相剋のドゥエット

うてな

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03 魔術科学園

030 モルビスのお願い。

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フューレン達は教頭のムニーバに連れられ、近くの椅子に座って話を聞いた。

「ではカオスリートの話をしよう。
試練の間に、共鳴を試す場があったろう。あれが最大のヒント。」

「共鳴が?」

フューレンが首を傾げると、次にムニーバを軽く睨む。

「情報はそれだけか?」

「そうだね。理事長から受けている伝言はそのくらいだ。」

それを聞くと、フューレンは席を立って立ち去る。
キリエルやアイナも慌てて席を立つと、フューレンは言った。

「呆れた。その程度の話の為に試練の間を通らせたとか。
やっぱり大魔導師は俺で遊んでんだな。」

「その遊びに乗っからないと、君が故郷に帰れないのも事実だ。」

ムニーバが言うと、フューレンはムニーバの方を見た。
それから舌打ちをすると、出口の扉を開く。

「大魔導師に似て、癪に障るセンコーだな。」

部屋を出るフューレン、キリエルとアイナは追いかけた。
アイナは相変わらずフューレンに痺れていた。

「カッコイイわ、フューレン!」

「ちょっとちょっとフューレン!もう帰っちゃうの!?」

キリエルはそう言うが、フューレンは気にせず。

「時間の無駄だ。さっさと行くぞ。」

キリエルはそんなフューレンに困りつつも、ムニーバ達に愛想笑いをして部屋を出て行く。
当のムニーバは気に留めず、三人が立ち去るのを黙って見ているのであった。



フューレンとキリエルは学園の外にいた。
授業を終え、アイナと別れるところであった。

「じゃあねフューレン!キュース!」

アイナは元気よく手を振るので、キリエルも同じく返す。

「じゃーね~!」

フューレンは手を振ることもなく言った。

「またな。」

アイナはそれを聞くと、一回跳ねてから走り去るのだった。
フューレンは疲れたように溜息。
キリエルは苦笑して言った。

「今日は大変だったね。」

「ああ。アイナの奴、無駄にお喋りが好きだな。授業中何も集中できなかった。」

「一番前に座ってた僕にも辛うじて聞こえたよ!お父さんも微妙な反応してたから気づいてたんじゃないかな!」

「叱ってくれ…」

フューレンは呆れた様子で言うと、キリエルは笑う。

「意外とそういうところがあるんだって!お茶目でしょ!」

「お茶目か?それ。」

フューレンはそう言ってから、再び溜息をついた。

「にしても、カオスリートの情報が本当にないな。共鳴だけの情報で、カオスリートにたどり着けるとは思えないな。」

キリエルは難しい顔をする。

「天使の力を持つ悪魔だなんて、そんな大それた生き物存在する方が不思議だよね。」

「でもヴァレリカはその大それた例じゃないか?アイツは悪魔の力を持った天使らしいけどな。」

「ヴァレリカはイレギュラーだね。大それた存在だから、みんなヴァレリカに勝てない。」

「確かにな。アイツ、この世界で最も賞金をかけられてる奴だもんな。」

「うんうん。」

キリエルは何度も頷くと、フューレンは俯く。
深く考え込んだ様子、次はどう探るべきか考えているのだろう。
しかしそんな事も気にせず、キリエルはフューレンに言った。

「ねぇ!お家かーえろ!」

「…おう。あんま遅くなるとうちの腹黒牧師がなんて言うかわからないからな。」

フューレンが返事をすると、キリエルは気分が良さそうだ。

「そうそーう!」

キリエルは笑っていた。
フューレンはカオスリートの情報が掴めず頭を悩ませているのに、キリエルは機嫌がいい。

「何かいい事でもあったのか?」

フューレンの問いに、キリエルは照れ臭そうに答えた。

「なんか一緒に同じ家に帰るって、兄弟みたいじゃない?とってもウキウキしちゃうよ!」

「友達なんだか家族なんだかどっちだよ。」

その言葉にキリエルは苦笑。

「勿論友達!でも今は、家族みたいな雰囲気を味わってもいい感じ!」

「なんだよそれ、変だな。」

二人は他愛もない会話をしながらも、ヘグリスメオン教会に帰っていった。



教会に帰ると、ワレリーが教会内の掃除をしている。

「牧師様ただいまー!」

キリエルの元気な声を聞いて、ワレリーは顔を上げた。
二人を見ると、ワレリーはいつもの様に微笑む。

「お帰りなさい。フューレン、初の学園はどうでしたか?」

「ただいま。色々言われた、召喚術の事。」

それを聞いたワレリーは不思議そうな顔をした。

「おや、召喚術を使いこなすフューレンに口答えする教師がいたのですね。」

キリエルは微妙な反応を見せて言う。

「牧師様ぁ。それ、僕のお父さんが召喚術の先生だってわかって言ってるでしょ~」

「ふふ、そうですよ。」

ワレリーの言葉に、キリエルは頬を膨らませていた。
フューレンはふと授業での事を思い出す。

「俺の精霊…か。」

「手合わせくらいはお手伝いできるのですが、召喚術では問題外ですね。」

ワレリーがそう言うと、ふとフューレンは気になる事を思い出した。

「ワレリーって人間にしちゃ身体能力が高いよな。先日の戦いを見て思った事だが。」

「そうだよね!牧師様って凄い!魔法は使えないけど、魔法使いを圧倒するほど強いんだよ!」

キリエルは笑顔で言うと、フューレンは頷く。
ワレリーはニコニコとしたまま答える事もなく、掃除を終えて教会奥の扉へ向かっていった。
フューレンはそんなワレリーの背中を見つめている。

「本当にミステリアスな男だな。」

その言葉に、キリエルも同感の眼差しでワレリーの背中を見ていた。

「そうだね。過去も出生も何もかも喋ってくんない。わからない人だよ。」

「キリエルは単純でわかりやすいのにな。」

フューレンの一言で、キリエルは再びムスっと頬を膨らませた。

「なぁにそれちょっと傷つくー」

そんな二人の元に、こっそりとモルビスがやってきた。
モルビスはなぜか周囲の様子を確認し、ひっそりと二人の元にやってくる。

「あ!モルビス!どーしたの?」

モルビスは焦りながらもキリエルに言った。

「しーっ!静かに!」

「なんで?」

「どうしたんだ?ひっそりしてよ。」

フューレンの問いに、モルビスは渋々小声で二人に話す。

「俺、ここに住む前はギルドに所属していたって知ってるよな?」

「うん。」

フューレンが返事をすると、モルビスは続けた。

「この教会に来てからは全くみんなに会ってなくてよ…。」

「会いたいんだ!ギルドのみんなに!」

キリエルが笑顔で言うと、モルビスはキリエルの口を押さえる。
モルビスの手は大きく、キリエルの鼻まで覆っていた。

「静かにしろって!牧師様には会う事を禁じられてる!それでも俺は行きたいって思ってんだ…!」

キリエルはモルビスの手から逃れると、安堵の溜息。
フューレンは言う。

「ワレリーとの約束を破ってまで行きたいのか?」

その言葉にモルビスは頭を下げたが、それでも頷いた。

「ああ。ギルドの連中にはしっかり話をしておきたいんだ。」

「なるほどな。俺達に協力しろと?」

フューレンの言葉に素直に頷いたモルビス。
モルビスは前屈みになって言った。

「お前達最近、バイトを探しに行ったろ?
俺も二人と一緒に仕事を探しに行くって言って、ギルドをこっそり見に行きたいんだ!」

「僕は別にいいよー。フューレンは?」

「俺もいいけど。」

それを聞くと、モルビスは二人の手を握って目を輝かせる。

「ありがとう…!じゃあ明日、いいか?」

あまりの輝きに、フューレンは目を逸らすのに手一杯。
しかしキリエルは便乗したのか、同じように目を輝かせる。
二人のキラキラとした無垢の瞳が、フューレンを見つめた。

「鬱陶しい!」

フューレンは思わず言ってしまうが、それでも二人は暫くやめずにいた。





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