相剋のドゥエット

うてな

文字の大きさ
14 / 94
02 ヘグリスメオン教会

014 食いしん坊な悪魔、ケリス。

しおりを挟む
フューレンとキリエルは一度教会から家へ戻る。
キリエルは言った。

「多分、モルビスと牧師様が荷物を近くの街から運んでくるから、運ばれてきたらみんなで行こうねー!」

フューレンは眉を潜める。

「みんなで行くほど道中は危険なのか?」

キリエルは両手を頭の後ろに回し、地下室へ向かいつつも言った。

「さあ、僕は初めてだからわかんない!
牧師様とずっといるケリスならわかるんじゃないのー?」

「ケリス?」

フューレンはそう言うと、キリエルは地下へ入る。
フューレンも一緒に来ると、キリエルは笑顔で頷いた。

「そう!犬耳もっふもふの子だよ!」

それを聞いてフューレンはピンと来る。

「ああ、あの鼻のきく悪魔か。」

「そそ!」

二人は地下の廊下を歩いていると、スピムの声が聞こえてきた。

「コラー!私のおやつを返せーッ!」

フューレンはその声に気づき、キリエルはその声を聞くと苦笑。

「この声っていつも飯作ってくれてるスピムっていう悪魔だよな?」

「そ!またやらかしたんだな~。」

その言葉にフューレンは首を傾げると、奥の扉からケリスが出てくる。
パーカーを着た犬耳と尻尾を生やした悪魔。

ケリスは焦った様子でこちらに走ってくると、扉から更に怒りを浮かべたスピムが出てきた。
スピムはピンクの可愛らしい服を身に纏っており、髪が蛇である事以外はいかにも女の子らしい。

ケリスはキリエルを見つけると、すぐにキリエルの後ろに隠れる。
スピムはキリエルの前に来ると言った。

「ちょっと!ケリスを寄越しなさいよ!」

スピムの髪の蛇も、キリエルに威嚇する。
キリエルは困った顔をすると言った。

「ダメだよ、ケリスが可哀想。」

それを聞くと、スピムは怒りのあまりに歯を食い縛る。

「なっ…!コイツは私のおやつを食べたのよ!?
それも一度じゃなくていつもよ!どう思うフューレン!」

急にフューレンに投げられたので、フューレンは戸惑いつつも答えた。

「あ?まあ人のおやつを勝手に食べるのは良くない。
なんでケリスは食べたんだ?」

すると、怯えた様子のケリスはキリエルの背中から顔を出すと言う。

「お腹が空いていたからです…」

「コラーッ!」

スピムは大声で怒るので、ケリスは涙目になってキリエルに隠れた。
キリエルはケリスを庇ってあげていると、スピムは聞く。

「てか!なんでキリエルはこんな悪魔庇ってんのよッ!」

「なんだかなー…ケリスは信徒の中でも敵が多すぎて可哀想というか…
スピムに怒鳴られたり、フレノアやフェオドラに嫉妬されたり…なんで女から不評なの?」

キリエルが言うと、スピムは少し落ち着いたのか怒りではなく無愛想な顔になった。

「フレノアやフェオドラは、単に牧師様を独り占めしてる事に嫉妬してるだけでしょ。
私は牧師様への理解が深いから嫉妬なんてしないけど!
でもね…」

そう言うとスピムはケリスを睨むので、ケリスは毛が逆立つ。

「ケリス!お前は許さないッ!
コイツは私のおやつを何年も懲りずに食ってくんのよッ!この食いしん坊!」

「ごめんなさい…!」

フューレンは聞いていられなくなったのか言った。

「今日のところはよしたらどうだ。
スピムはおやつの管理を徹底するのと、ケリスは勝手に食わないようにするとかあるだろ。
…おやつってなら、また買えばいいし。」

「無理ッ!」

スピムがそう言うと、フューレンは眉を潜める。
スピムは続けた。

「だって…!だっておやつはあの高級食材の【十年カエルの干物】だったのよ~!」

カエルの干物。
それを聞いた途端、フューレンの表情は固まる。
キリエルは苦笑してしまった。

「え…カエル食べるのお前?てかケリスも?」

フューレンは聞くと、キリエルは苦笑したまま言う。

「スピムはメドゥーサってよく思われるけど、悪魔になる前から蛇人間らしいね。
ケリスは元から悪魔で、狼ってカエル食べるのかな?」

するとケリスは言った。

「いいえ、ケリスは狐です。」

「ややこしいな!」

フューレンは疲れた様子になって冷汗を流すと、キリエルはフューレンを心配する。

「体調悪い?大丈夫?」

フューレンは首を横に振った。

「いや、だって普段おやつにそういうの食ってる奴が作る料理食べてるって思うと…怪しく思わないか?」

「はぁ!?人間様の味覚くらいちゃんと熟知してるわよッ!」

スピムは敵意丸出しで言うと、フューレンは不安が取れないのか黙り込む。
キリエルは表情を崩さずに言った。

「フューレン、スピムを信じてくれると嬉しいよ。僕も正直考えたくないから。」

それを聞くと、スピムはキリエルにも怒る。

「それフォローになってないわよねッ!?」

「ああ…」

フューレンはキリエルに対して返事をするので、スピムはフューレンも睨みつけた。
ケリスは自分のお腹を見下ろすと呟く。

「お腹空いた…」

それを聞いたキリエルは驚いた。

「え!?まだ食べるの!?
少なくともさっき牧師様から魔力補給してたんじゃないの!?」

ケリスはピクっと肩を驚かせて、細々と言う。

「その前に色々お話があって…しかし荷物運びの時間がやってきたので…」

「あー。なんか今日は牧師様の顔色が好調だと思ってたよ。
そういうことね。」

キリエルがそう言うと、ケリスは黙って頷いた。
フューレンはケリスに聞く。

「そんなんで、荷物運び中に襲撃を受けたら戦えるのか?」

そう言われると、ケリスは目を丸くする。
それからケリスは俯くと頷いた。

「はい。でも、相手のトドメを刺すのは別の人のお仕事なので…」

フューレンは首を傾げる。

「お前、悪魔なのに生物の殺生はしないのか?」

ケリスは頷くので、キリエルは言った。

「僕とケリスは生物の殺生を控えてるんだ。牧師様からの指示でね。」

「ワレリーは何を考えているんだ…?」

フューレンは呟くと、ケリスは頬をピンクにして言う。

「ぼ、牧師様はヘグリスの事を一番に思っている…ケリス達のパパみたいな存在です…!」

「娘を道具って言っちまう奴がか?
それにずっと気になってたんだけど、ヘグリスって何の事?」

ケリスはフューレンを見つめると言った。

「【羊】です。
牧師は羊飼いですから、牧師様についていくケリス達は羊なのです。」

「上下関係作があるところを見れば、牧師というより神父じゃないか…?」

フューレンはそう言うと、ケリスがジッとこちらを見つめている。

「どうした?」

するとケリスは視線を逸らして言った。

「えっと、天使の力が感じられるな…と。」

「お前わかるんだな」

ケリスは黙って頷くと、キリエルは笑う。

「ケリスはとっても強い悪魔なんだよ?天使も悪魔も見るだけでわかっちゃう。」

「へぇ、それは凄いな。」

ケリスは恥ずかしそうに頬をピンクにした。

「いえ、このくらいキリエルだって修行すれば…」

その言葉にキリエルは苦笑すると、ケリスは何かに気づいて耳をピコピコと動かす。

「牧師様とモルビスが帰ってきます。」

「お?早速外に行こう!」

キリエルはそう言って走り出すと、ケリスは続けた。

「一キロ以上先にいます。あと十五分ほどしたら帰ってくるかと。」

それを聞いてキリエルはその場でズッコケる。
フューレンは驚いたのか目を剥く。

「お前、相当鼻がきくんだな。」

「いえ、牧師様と契約した悪魔なので…ちょっと色々わかるだけです。」

ケリスは恥ずかしそうにして言うと、キリエルは立ち上がってから言った。

「いや、もうちょっと近くなってからそれを言って欲しかったよ…」

「ほんとな。」

フューレンはそう言うと、ケリスは二人を見る。
二人は至って普通にしていたのだが、ケリスはそれを重く受け止めて困った顔を浮かべていた。





しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...