相剋のドゥエット

うてな

文字の大きさ
51 / 94
06 忍び寄る悪魔

051 精霊使いの道を行くなら。

しおりを挟む
フューレンとキリエルは、アイナに連れられて魔術科学園の庭に来ていた。
休みを謳歌する生徒達で庭はいっぱい。
思わずフューレンは言った。

「客が多いな。みんな勉強熱心って事か。」

その言葉に対し、キリエルは言う。

「違うよ。魔術科学園内では外と違って殺人や傷害は処罰される、ここだと襲われる心配もないから来るんだ。」

「今じゃ魔術科学園も、安全な遊び場になっちゃったもんね。昔と比べたら真面目な生徒は少ないわ。」

アイナの言葉に対し、キリエルは目を丸くした。

「昔と比べたらって…アイナはいくつ?」

アイナはその言葉にギクッとしてしまうと、愛想笑いをした。
それから二人から視線を逸らして言う。

「おじいちゃんから聞いたの!昔は真面目な人が多かったって!」

「へ~」

フューレンは意味深な反応を見せると、ついついアイナはフューレンを見てしまう。
フューレンは少々怪しい人を見るかのようにこちらを見つめている。
アイナは焦り、次はキリエルの様子を見た。
対しキリエルは、アイナの言葉を信じきって目がキラキラしていた。

「すげぇ…!時代を感じるよね!僕そういうの鳥肌立つ~!」

思わずアイナは呆れてしまい、深い溜息をついた。

(あのキュースが鋭いわけないわよね…)

キリエルはウキウキしている様子で、フューレンも思わず軽く溜息をついた。
それからフューレンは本題に入る。

「で、共鳴の事なんだが…」

「召喚術は共鳴を齧ってる。ただそれは、完璧な精霊使いとなった召喚術師だけの特徴よ。」

「完璧な召喚術師…?」

フューレンが言うと、アイナは続けた。

「精霊の力を完全に引き出すのは、術師の力だけでは無理なのよ。
精霊にも心がある。精霊の心を解く事が、何より力を引き出すきっかけになるわ。」

フューレンが思わず難しい顔をすると、アイナは苦笑。
それからアイナは言った。

「フューレンは友情とか愛情とか、無縁そうだもんね!ホント、力はあるのに勿体無いわ~!」

「悪かったな。」

フューレンが言うと、キリエルはニコニコで言う。

「でもさ、フューレンの精霊であるセイレーンはとってもフューレンに懐いているよ?」

アイナは興味深く思ったのか、フューレンに言った。

「出してもらえる?」

「おう。」

フューレンは腰のポケットに入れていたメモ帳とペンを取ると、陣を描いた。

「いでよセイレーン!」

陣は光り輝き、セイレーンが姿を表す。
セイレーンは呼ばれると同時に、穏やかな笑みを向けてくれた。
アイナはセイレーンを見ると、一度頷く。

「穏やかな性格ね、人懐っこいセイレーンだったのね。」

「見ただけでわかるのか?」

フューレンが言うと、アイナはセイレーンを見た。
セイレーンは早速、キリエルと遊び始めている。

「あれを見たらね…。それに、フューレンに懐く精霊だなんて心の広い子しか思いつかないし。」

「はぁ!?なんてった!」

フューレンは怒ると、アイナは笑った。
次にアイナはフューレンに言う。

「でもセイレーン以外で、フューレンの思う通りに力を発揮する子は少ないと思うけど。」

フューレンは図星なのか息を詰まらせると、アイナは笑顔。

「フューレンの性格なら、精霊使いになれるのも夢のまた夢かもね。」

「うるさい!」

フューレンは考え込んでしまうと、アイナはフューレンを見た。
キリエルの笑い声が聞こえる中、アイナは頭を悩ませるフューレンを見つめていた。
アイナは溜息をつき、それからフューレンに言う。

「仕方ないわ。あなたが召喚する精霊は、どれも遠くに居る赤の他人。
そんなに精霊使いに一歩近づきたければ、身内を精霊として召喚する練習をしなさい。」

フューレンはアイナの方を見ると、続いてアイナは言った。

「精霊使いに近づく事…それこそが、共鳴を得る第一歩になる。
あなたの知りたい共鳴が、自分の力で知る事ができるかもよ。」

フューレンはその言葉に眉を潜めると、やがて決心したのか言う。

「そうだな、やるしかないな。」

アイナはフューレンのやる気を感じると笑顔。
アイナはキリエルを見てから言った。

「キュースは悪魔なんでしょ?あの子は人懐っこいし、あの子で試してみたらいいじゃない。」

「人懐っこかったらセイレーンと変わらないだろ」

フューレンの言葉にごもっともと思ってしまうアイナ。
アイナは笑みを見せると言う。

「他に知り合いの悪魔とかいる?」

「…心当たりはある。」

「あらそう。」

アイナはつまらなそうな顔をすると、フューレンはキリエルの方に来た。
キリエルはフューレンを見ると、フューレンは言った。

「一度教会に帰るぞ。」

「え!?もう!?もうちょっと遊んでこ!」

「じゃあお前だけでもそこで遊んでろ。」

「ヤだよ!」

キリエルは急いでフューレンに追いつこうとし、セイレーンもフューレンの後を追った。
フューレンはセイレーンを元の世界に返そうとするが、キリエルはフューレンの手に手を乗せて止める。
フューレンはキリエルを見ると、キリエルは言った。

「もうちょっと一緒にいようよ。精霊さんと仲良くなるんでしょ?」

フューレンは大人しくなり、少し考えてから言う。

「そうだな。」

「やりぃ!」

キリエルは喜び、セイレーンも喜んだ。
それに対し、フューレンは微妙な表情。

「キリエルに乗せられた感じがして嫌だな、やっぱり返しとくか?」

「えぇ!?」

キリエルは絶望し、セイレーンも同じ顔をする。
二人は似た者同士なのかと、フューレンは溜息をついた。
そこにアイナがやってくる。

「私も来ていい?」

「いいよ!」

キリエルが言うので、フューレンはアイナをじっと見る。
アイナは驚いて顔を真っ赤に。

「なっ、なに?」

あまりにもじっと見つめられるので、アイナは少々恍惚とした表情を見せた。

「まさかフューレン…」

フューレンはアイナから目を逸らすと、教会に向かって歩き出して言う。

「まあいいか。」

「はぁい!?」

アイナは軽く流された気がして、怒りが込み上げる。
フューレンは何も答えず帰るので、アイナは怒りに任せて早歩き。
キリエルは両手の人差し指と親指を使って四角を作ると、それを覗き始める。

「これは…!アイナはフューレンに恋をしている…!?」

セイレーンも真似をして覗いていた。
アイナは顔を赤くしてフューレンを見つめ、フューレンは気にせず帰路を歩くだけ。
思わずキリエルは笑顔。

「これは人肌脱がないといけませんな~!」





しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...