六音一揮

うてな

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5章 諧謔叙唱

第80音 一刀両断

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【一刀両断】いっとうりょうだん
物事を思い切って処理する例え。
また、物事を躊躇わずにキッパリと決断する例え。

======================

ある日の事。
パートリーダー達を前に、テノは胸を張って言う。

「曲できたぜ!」

その言葉にパートリーダー一同は拍手。

「待ってたわ~これで歌えるのね~」

シナはこの時を待ち侘びていたようだ。
そこでルネアは聞いてみる。

「あの、そう言えば結構前に東軍の為の歌を練習してたけど…
その歌はいつ歌うの?」

それを聞いたラムは言う。

「東軍の歌は、東軍が勝ったら歌うもので、勝たなきゃ意味がないってわけさ。
今回作った曲は、戦争が終わらせる為に歌うもの。」

それに納得するルネア。

「でも、みんな揃って歌えるかしら」

と、いきなり暗いところに持っていくリート。
それにみんなは顔を暗くする。

「ちょっとリートそう言う話はよしてよ!」

冷や汗ながらもシナはそう言った。

「誰かが欠けるかもしれないからな。」

とアールは言う。
その言葉にノノは「確かにの」と言うが、テナーやシナは今は考えずにと否定する。

しかし、ルネアは気付いた。
アールの今言った誰かが欠ける。
ラムの事なのではと思った。

魔法戦争が始まってしまう。
そうしたらラムが戦争に連れて行かれるのは必然だ。
その前にアールはラムを封印しようとしている。
その日は近いだろう。

更に言えば先日まめきちさんの言っていた、ラムが封印される時こそ自分も帰る時。
そう考えると別れを近くに感じ、怖く感じた。

でもなぜだろう。
一番は魔法戦争が近い中、アールはラムに一切手を出さない。
まさか封印の事を忘れているのか、それとも封印したくないと考えているのか。
ルネアにはわからないのである。

テナーは難しい顔をした。
アールはテナーの通訳のため言った。

「ギリギリきついラインの音域な気がする」

それを聞いたテノは笑って言った。

「お前等それくらい根性出せ!
出ない音域チョイスされるよりマシだろ!?」

その言葉に微妙な反応の二人。

「そうだな。お前がわざとそういう事を
する奴だって事はみんな知っているからな。」

アールはテノに言った。
テノはアールを真っ直ぐ見て言う。

「嫌ならやんじゃねぇっ!」

アールは考えていた。
もしかしたらラムと歌える曲もこれが最後かもしれない。
真剣にラムの封印の事を考えてはいた。

しかし、封印のために重要なものが足りない。

これではラムを魔法戦争までに封印できるのかも不明。
ボーッと考えていたアールに、ラムは気づいて話しかける。

「アール、どうしたんだ?」

ラムの声を聞き、アールは反応を見せる。

「何でもない。」

ラムはそんなアールを変に思いつつも視線を逸らす。
ラムは思う。
アールはレイの事が好きで、恋煩いをしているのではと。
レイと一緒にいる時間も、前以上に多くなっている気がする。
二人が仲良くしていると、あの日の光景を思い出す。
怖くて二人を直視できない。
しかしアールは竜の一件があった以来、いつも以上に自分のところに来るようになった。
嬉しい事は嬉しい。
しかしその傍ら、友達としての仲なので心にすっぽり穴が空いた感じがする。

むしろ、今でも諦めきれない自分が嫌で仕方なかった。
迷いを無くしたい…ラムはそう想い続けているのだ。



パートリーダー一同は歌に励む。
その隅で一応ルネアも指揮に出ろと、無理矢理テノに言われたので練習中。
なぜ自分も出なくてはと思うルネアではあったが、
大方、別れが近いから最後の思い出作りなのかもしれない。

未来へ帰ったらどうなるだろうか。
ここに来たばかりの頃は無理でも未来に帰りたいと思っていたが、
今は無理でも過去に残りたいとなってしまった。
そうなるまでに愛着が湧いてしまった。
逆に自分がいなくなると知って、みんなはどう思っているのだろうか。

パートリーダー達の発声練習する声が、歌声が耳に響く。
六人の歌が好きで、慣れすぎて、未来で別の重唱団にあったら違和感を覚えそうだ。

アールはラムと一緒にいようとするが、今日は何故だか会話ができず、
ラムの不穏な雰囲気にただ心配になるだけだった。
やっぱり、あの日の事をショックで引きずっているのだろうか。
一気に離れた距離。

周りの者は真剣に取り組み且つ遊びつつも、楽しく朝の時間を過ごしていたのであった。

食堂でお昼を食べる一同。
いつも以上に静かだ。
確かにご飯は静かに食べるものである。
しかし、それだけではない気がした。
みんなは何かを思っている。

レイはアールに言う。

「アールさん、よく食べるくせにグリンピースは嫌いなのね。」

その言葉に一部の者がクスッと笑った。
ルネアがアールを見ると、アールはグリンピースだけを避けて食べていた。

「嫌いなんですか?」

ルネアは聞いてみる。
アールはルネアの方を見て静かに頷く。
ラムはアールにあまり関わらないように黙っていた。
シナがそれに気づいて言う。

「バリカンはグリンピースが怖いのよ。私のせいで」

ルネアはどうやってやったのか気になっていた。
そこにツウが現れて言った。

「ねえ、魔法戦争始まるって知ってる?」

みんなは吹きそうになる。

「今頃…?」

ルネアが聞くと、ツウは首を横に振って言った。

「あれ、知らないの?前々から予定されていた魔法戦争。
これね、兵力集めも終わったし始まるらしいよ。
お互い急いでいるらしいから早めに完了したらしい。」

みんなは顔を一気に青ざめさせる。


戦争が始まる。


一番恐れていた戦争が始まろうとしている。
シナは机を叩いて言った。

「別に適当に集めただけでしょ!
魔法戦争を始めるとかも、近くの基地にいる隊長が申し出た事でしょ!?」

その言葉にユネイは言う。

「ベスドマグ隊長は魔法力も高い方だし ただの隊長ではないよ
ここ数年で上まで上り詰めている実力者だよ」

その言葉に「あのおっさんが?」とルカは言う。
「人柄など関係ない」とノノは言う。
みんなは何度か頷くと、ラムは呟いた。

「あの人、目的のために手段を選ばなそう。
何を言っても駄目だろうな。頑固っぽいし。」

「頑固だから上り詰めた!」

とルカは笑顔。
みんなは苦笑いをしていた。

そこで、ルネアは思う。
そして無理矢理にでもアールを廊下に連れて行くと聞いた。

「アールさん。ラムの封印は?このままじゃ始まってしまいますよ!」

ルネアはアールを真っ直ぐ見る。
すると、アールも何だか慌てているような表情がほのかに伺えた。

「考えていなかったんですか!?」

ルネアが更に問い詰めるように言うと、アールは呟くようにして言う。

「駄目なんだ…。足りない。
これではラムを封印できない。」

ルネアは焦って更に聞いた。

「何が足りないんですか!?」

アールは何か憚ったがルネアに聞く。

「お前はラムをどう思っている。
ラムにとってお前は何だ?信頼できる友達か?それとも…、」

そう言われると、ルネアは少し黙ってから答えた。

「僕は心から信頼してます!友達以上です!」

アールはそれに少し目を見開いた。

「ラムはどう思っている…?」

「知らないですよ!と言うか!
何で今この状況でそれを言うんですか!」

アールは反応を見せたが、すぐに視線を逸らす。

「……いいや、何でも…。」

「何ですか!何か隠してますよね!?」

すると、アールはルネアから少し距離を置いた。

「お前と仲が良いならそれでいい…。」

ルネアはその言葉に少し寂しさや悔しさ、悲しい感情が見える気がした。
どこかアールは虚し気な態度をとっており、ルネアから目を背けている。

「アールさん?」

「…本当に、迷惑だ…。」

とアールはいつもの真顔ではなく、少し砕けて笑っているようにも見えた表情だった。
そう言うと、アールは食堂へ戻っていってしまった。
ルネアはその表情に不気味さも感じていたが、「どうするの!?」と言って考え込む。

自分ではわからない。ラムの封印の仕方。
しかし、何かが足りないとアールは言っていた。
それを埋めればいいはずなのに、彼は教えてはくれなかった。
また彼が一人で実行しようとしているのか。
それは駄目だと、ルネアはもう一度アールと話し合いをするつもりで向かった。



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