六音一揮

うてな

文字の大きさ
上 下
34 / 95
3章 即興間奏

第32音 論理思考

しおりを挟む
【論理思考】ろんりしこう
論理的思考。
物事を筋道立てて論理的に考える能力の事。

===================

ルカ達の方では。
児童園を囲んでいる森を抜けたツウ達一行、少し大きな街が見えてきた。
ルカは両腕を手で摩りながら言う。

「なんかー、最近寒ない?」

ツウは暫く黙ったが言った。

「そうかな?僕は平気だけど。」

「私も~」

最早ほぼ上半身裸であるダニエルもそう答えると、ルカはくしゃみをした。
それを見た二人は驚き、ツウは自分のケープをルカに貸す。

「ルカ兄は本当に寒がりだなぁ。こんなの人間だって寒がりゃしないよ。
ま、歌を披露する学校は室内だから多少あったかいはず。到着するまで我慢して。」

「はい…」

ルカは寒さに負けて小声で言うと、ツウは見えてくる街を見て言った。

「そろそろ僕もこれ着用かな?」

ツウはそう言うと、首にかけていたゴーグルを着用。
ルカはゴーグルをかけたツウを笑うと言う。

「ツウ真面目に宇宙人みたい」

ツウは笑った。

「他惑星から来たんだし宇宙人だよ~」

「そうだったわ~ん」

ルカもしっかり頭巾を被り、耳を隠す。
マイペースなダニエルはいつも最後尾なのだが、今日はユネイが最後尾。
ユネイは早口で呟く。

「雲の上にあるサグズィに伝わる伝説では 例え同じ惑星に存在する地上の人間でもサグズィの敵
地上の人間から逃げる為に 女神『ツィオーネ』がこの惑星の空に浮かぶ島サグズィを作ったとされ
今でもサグズィは地上と一切交流はしておらず未開の土地
サグズィにとって地上の人間も宇宙人みたいなものだ
同じ星の上の生物なのに なかなか面白い」

その言葉に一同は黙る。
ダニエルはユネイの早口に追いつけず全部聞こえていない様子だった。
ツウは言う。

「確かに。サグズィは地上と交流はないのに、他惑星とは交流あるよね。
地上に行けないのかな?どうやったら地上に行けると思う?」

ダニエルは答えた。

「でも、地上をカメラで捉えた人の話では地上の魔物も戦争をしてるって話よ。
だから誰も行こうとしないの。」

ルカは空を見上げると呟く。

「どこも戦争ばっかっしょ。
早く平和来ないかな~」

ダニエルはその言葉にクスッと笑った。

「も~シナみたいな事言っちゃって~」

「これ本心~」

ルカが言うと、ツウも続けて言う。

「誰だって思ってるって。シナさんはちょっとこだわりすぎだけどね。」

ユネイは言った。

「【同調効果】かな?
気になってしまう人の行動や言動を知らずのうちに真似してしまう効果」

するとルカは顔を少し赤くしてユネイを追いかける。

「ユネイ!いい加減にせいやぁ~!」

ユネイはルカに捕まるが、びくともしない。
ツウは笑う。
ダニエルはユネイの早口についていけないので、さっきの話はまるっきり理解していなかった。
ツウは言う。

「ユネイは知的だね、ロボットだから仕方ないかー」

「マスターも十分に知的だと思う
僕から見てだけどね」

ユネイが言うと、ツウは頷いた。
そしてルカも言う。

「それわかるかも。」

ダニエルは溜息をついてしまう。

「ユネイもテノも話す速度が早すぎて読めないわ…っ」

そしてルカも便乗して笑顔で答えた。

「アールもユネイも危険リストじゃ~」

ツウは笑っていると、ユネイは言う。

「僕とアールが危険?
僕とアールは相反している様に見えるんだがどこが危険なんだろう」

「似てない?」

ルカが言うと、ユネイは首を横に振った。

「僕は本を借りる時はまとめて借りるけど、彼は一冊一冊借りに行くから効率が悪い
その割に回りくどいのが嫌いで短気な人
彼は働き者で、僕はそうでもない
完全に違うと思うよ」

その言葉にルカは黙ってしまうと、ツウは笑う。

「いやいや当たり前だよ。
そんなそっくりな人間いるわけないんだからさ。」

ユネイは理解ができないのか黙ってしまうと、ダニエルは言った。

「ロボット同士は完全一致して当たり前って感じなのかしら。
だから人間の個性の不一致が理解できないのかしら…?」

「ツウの故郷で作られたロボットよねん?ユネイは。
ロボットはみんなユネイみたいな感じなの?」

ルカが聞くと、ツウは首を傾げてしまう。

「僕が四つの頃だから覚えてないよ。
ユネイは護衛用ロボだったけど、僕が改造したから多少は違うと思うよ。」

「護衛用って…どんだけ危ないねんツウの星~!」

「人食い魚が僕達目当てによく現れたからね。
そのせいで僕達の種族は、世界を転々としながら生きなきゃいけなくなったんだ。」

「えぇ…」

ルカは恐怖で震えていると、ダニエルはツウに聞いた。

「ねぇ、話逸らしちゃうけどいい?
まめきちさんから聞いた話だけど、ルカとアールはツウの星で拾われたんでしょ。
でも二人はツウと同じ人間の姿にしちゃ、ツウと匂いが似てないのよねぇ~。
他にも人間の種族がいたの?」

「いや、人間型の種族は今も昔も僕達だけさ。
僕もルカ兄とアールは僕達と違う種族だなって思うよ。」

「どどどどゆ事ん!?
俺、ツウと同じ星で拾われた同種だからって、仲良く出来たんちゃうのぉ!?」

「関係ないでしょー種族とか。」

ルカの言葉にツウは呆れた様子で答えると、ダニエルは難しい顔をした。
ルカは険しい顔を見せると言う。

「俺って捨て子だったんだよ。そんな転々としちゃう種族がさ…子供捨てるって考えられなくない?」

「それもそう。」

ツウが言うと、ルカは顔を真っ青にした。

「まさか俺が出来損ないだから捨てられたとか…!?」

「確かにルカ兄は頭悪いけど、そんなのゼロ歳の赤子でわかるわけないし。」

ツウの言葉にルカは難しい顔を見せると、ダニエルは言う。

「人が多くなりすぎたとか?」

「いや、そんなんで子供を捨てるような種族じゃない気がするんだ。
だって、子供を捨てるって天敵の人食い魚に餌あげるようなもんだもん。」

ダニエルもルカもお手上げなのか、遂には二人共考え込んだ。
それに対し、ユネイは聞く。

「どこで拾われたかまめきちさんから教えられてる?」

それを聞くと、ルカは目を丸くした。

「え?…なんか氷の洞窟でだって。
明らか凍死するだろって所で俺もアールも捨てられてたんだって。
そのせいか俺もアールも寒いの苦手でさ~っ!」

ルカの答えに、ユネイは心当たりがあるのか言った。

「マスターの星には、【永久氷洞】という洞窟があるよ
低い気温に耐えられない体に変化させる魔法を施した洞窟なんだ
マスターの星は水の星
気候は寒冷だから、天敵を撃退するのにその魔法が施された洞窟を使っていた
それはマスターの星の住人だけでなく、他惑星の生物も重宝していた
だから他惑星から連れてこられた可能性もある」

「だからアールもルカ兄も寒いの苦手なんだ…」

ツウが納得してしまうと、ルカは冷や汗。
ユネイは続けて言う。

「罪を犯した魔物や生物に懲役を与える為に使われたり、危険な生物は洞窟に連れて行かれる事がある
二人は赤子の頃からいたって事は後者なんじゃないかな」

「つ、つまり俺とアールは危険なの?」

「さあ?」

ツウは白々しく言うので、ルカは涙目になってしまう。
更にユネイも空かさず言った。

「それが必ずというわけではない 例外も勿論あるよ
僕には分かり兼ねる領域だけど」

「俺!そんな怖い生き物ちゃうもん!」

ダニエルはそれに笑ってしまうと言った。

「知ってるわよ。私達三人を引っ張るリーダーだものね。」

するとツウも便乗して言う。

「そうそう。元は悪い生き物だったとしても、今は児童園の合唱団。
ルカ兄もアールも、僕達も種族関係なしに家族なんだからさ!」

それを聞いたルカは恥ずかしそうに一瞬したが、すぐに胸を張って高らかに宣言する。

「そ、そうだよな!
そう!俺はテノールの頂点に立つルカ・プレズ!そして三人を引っ張るリーダー!です!」

ツウは愉快そうに笑うと、ルカは道の先の街を虚しそうに見つめた。

「アールだって…沢山の子供に嫌がらせ受けてるけど…俺達の大事な家族…!
アイツだけ仲間はずれっておかしいと思うんだ…!」

「でもルカ兄も怖いんでしょ?」

ツウが言うと、ルカは図星なのか反応する。

「うっ…こんなんじゃ助けらんねぇな…!
俺と姉さんが一番、アールと長い間一緒にいるのにさ…。」

「アールにはパートリーダーのみんながいるんじゃん。最近は王子もいるし。」

ツウの言葉にルカは黙ると、それから笑顔を見せた。

「そうだのん!」

ルカが謎の言葉を発したところで、町に着いた様なのでユネイは言った。

「着いたよ
さあ行こうか」

「おう!」

ルカは陽気な返事をして、三人の先頭に立った。



しおりを挟む

処理中です...