相剋のドゥエット

うてな

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02 ヘグリスメオン教会

016 魔物の襲撃。

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「ヘグリスよ、向かい討ちなさい。」

ワレリーの指示でケリスが動き出すと、ケリスは背に大きな翼を生やす。
黒い毛でフカフカな翼。
ケリスは空に向かって飛び立ち、片手を挙げるとケリスの周囲に風が吹いた。

「【ロデンスイズ】」

ケリスはそう唱えると、魔物の集団の中で竜巻が起きる。
魔物達は竜巻に巻き込まれると、空に巻き上げられた。
更にこの道の砂はさらさらしており、砂埃が大量に巻き上げられる。
風の強さは尋常ではなく、その場で立っているフューレンさえ足が浮きそうになるほど。
足を取られるフューレンを、モルビスは腕を掴んで飛ばないようにしてくれる。

「ありがとうモルビス!」

フューレンはそう言うと、モルビスはフューレンを手繰り寄せながら言った。

「ああ。にしても、ケリスの竜巻は凄いな。ヘグリスの中で一番魔力を持っているだけある。」

キリエルは荷物を掴み、眼鏡を手で押さえながら悲鳴を上げている。

「わー!飛ばされるよぉー!」

「キリエル!」

フューレンはキリエルを呼ぶが、風の音で声がかき消されてしまっていた。
ワレリーも荷車に捕まっていたが、ワレリーの体も勿論宙に浮いている。
アシュターも流石に飛んでいられないのか、ケリスに掴まっていた。

ちなみにケリスは夢中になって巻き上げられる魔物達を見ていた。

(もう少しで全員巻き込める。もう少し強く…!)

ケリスはそう思いながらも竜巻を強くする。

すると、遂に荷車が浮きだした。
キリエルはそれに気づくと蒼白して涙目になる。

「え!?嘘ォ!?死にたくないよ僕ぅ!」

モルビスの体も浮くので、モルビスも荷車に捕まる。
ワレリーはケリスのいる上空を見上げた。

(ケリス、私達が飛ばされてしまいます。)

それが通じたのか、ケリスは気づいた様な顔をして力を一気に解く。
巻き上げられた魔物達はそこらに落とされ、強く体を打った為か弱っていた。
一匹の魔物が荷物の上に落ちてきて、モルビスは驚く。
巻き上げられた砂のせいで、荷物を覆うビニールシートも砂を大量に被っていた。
フューレン達は全員無事であったが、キリエルだけは荷物に顔面を打ってしまっている。

ヘトヘトになった相手の集団と味方。
ケリスは両方を見て顔を真っ青にする。

「ご…ごめんなさい…!ケリスのせいでみんなが…!」

「ほんとだよッ!」

と言ったのはアシュター。
アシュターはケリスから離れると溜息。

「フェオドラちゃんが目覚めたらどうするんだ!」

ワレリーは手に水筒を持ち、目覚めているフェオドラに水を与えていた。

「既に起きていますよ。」

それを聞いたアシュターは怒り顔。
フェオドラは水筒のコップを持って水を飲み干すと、ワレリーにコップを返す。

「おやすみぱーぱ。」

そう言って再びフェオドラは眠った。
なんという図太い神経だろう。
ワレリーはクスリと笑ってしまうと、フューレンの声が聞こえる。

「あ!メモとペンがない!?
さっきの竜巻で飛ばされたんだ!」

それを聞いたケリスは焦って言った。

「あ、えっと、…ケリスが責任持って探してきます…!」

ケリスはそう言って離脱するので、一同は呆然。
ワレリーは溜息をつくと、魔物の集団の方を見る。

モルビスが作った岩の前に出てきた魔物達は竜巻に巻き込まれて気絶していたが、岩の向こうにいた魔物達は多くが無事。
その魔物達が岩を超えてやってくると、ワレリーは言った。

「残りを片付けますよ。」

「はぁーい!」

キリエルはそう返事をすると、眼鏡をかけ直して魔物の方を見る。

「行くよ~!【スフィラディッフェル】!」

そう唱えると、キリエルの周りに水の塊が幾つか浮く。
キリエルは自分の手を銃の様に構えると、片目を閉じて狙いを定めた。
狙いを定め終えると、キリエルはペロリと舌を出して口角を上げる。

「ばぁん!」

すると、水の塊は砲弾の様に魔物達の方に向かう。
水の塊は地面に落ちると、ドンと大きな音を立てて魔物達を飛ばした。

魔物の大群にワレリーとフューレンとモルビスは突っ込んでいく。
モルビスは魔物を一匹殴り飛ばし、それに何人もの魔物が巻き込まれる。
魔物が槍でモルビスを刺そうとするが、モルビスはその槍の柄を掴んだ。
そしていとも容易く、親指で槍を負ってしまう。
魔物は顔を真っ青にすると、モルビスはその魔物の腕を掴んで振り回す。
モルビスは掴んだ魔物を武器にし、他の魔物をなぎ倒していった。

フューレンの所では、魔物が炎の魔法を放つ。
フューレンはそれに対抗して、水の術を放った。

「【ヴァッサー】!」

水は放たれ、魔物の炎が消える。
フューレンはふと周囲を見た。
いくら阻止しても阻止しても襲ってくる魔物達。

(一匹ずつ蹴散らしてたら拉致があかない!
本当に命を奪うしか方法がないのか…?
と言うか、召喚術で一掃したい…!)

ワレリーも魔物に囲まれていた。
槍を持った魔物がワレリーに突きをすると、ワレリーは体を反り返らせて避ける。
槍はワレリーの顔スレスレを通過し、そのまま真後ろにいた別の魔物に刃が刺さってしまった。
槍を持った魔物は呆然としてしまうと、ワレリーはニヤリと笑う。
ワレリーは手に持っていたダガーを口に挟むと、両手を地に着けて思い切り槍の柄を蹴り上げた。
槍は蹴り上げられたせいで、刺された魔物を縦に引き裂く。
次にワレリーはダガーを手に取ると、槍を持った魔物の目にダガーを投げた。
ダガーが目に刺さると魔物は悶え苦しむので、ワレリーは笑いながらダガーを目から抜いてあげる。

「そそりますね。」

ワレリーはそう言うと、槍を奪う。
槍を奪うと、ワレリーは近くにいたフューレンにパスした。
フューレンは血だらけの槍を貰うと眉を潜める。

「何のつもりだ?」

「おや、魔法と素手だけでは不便と思いましたので。」

「十分だろ!…いや、本当は召喚術を使いたいんだけど…」

フューレンはそう言うと、ワレリーは地面を見つめた。
サラサラの砂、棒などで陣を描けるような地面ではない。

「こんな砂では描く事は不可能ですね。」

それを聞くと、フューレンは閃いたのかワレリーに言う。

「お前が持ってる水筒を貸してくれ!」

ワレリーはそれを聞くと、ポカンと一瞬したがすぐに微笑んだ。

「いい案ですね。」

ワレリーは腰に付けていた水筒をフューレンにパスする。
フューレンはそれを受け取ると、コップを離して水筒の水を砂の上に垂らした。
砂は湿り、黒くなる。
フューレンはそれを利用して水で陣を描いた。

「行けるか…!?」

フューレンはそう呟くと、水で描いた陣は光り輝く。
ワレリーは感心した様子になると、フューレンは唱えた。

「いでよ!ゴーレム!」

陣からゴーレムが召喚されると、急に出てきたゴーレムにキリエルは驚く。
キリエルはフューレンの方を見ると、地面に水で描かれた陣を見て苦笑。

「すごく…奇抜で強引だ…!」

ワレリーは陣に背を向けてダガーを構えると、フューレンを見て言った。

「陣を守るの、手伝いますよ。」

フューレンはそれを聞いて頷く。

「ありがとう!さ、一掃するぜ!」



暫く経って、フューレンが召喚したゴーレムが大方の魔物を一掃。
ワレリーは笑顔で言う。

「掃除が楽でいいですね。ついでに殺さなくてもいいのですか?」

フューレンはそれに対し、無愛想に答えた。

「誰が殺すか!俺は真っ当な事をして金を稼ぐ。」

「これほどまでの事をされても、慈悲を与えるのですね。」

ワレリーはそう呟くと、周囲を見渡す。
魔物達は広範囲に渡って散らばって倒れており、賞金首を探すには少々面倒。

「ああ、こんなに散らかっていては賞金首を探している間に日が暮れてしまいます。
今回は諦めて、街に荷物を運ぶのを優先しますか。」

「確かに!」

キリエルが言うと、ワレリーは歩き出して近くの魔物の前に来る。
ワレリーは魔物を見下すと言った。

「今日の所は見逃してあげましょう。
次、また人々を襲うようであれば…あなた達を皆殺しにします。」

ワレリーはそう言って立ち去る。

「行きますよモルビス。」

「あ、はい!」

モルビスは慌てて荷車を押すと、フューレンは呆然とワレリーを見ていた。
キリエルは翼で飛んでフューレンの元にやってくると笑顔になる。

「牧師様はなんだかんだで、悪人にもチャンスを与えてくれるいい人なんだよね~!」

「ますますわからないヤツだな…」

フューレンはそう呟くと、陣を解いてゴーレムを返す。
そしてキリエルと共に、走って荷車を追いかけるのであった。





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