六音一揮

うてな

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6章 行進変奏

第88音 限界突破

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【限界突破】げんかいとっぱ
限界を超える事。

=======

ルネアはアールの呼ぶ声に反応して手を振る。

「アールさーん!大変なんですー!」

と言いつつ、目の前に大きな翼を広げ降り立つので、
「うおお」とルネアは驚きつつアールを見た。

「魔法が強すぎるのかわかりませんが、これ以上奥に行けないんです!」

ルネアが言うと、アールはその部屋の前まで来た。

「…魔法が強すぎてこれ以上無理に進んだら消滅するかもな。」

それに対し、ルネアは冷や汗で言う。

「さっきからこの光が広がってる気がするかも」

「これが完全に広がればサグズィの消滅と言う訳か。」

「じゃあ僕がこの中突っ込んだら消滅じゃないですか?」

アールはその言葉に深く頷く。
ルネアは涙目ながらも「薄情です~!」と言っていた。
アールは溜息をつくと、光を見つめている。

「……そのままにしていてもいずれ広がる。
その時はこの地上の消滅、私達は消える。
それならば足掻いて飛び込んだ方がいいだろう?」

アールのその言葉にルネアは黙る。
確かにどうせ消えるなら足掻いた方がいい。
いや、ここが消えるならまた過去に戻って未来を変えたいと思う。
しかし戻り方はわからない。
ルネアはアールを見て言う。

「やっぱり、行きます。
僕根性無しですけど、もうそんな事言われたくなです。
ここで男の度胸を見せます!
僕ばかり怖がってちゃいけないんです、一人でやっていかなければならないんです!」

それを聞いたアールは鼻で笑った。

「お前にしてはいい覚悟だな。
一人でやる…言う事は誰でもできるが実行がな…。
私はお前の覚悟を無駄にしたくはない。」

ルネアは正直少し驚いた。
こんな時、ラムだったら一人で背負うなと言った。
多分自分も、目の前に自分と同じ状況の人がいるならばそう言う。
しかし、アールは逆にそれを推奨している。
人の違いを感じているところだった。

「しかし今のお前ではそこに突っ込んでも消えるだけ。
…私はお前を全力でサポートする。
救う……そんな約束をしてしまったからな。協力しよう。」

「アールさん…」

「私はお前を認めていない。
少なくとも、ラムを救えなければお前を認める気にもなれない。
私がお前に協力するのは、自分の意思だ。ラムの為だけではない。」

「意思…」

ルネアが呟くと、アールは言った。

「お前はラムを救いたいだろう?私だって同じだ。
お前は何のためにこの時代に来た?
…利害の一致は問わん、意見は一致しているはずだ。
今はやるべき時。」

その言葉にルネアは驚いた。
現状に巻き込まれる前、ふとお互いの一致を見つけたルネア。
アールも同じ考えだったという訳だ。

自分の意思と言う言葉が心に響く。
何だろうか、アールは自分の意思をこうも堂々と言ったのは初めてではないだろうか。

ルネアは少し黙ってから言う。

「ありがとう…ございます。」

アールは少し驚いたような表情をしていた。
自分は感謝されるような事は言った覚えはない。
それでもルネアは、アールの信頼を得られたのかなと思っていた。
更にルネアはある事に気づいて聞いた。

「でも、どうすればいいんですかね…」

「私の防御魔法で守りをかける、それだけ。
後は突き進むのみ。ラムを助けるんだ。」

ルネアはその意見に大きく頷いた。

「さすがアールさんです!やった!行けそう!」

喜んで言ったが、アールは正直不安だった。
先程大量の魔法を使い、今は殆ど回復していない可能性が。
全力で張っても、もしかすると間に合わないかもしれない。
しかし、今はそれしか方法がないのだと思う。
流石に長話をしすぎた。

アールは深呼吸をする。
そして、ルネアに防御魔法をかけた。

「行ってこいっ!私の魔法もいつまで保つかわからんぞ!」

アールは言い、ルネアをはやし立てる。
その覇気にいつも驚かされ、奮い立たされるルネア。

ルネアは大きな魔法の前に立つ。
光が強すぎて前が見えない。
覚悟を決めて、中に入った。

「行ってきます…」

そう呟くと、ルネアは心臓が不自然に脈打つ中、歩いて入った。
アールはそれを見ていたが、すぐにその防御が壊れそうになり立て直そうとする。

ルネアは中に入ると、思ったより不安定な防御に息を呑む。

(やっぱりアールさんも限界なんだ…相手はラムだもん。)

と思いつつ、進んでいく。
今地面を歩いているのかもわからない。
ただ真っ白でどこまで続くかもわからないのだ。

暫く進んでいると、何か見えた。
よく見ると不思議な空間が広がっており、
その中心ではラムがあの日の封印のように、佇むように眠っているみたいだった。

「ラム……!」

とその空間に一歩踏み出したルネア。



一方、図書館の屋上。
グラン達は様子を見ていると、光が一気に強まって空に向かって放つように光り始める。
それに驚く一同。
何も知らないのだが、何か起ころうとしていると感じた。



アールにも急に負担がかかる。
それを持ちこたえるように魔法を送り続ける。
次第にアールに角が生え、鱗がかる体。
それでも気を緩めずに送り続ける。

ルネアはその中に入ると、更に力が強まった気がした。
これでは防御も保たないのではと不安になりつつも、ラムの傍に駆け寄った。

「ラム!」

ルネアは言ったが、返事はない。

「ラム!起きて!僕だよルネア!ルネア・プロノス!」

と言うがやはり聞こえていないのか、目が開かない。
しかし、その時ラムの手が少し動いた。
ルネアはその一瞬の動きも見逃さなかった。

「ラム!?起きてるの返事して!」

ラムは苦しそうな表情をしながらも呟く。

「ど………こ…?」

ラムの声を聞いて、ルネアは瞳を潤わせた。
自分を探してくれているのかもしれない。
でも、そう思うだけで嬉しくなった。

「ラム!」

ルネアはそう言ってラムに飛んで抱きしめた。
触れた瞬間に更に防御に負担がかかる。
お願い、もう少しもって。

「ラム…僕……ここにいるよ…?」

アールに更に大きな負担がかかる。
このままでは切れてしまう気がした。
しかし、約束をした。
自分で守れた訳ではないが、ラムを守る約束。
死力を尽くして救うという約束。

 約束。

これを絶対に破るまいと、魔法を送り続けた。
どんなに化けの皮が剥がれようとも。
鱗がかったアールの体には、人という形と、少しの人肌しか残っていない。
もっと力を込めようと思ったその時、自分でも理解不能なくらい一気に魔法が切れた。
自分を取り巻く力の光が一気に収まる。

切れたのだ。

ルネアの命を繋ぐたった一枚の防御が切れたのだった。


……終わった。


自分は何も守りきれてはいない。
魔法力は無いのに、歯を思い切り食いしばる力はある。
手もこんなに悔しそうに握れているではないか。

「…っ……っくそおぉおおぉーっ!!!」

アールの悔しそうな叫び声が響き渡る。
空に吸い込まれていくその声は、
ノノ達、まめきち達、ダニエル達にもグラン達にも
微かに聞こえるのだった。

「アール…さん……」
と呟くレイ。
グランも目を見開いて驚くばかりだ。

アールは光に手を伸ばして歩き始める。
トボトボ歩いて近づく。

「ラム……ルネア……ラム……ラム…。」

一人呟きながら歩いている。
誰一人守れない。
ラムはこれからこの世を消しにかかる。
そして一からやり直す。
自分は罪に苛まれながら消えていく。

その時だった。
光が大きな光を放ちはじめた。
アールはそれを見ていた。

すると、光は打ち砕けるように消えていったのだった。
沢山の細々とした光が上に消えていく。
その先にはルネアとラムが抱き合って喜んでいた。

「ありがとう…!助けに来てくれて…」

ラムが笑顔で言った。

「ううん!駄目かと思ったけれどその前に気づいてくれて良かった!
…ありがとう。ごめんね、ラム…」

ルネアは言っていた。
アールはポカンと二人を見ていた。

助かった。
二人共助かった。
だけではなくこの世も、サグズィも助かった。
良かった…。

 二人は幸せそうだった。



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