相剋のドゥエット

うてな

文字の大きさ
17 / 94
02 ヘグリスメオン教会

017 小さな家政婦、メドゥーサのスピム。

しおりを挟む
次の日。
ヘグリスメオン教会の家の地下、そこのキッチンには…
テーブルの上に美味しそうなお弁当が二つ、並んでいた。

そこに顔を出したのはなんとケリス。
ケリスはテーブルにひょっこり顔を出し、お弁当を見るとよだれを垂らして目を光らせた。

「美味しそう…!」

ケリスはそう呟いて手を伸ばすと、そこにスピムがやってくる。

「コラッ!泥棒狐!」

それにケリスはビクッと驚いてしまうと、涙目になって震えた。

「そんな顔したって駄目なんだから!あっち行きなさい!」

「はい…」

ケリスは残念そうに台所から立ち去ると、スピムはそれを見送ってから溜息をつく。

「アイツ、本当に油断ならないわね。」

スピムはそう呟きながら廊下に出ると、丁度キリエルを見かけるので言った。

「あ、キリエル。悪いけどキッチンのお弁当見張っててくれないかしら?」

「え?いいけど。」

キリエルはそう言って大きな欠伸をすると、スピムは続ける。

「ケリスが狙ってるみたいなのよ。私、洗濯干さないといけないからよろしくね。」

「おっけおっけ~」

キリエルはそう言って台所に入っていく。
スピムは小走りで洗面所に向かった。
洗面所にある洗濯機の前に行く。
スピムは身長が足りない為、台を使用して洗濯機を開いた。
しかし、洗濯機の中は空っぽ。

「あれ?さっきまで回してたはずなのに…」

スピムは洗濯カゴも無いのに気づき、眉を潜める。

「誰かが干した?
でも、今日はフレノアも牧師様も朝から慈善活動だし…」

スピムは急いで洗面所から出ると、外に向かった。
外に出ると、外ではフューレンが洗濯物を干していた。
スピムは目を丸くする。

「なんでアンタが!」

フューレンはスピムに気づくと言った。

「ん?洗濯機のアラームが丁度聞こえたからよ。
俺も世話になってばっかだし、出来ることくらいはな。」

「たまには使えるんじゃない。」

スピムはそう言うと、フューレンは洗濯物を干しつつ返す。

「お前、身長低くて大変そうだしな。」

それを聞くと、スピムは顔を真っ赤にして怒った。

「余計なお世話よッ!」

「はぁ?どっちだよ。」

フューレンは眉を潜めてそう言うと、スピムはムスっとしたまま「フン!」と顔を逸らす。

「そう言や、ワレリーが今朝からいないな。」

「牧師様は、今日はフレノアと一緒に慈善活動で近くの保育園に行ってるわ。」

「フレノア?」

フューレンは目を丸くすると、スピムは顔を引き攣った。

「アンタ、まだ信者の名前を全員把握してなかったの?」

「だってお前らずっと地下にいるじゃねぇかよ!」

「挨拶くらいするのは基本でしょうがッ!」

スピムは怒った様子で言うと、フューレンは眉を潜める。

「誰がいるとか聞かされてないのに挨拶なんて行けるか!」

「もう!」

スピムはそう言ってフューレンに背を向ける。
しかし、すぐにフューレンに振り返った。

「仕方ないわね。
後で牧師様とフレノアにお昼のお弁当届けに行くの私。
だからアンタも来なさい。絶対に!」

しかしフューレンは即答。

「無理、俺バイト探しに街に行くから。」

「…この世界にバイトなんてない!」

「はぁ!?マジで言ってんのか…!」

フューレンがそう言うと、スピムは教会に向かいながらも言った。

「わかったなら準備なさい。」

それを聞いたフューレンは難しい顔をしつつも、スピムについていく事にした。



フューレンはスピムと共に森を歩いていた。
そして背後には、ニッコニコのキリエルも。

「いいね遠足みたいで!」

キリエルが言うと、スピムはムスっとした顔で言う。

「アンタ達の分はないんだからね。」

「わかってるよ~」

キリエルはヘラヘラした顔で言っているので、スピムは気に入らないのか無愛想な顔。
フューレンはスピムが持つお弁当袋を見ると言う。

「カエルの干物とか入れてないよな?」

スピムはフューレンを睨みつけると、スピムの髪もフューレンを睨んだ。
キリエルは笑うと言う。

「大丈夫!僕さっき見たけどとっても美味しそうなお弁当だったよ~!」

「当たり前よッ!」

スピムが無愛想に言うと、フューレンはスピムの髪を見て言った。

「その蛇、一つ一つに命が宿ってんのか?」

するとスピムは怒り顔。

「もう!レディーに最初に聞く事がそれ!?
生きてないわよ!私の気分で動くだけ!」

フューレンはその剣幕に驚くと、キリエルは笑う。

「面白いなぁ。スピムに出会った人はみんな口を揃えてそれを聞くよ。
ちなみに僕も言った!」

「へー、だからこんな不機嫌なのか。」

スピムは早歩きし始めるので、二人はついていく。
キリエルは笑顔でフューレンに言った。

「スピムはね、牧師様に初めて会った時に『可愛らしいお洋服を着ていますね』って言われて一目惚れしちゃったらしいんだよ~
牧師様だけが唯一、スピムの髪について触れなかったんだってさ~」

キリエルはワレリーの物真似をしつつも言うと、スピムは顔を真っ赤にして言い放つ。

「ち、違うもん!
そ、そんな事言われなくたって!牧師様の素晴らしさに気づくわよ!」

「単純なんだな。」

フューレンがサラッと言うと、スピムは怒ったのか髪の毛の蛇が威嚇してきた。
キリエルは笑いながらも言う。

「スピムは牧師様の虜だよ。」

「ワレリーは口だけは上手いからな。」

「そうそう!」

キリエルが笑顔で言うと、スピムはキリエルに言い放った。

「その口に乗ったのはアンタもそうでしょ!」

「ヘイ。」

キリエルは笑っていた。
するとフューレンは聞く。

「つーか、なんでキリエルはついてきたんだ?」

「暇でしょー?」

単純な理由。
キリエルの言葉に、フューレンは軽く溜息をつくのであった。



森を抜けた所に保育園らしき建物を発見。
フューレンとキリエルは会話をしていた。

「この保育園もヘグリスメオン教会の様に森に囲まれてるんだな。」

「まあね。街中に置いてると、以前行ったアジトの人間みたいな奴等に襲われるからね。」

「森も森で危ない気がするんだけどな。」

「人手が足りなくて困る意味で危ないね。だから牧師様がよく手伝いに行くんだよ。
ここは信者であるフレノアが育った場所でもあるからね。」

「へぇ。」

そして三人は保育園を訪ねると、扉が開いてワレリーが顔を出した。
ちなみにフェオドラも顔を出してこっちを見ている。

「おはようございます皆さん、何かあったのですか?」

「ふゆーれん!」

フェオドラの一言にフューレンは鋭い視線をフェオドラに向けたが、スピムが答えた。

「えっと、牧師様とあの女の為にお弁当作ってきたの。」

それを聞くとワレリーは微笑み、優しく言う。

「わざわざありがとうございます、スピム。」

スピムは顔を真っ赤にする。
ワレリーは扉を全開にすると三人を招き入れた。

「どうぞ、お入りなさい。」

三人は素直に、保育園内に入ってくのであった。





しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...