六音一揮

うてな

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3章 即興間奏

第33音 軽慮浅謀

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【軽慮浅謀】けいりょせんぼう
浅はかで軽々しい考えや計画。

=============

一方、ルネア達の方では。

太陽が昇ったサグズィ、所々草の生えた長い砂道をルネア達が歩く。
ノノは先頭を歩き、テノは疲れたのかその後ろで歩いていた。
テノは負けじと前に出ようとするが、ノノには勝てない。
シナやリートは疲れてきていて、後ろの方にいた。
ルネアも勿論疲れてはいるが、まだまだ行ける様子だった。
ラムも荷物を持っているので、少し堪えてきたようだ。
アールも共に荷物を持っているが、彼の表情では疲れているかの判別はできない。
テナーは疲れきって最後尾をトボトボと歩いていた。

「お前ら体力ねぇなぁ。ノノやルネアを見てみろよ。」

ラムが疲れている人達に言うと、疲れてしまっている人はルネアとノノを見る。
ノノは気にせず歩いていたが、ルネアは視線を感じて満面の笑みでガッツポーズを見せた。
その傍でイーちゃんは元気よく飛び回るが、周りは疲れていて反応する余裕はない。
遂にはテナーが足を止めてしまい、その場で休憩。
ラムはテナーに気づく。

「おい、テナー大丈夫か?」

テナーは再び歩くが、足元がフラついていた。
するとアールは溜息をついて言う。

「仕方のない奴だな。」

そして背負っていたバッグを前にしてから、テナーの前に来た。

「今はしゃがめない、飛び乗れ。」

アールの言葉にテナーは笑顔になると、お構い無しに飛び乗ってくる。
ラムはそれを見て驚くと言った。

「アール…大丈夫かよ、荷物くらいは持つぜ?」

「体力には自信がある。」

アールはそう言うだけ。

「そうじゃねぇんだよ…」

ラムは呆れてしまうと、シナは口を尖らせる。

「テナーだけずるーっ!」

するとテノはイライラした様子で言った。

「うっせ歩けッ」

「はぁー?」

二人の喧嘩が始まりそうな時、リートは二人の仲裁に入る。

「まあまあ、二人とも落ち着いて…」

「…リートが言うんなら…」

シナは落ち着くが、テノはそっぽ向いた。

「ちぇッ」

テノは早歩きを始めていたが、リートはアールとテナーに夢中。
また妄想の材料を手に入れたと言わんばかりの顔つきで、疲れを忘れてしまったようなので結果オーライだ。
ルネアはジッとアールを見つめていると、ラムは言う。

「見守ってねぇで荷物持ってあげてくれよ。」

ルネアは頷くと、アールの目の前までやってきた。

「荷物持ちますよ!」

「大丈夫。」

アールは即答するので、ルネアは眉を潜める。

「いや、だって男の人を一人背負ってるんですよ?」

「退いて。」

それでもアールはルネアを頼らないので、ルネアはバッグを無理矢理奪う作戦に出た。
バッグを掴んで乱暴に引っ張り、アールは諦めるまで耐えようと考えてはいたが…
ルネアの引く力が案外強くてバランスを崩しかける。

「ルネアっ…やめろ!」

そしてアールはそのまま前かがみに転んでしまう。
みんなはアールの方に視線が行き、シナは言った。

「ちょっとアンタら何してくれてんのよー!」

「アールさんごめんなさい!」

ルネアは謝罪すると、テナーは急いでアールから降りる。
それと同時にアールは起き上がると、急いでバッグの中を見た。
バッグの中身を確認すると、アールは暫く間を置いてから呟く。

「…おにぎりが潰れた…。」

みんなは一斉に反応。

『あぁ…』

ラムはアールまで駆け寄ると言った。

「大丈夫かアール!?おにぎりなんていいんだよ!お前が怪我してなきゃそれで!」

アールは心配されたのを少し嬉しかった為にラムを見つめていると、シナは言う。

「形崩れたの食べるのやだー」

ラムの視線はシナに向かっており、アールの視線には気付かなかった。

「我儘言うんじゃねぇ!」

いつも通りのラムを見ると、アールは再びバッグに目を落とした。

「みんなのお昼…」

アールの呟きに、ルネアは罪悪感を覚えてならない。
アールもルネアも深く反省している様子なので、みんなも怒る気になれないでいるとアールは言った。

「…私のお昼…」

みんなの空気が一気にぶち壊される感じがした。
確かにアールの昼ご飯でもあるが、反省すべき状況でちゃっかり自分の事も考えているのが彼らしい。

ノノとテノは少し遠くを歩いていたが、アールのせいで立ち止まったみんなの元に走ってくる。
ノノが勿論先頭を走り、テノは遅れ気味。
みんなが揃った事を確認したリートは一つ提案する。

「近くに木があるから、木陰で少し休みましょ?」

一同は大賛成し、一度休む事にした。



日差しを塞ぐ木の下、一同は涼みながらも少し早めのお昼ご飯。
バッグから形の崩れたおにぎりを出す。

『いただきまーす!』

潰れてしまったおにぎりでも、一同は平気そうに食べていた。
ちゃんとラップに包まれていて、形が崩れただけだからである。
それでもルネアは食べ阻んでいたが、みんなの様子を見て一口食べた。

「ん!全然美味しい!」

「味が変わる訳ねぇだろッ」

テノは悪態をついて言っていた。

「この形の方が食べやすいわね。」

シナはフォローなのか本当なのか、わからない事を言う。
ノノは楽しいのか木の周りをウロチョロとしつつおにぎりを食べていた。
それを見たラムはノノに注意をする。

「座ってたべろよノノ。」

「じっとしてるのは退屈じゃ。」

ノノの答えに、ラムは溜息をついてしまう。
イーちゃんは大人しく木の枝の上でおにぎりを食べていた。
ラムは地図を見ると言う。

「もうすぐ着くみたいだな。」

空かさずシナは言う。

「本当にもうすぐなんでしょうね。」

それに対し、リートは苦笑しつつも言った。

「もうすぐだから、みんな頑張りましょう。」

元気よく返事する一同を傍に、アールはみんなのいる木の逆側に一人ポツンと座り込んでいた。
しかもこぢんまりとおにぎりを食べている。
相当さっきの出来事がショックだったのだろうか。
ラムはアールが心配になって声をかけた。

「アール?」

するとアールは急に立ち上がる。大方驚いたのだろう。

「…おにぎり……」

アールはそう呟き、まだ反省している様子だった。

「大丈夫よ、こんくらい。」

シナが言うと、アールはみんなの所にゆっくりやってくる。
一同はアールに視線を向け、アールに笑顔を送る人もしばしば。
アールは少し黙ると、バッグからおにぎりをいくつか…結構多めに持って近くの大岩に隠れてしまった。
ラムは逃げられたのだと思うと微妙な反応を見せる。

「あー…」

「アールってあんなにシャイだったっけ?」

と、リートは首を傾げていた。



大岩に隠れたアール、そこには尾行していたレイが隠れていた。

「やっぱり来てくれたのね。」

レイは微笑むと、アールは抱えたおにぎりを見つめて言う。

「お呼びですから。」

そしてアールは沢山持ってきたおにぎりから、一つ取って食べ始めた。
レイはそんなアールを見てにんまり。
自分に逆らえない事をイイ事に、アールがいつまでも自分と一緒にいてくれるからだ。
にしてもアールはよく食べる、レイはその様子に目を丸くした。

「前から思っていたけど、アールさんって意外とよく食べるのね。
太らない体質は羨ましいけど、食べ過ぎると体が鈍くなるわよ?」

そう言ってレイは笑うと、アールは食べるのをやめてじっと黙ってしまった。
あまりにも黙っているので、レイは言い直す。

「ああ、別に食べるなって言ってるわけじゃないの。
あの子達もおにぎり作りすぎちゃってるもの。」

アールはそれでも黙っていたが、次に沢山のおにぎりを漁った。
形の良いものを選ぶと、レイに渡そうとするが上手く話せない様子。
レイは不器用なアールを見て笑ってしまうと、そのおにぎりを貰った。

「ありがとう。」

アールは俯いてしまうと、レイは微笑んだまま言う。

「あなたってよく変わるわよね。
そうね…、お礼とか褒めるとか謝罪するとか、恥ずかしくて苦手なのよね。
不器用さん、もうちょっと頑張ってくれなきゃ。」

アールは眉を潜めながらもおにぎりを一口食べた。

(この女は、いつも私の心を見透かしてくる…本当に厄介…)

するとレイはアールに寄りかかると呟く。

「ねぇアールさん。
…私ならあなたの全てを理解してあげられるわよ…?
あなたの全てを…受け止められる…。」

アールは驚いてしまう。
まるで全てを見透かされている様に感じたからだ。

「お前は一体…」

アールがつい声に出すと、レイは笑う。

「だって、顔に出てますもの。」

表情が全く変わらないと言われてきたアールにとって、その言葉は衝撃的だった。



ルネア達の所では、ノノが歌を歌っていた。

軽やかで、何にも縛られない歌声。
自由な歌声は空の太陽が照っているのを強調し、周囲の鳥達もさえずりを始めてしまうほど。
優美な高音が高らかに、しかし安らかに響いた。

歌が終わると、一同は拍手。
ノノはそんなみんなを見て笑顔。

「ご飯は終わったかの。では行こうぞ!」

そう言って道を指差すと、みんなの表情が凍る。

(物凄く元気…)

ルネアはそう思っていると、ラムがアールの方に向かおうとしているのを発見。

「あ、ラム。僕が呼びますよ?さっきの事謝りたいし。」

「え、ああ。じゃあよろしくな。」

ラムがそう言うと、ルネアは歌の余韻でスキップしながら岩陰に向かった。

「アールさ~ん…」

ルネアが岩陰を見ると、その光景に驚きを隠せない。
レイとアールが口づけをしていたのだ。
遊びのような雰囲気はない、ルネアは恥ずかしくて顔を赤くしてしまう。
アールはルネアに気づくと、レイを突き飛ばしてしまった。
そしてルネアを岩陰に引っ張り込む。

岩の前にいたルネアを見守っていたラムだが、急にルネアが岩に引っ張られて目が点になっていた。

ルネアは二人の顔を見て

「アールさん…」

と声が震えていたが、すぐに爽やかな笑顔を見せる。

「レイさんの事が好きなんですね。」

アールはその言葉に不機嫌そうな顔を浮かべると言った。

「違う…っ。」

ルネアは頭の上に疑問符を浮かべると、アールはルネアから視線を逸らした。
レイは思っている。

(…ラムって子が来ればよかったのに…)

「誰にも言うな。」

急にアールに言われるルネア。
ルネアは苦笑すると言った。

「言えませんよそんな事…」

(どんどん秘密が増えてきそうで怖いなぁ…)

ルネアはそう思い、アールも思う。

(くっ…なぜルネアにばかり見つかるのか…!調子が狂う…!)

お互い困惑中だった。
そしてルネアはアールの優れない表情と、レイの何食わぬ顔を見ると言う。

「あ!もう出発なんですよ!行きましょう!」

そう言うと、アールの腕を引っ張った。
レイは取り残され、ルネアはみんなに向かう途中で立ち止まってアールに聞く。

「アールさん大丈夫でしたか?…なんだろう。
アールさん、嬉しそうじゃなかったし何か理由でもあるのかなって…」

それを聞いたアールはルネアから目を逸らした。

「詳しい事は、話せない。」

ルネアは慌てた様子で言う。

「大丈夫です!僕は詮索しませんよ!
誰にだって人には言えない悩みの一つや二つくらいありますもん!」

アールはそんなルネアを見つめる。
それからルネアの肩に手をポンと乗せると、そのまま通り過ぎてみんなの方に向かってしまった。

ルネアは以前にも肩に優しく手を乗せられた事を思い出す。

(その手はどういう意味?)

ー+ー+ー+ー+ー+ー+ー+ー+ー+ー+ー+

一同は暫く歩いていると、一軒の建物を発見。
こんな広い殺風景な場所に、不自然にも建物があるのだ。

「地図ではここなんだよな。」

ラムが言うと、建物の扉からまめきちが出てくる。

『まめきちさん!』

みんなが一斉に呼ぶと、まめきちは頷いた。

「よく来たね、ご苦労さん。」

「ここは?」

ルネアが聞くと、まめきちは建物を見上げて言う。

「ここは知り合いの家、もとい占い屋。
私の知り合いはね、未来を見てしまうから占いは百発百中だよ。」

「おぉ!?」

ルネアは驚き、他も驚いている様子。
更にまめきちは言った。

「さあ入ろう、占い師の家へ。」



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