、ルネアはふと聞いた。
「歌は好きですか?」
「…別に。」
「え?」
「みんながやっているからやってるだけ…」
ルネアは苦笑してしまうと思う。
(これじゃいつまで経っても練習に力が入んないわけだ…)
アールはルネアのショルダーバッグを見つめた。
「ショルダーバッグ…」
「そうだ!僕お買い物しようとしたら道に迷っちゃったんだ…!」
ルネアは自分の目的を思い出したところで、アールは言った。
「買い物ができるところなら近くにあるが。
…。…案内してやろうか?」
アールは若干言おうか迷っていたが、案内すると言ってくれる。
ルネアはその言葉に甘えようとしたが、一人で行くと決めた事を思い出す。
「いいえ、結構です。近くにあると分かればそれで。
僕は今一人で買い物チャレンジしてますので!」
ルネアは格好つけて言うと、アールは小さく俯いた。
「そう…か。」
ルネアは張り切って歩いていくと、アールは小さな声を出して手を伸ばした。
「逆…」
なんとルネアが向かった先は、アールが教えようとしていた道の逆らしい。
小さな声だったので、ルネアには勿論聞こえない。
アールは一歩前に出たが、考えてしまう。
(…ついて行ったら迷惑…迷惑…)
アールは自分にそう言い聞かせ、ルネアの後ろ姿を見守るしかなかった。
モヤモヤしつつも、まずは深呼吸をしようとしたアール。
吸った空気を吐こうとした時、
「アールさん。」
とレイが背後に現れる。
そのせいで「うっ」と息を止めてしまうアール。
レイは忍者で足音も立てずに歩くので、耳の良いアールにとっては足音無しの急な挨拶はとても心臓に悪かった。
ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*
「ルネアはどこだよっ!」
ラムは児童園のみんなに聞いた。
ラムの声を聞いたツウは言った。
「さあ、どこか出かけて行ったよ。」
「はぁ!?ちょ、俺探してくるわ!」
ラムはそう言って外に出かけると、入れ違いになるようにルカがツウの元にやってくる。
ルカは一枚の地図を持っていた。
「ツウ?地図が児童園の前に落ちてたけど誰のん?」
「そう言えば今朝、王子が地図を見つけて喜んでたような…」
ツウがそう言うと、ルカは地図を見つめる。
すると目を大きくして驚くのだ。
「んげっ!これ闇市に丸ついてるぅう!
ヤバい取引しかされてないお店!」
「なんだって!?」
ツウも驚いて地図を見せてもらうと、ツウは少し考えてから言った。
「もしかして、これ王子が…?」
「えぇ!?ルネアが!?」
「ここは僕が過去に売りに出されそうになってた闇市じゃない、そんな事は児童園のみんなが知ってる。
他に誰がこんな所に丸つけるのさ!」
「危ないよ!凄く危ない!」
ルカが慌てると、ツウは冷静になって言う。
「わかってる!まめきちさんに相談しよう!」
こうして二人は部屋を出るのであった。
ラムは走ってルネアを探していると、アールとレイが一緒にいる所を目撃。
ショックした顔をしてしまうと、ラムはこっそりと覗いてしまう。
アールはラムに気づくと、わざとレイから距離を離してラムの方へ来た。
「ラム?どうした、そんな急いで。」
レイは空かさずアールの隣に来て、ラムを睨みつける。
ラムはレイと目を合わせないようにしてアールに言った。
「ルネアを探しててよ!アイツ誰にも言わずにどっかに出かけたみたいで!」
するとアールは言う。
「さっき会ったぞ、あっちに向かった。
買い物と言っていたが、逆の道へ行ってしまって…このままだと近くの崖か闇市に…」
それを聞くと、ラムは咄嗟にアールに怒った。
「おい!なんで止めなかったんだよ!!
どっちも危険な場所だろうがよ!」
アールはそれに驚いてしまうと控えめに言う。
「言い訳をするようだが…一人で行くと言われたから一人にしてしまった…すまない…。」
反省している様子だったが、ラムはそんなアールを許そうとしなかった。
「ったくよ!アイツの身に何かあったらどうすんだ!
…アイツはこの世界の危険なんてこれっぽっちもわかってない平和脳なんだぞ!ちっとは考えろ!」
ラムはそれを言い捨てると、走ってルネアが向かった方向へ走るのだった。
アールは何か言いたげだったが、あまりの罪悪感に声が出ない。
そんなアールを見て、レイはふふっと笑った。
「さあ、行きましょう。」
アールはラムが向かった方向を見つめながらも、渋々レイについていく。
ルネアは草花を見てスキップをしていた。
更に歩いていると、その先は崖だと気づく。
(そう言えば、さっきアールさんが崖で歌ってる時、なんか凄くスッキリしたな!
僕も崖で歌ってみればスッキリするかも!)
ルネアは歩いて崖の先端まで歩くと、崖の下の光景に目を疑う。
火に巻かれた小さな町、木々が炎を纏いながら倒れた。
建物は半壊状態で、建物とわかる建物はごく少ない。
瞳に赤く映る炎、巻き上がる火の粉。
遠すぎて細かい事は分からないが、きっとこの中には人もいる。
(戦争…?)
ルネアは初めて見た恐怖の光景に佇んでいると、ラムがそこにやってきた。
「ルネアっ!そこ危ない!」
ルネアはその声に驚いて、足を滑らせてしまう。
「うわぁっ!」
ルネアは崖から落ちそうになり、ラムはそこに全力で向かう。
反応が遅すぎたせいか、ルネアは崖に生える草しか辛うじて掴めなかった。
根の部分を掴んだので少し安定していたが、すぐにブチッと千切れてしまう。
「いやぁっ!」
ルネアは叫ぶと、ラムが間に合ってルネアの腕を掴んだ。
宙にぶら下がるルネア。
こんな経験は初めてで、服や体の重みをしっかり身に染みて感じる。
厳かな風に体は揺らされ、下には戦火。
「ルネア!しっかりしろ!」
ボーっとしていたルネアを見かねてか、ラムが声をかけた。
ルネアはラムの声に気づくと、ラムの手を強く握る。
「お願い…は…離さないでぇ…落とさないで…」
ルネアは気が動転しているのかそう言うが、ラムは落ち着いている。
ラムは溜息をついて言った。
「引き上げるぞ?」
返事はなく、ラムはルネアを引き上げた。
引き上げた後、ラムは崖の下を覗く。
戦火に包まれた町や草木、ラムもルネアと同じくらいショックを受けた。
(これが…戦争に巻き込まれた町…)
ルネアは初めて見る光景だが、ラムだって見るのは初めてだったのだ。
突然、ルネアはラムを押し倒す。
ラムは驚いていると、ルネアは目に涙を溜めながら言った。
「危ないです…もっと下がらないと落ちちゃいます!」
ラムはルネアがまだ落ち着いていない事を知ると答える。
「そうだな、もう少しバックするか。」
数分後、ラムとルネアは近くの木に二人で寄りかかっていた。
「買い物の道、逆だぞ。」
「え…」
ラムの言葉に、ルネアは鼻をすすりながら掠れた声を出した。
ラムはその様子に少し困りつつも言う。
「間違った道行ってたんだよ、お前。」
そしてルネアは拗ねた顔を見せる。
「アールさんが買い物できる所あるって言ってたもん。」
「道も聞かないくせして、アールは逆の方向を言ったに決まってんだろ。」
するとルネアは俯いてしまう。
ラムはルネアの顔色を伺うと、ルネアは言った。
「迷惑ばっかりかけてるね僕…。
本当はみんなを救わなきゃいけない立場なのに…いつもみんなに助けてもらってばかり…!」
「そ、そんな事言うなよルネア。」
ラムはどう慰めようか迷いながらもそう言うと、ルネアは続ける。
「過去を…未来を変えるってどうすればいいんだろう…。
わかんないんだ…
みんなが僕みたいな部外者をどう思ってるとか、本当に救えるとか、
僕…一国の王子だけど責任を背負った事なくて…!」
ラムはなんとも言えない気持ちになった。
ラムはつい、自身の胸に手を当てた。
(コイツ…ヘラヘラしてるだけじゃなかったんだ…。
常に疑われている不安があって、多くの人の命を背負ってここに来てる…。
コイツが一番苦しいだろうに、俺なんで気づいてあげられなかったんだろう。
俺の小さな不安と比べたらコイツの不安は…コイツの苦しみは…。
全く恥ずかしくなってくるぜ。)
ラムは自分がいつも小さな事でメソメソしてしまうのが恥ずかしくなる。
ルネアは長い沈黙の先にこう言った。
「ごめんね。
大丈夫、僕は未来の王子なんだ、このくらいできなきゃダメだよね。」
ルネアはラムに笑顔を向ける。
その笑顔に、ラムは強く心を動かされた。
(またこんな顔して…!痩せ我慢してんじゃねぇよ…!)
ラムはそう思うと、ラムは呟く。
「素直じゃねぇな。お前も相当、強がりだ。」
ラムはそう言ってルネアの目を見ると、ルネアは目を丸くした。
そんなルネアを見て、ラムは笑顔を見せる。
「俺、人の弱音聞くの初めてなんだ。弱音を言えないアールといるせいか、いつも俺が弱音吐いちゃう立場でよ。」
すると、ラムはルネアを抱擁した。
ルネアはさっきから涙を堪えていたが、大きく包容力のある腕と暖かさに粒の涙がこぼれる。
「でも俺はお前の事嫌いじゃねぇぞ。こうして言ってくれたからな。
…無理すんなよ、一人でできねぇなら俺も手伝う。そうなんでも背負い込むもんじゃねぇよ…」
そのラムの穏やかな顔は、ルネアには見えていはない。
ルネアはそれでも温かい心を感じ取り、目を閉じて静かに涙を流した。
「あり…がと…」
ルネアはそう言った。
(きっと…過去のサグズィは恐ろしい事だけじゃなく、素敵な事もいっぱい…だよね…)
ルネアは涙が止まるまで、暫くそのままの状態でいた。
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魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。
――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。
「ここ……どこ?」
現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。
救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。
「ほら、食え」
「……いいの?」
焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。
行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。
旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。
「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」
「ウチの子は天才か!?」
ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。
これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。
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王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~
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アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。
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どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ!
「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」
かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。
しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。
「今度こそ、私が世界を救って見せる!」
失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!
剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。
イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。
小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
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ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
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悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
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