相剋のドゥエット

うてな

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06 忍び寄る悪魔

057 争いがなかったら。

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タイミの住む屋敷にて。
タイミは部屋にて、紅茶を嗜んでいた。
同じく部屋にはヴァレリカがおり、ヴァレリカは窓から外を覗くだけ。
タイミは言った。

「そう言えば、今日は新しいメンバーが加わるよ。」

「また悪魔ですか?」

ヴァレリカが聞くと、タイミは首を横に振る。

「人間さ。」

ヴァレリカはそれを聞くと、少し俯いて自身の拳を見つめた。
それから拳を力いっぱい握り、怒りの表情を見せる。

「人間…!」

ヴァレリカは先日キリエルに呆気なく凍らされた事、フロルに心臓を一刺しされた事を思い出して悔しがっていた。
タイミはそんなヴァレリカを見て溜息。

「君と違って随分と冷静なヤツだよ。」

その時、扉をノックする音が聞こえる。

「どうぞ。」

タイミが言うと、扉から一人の男性が入ってきた。
タイミは相手を見ると、ニヤリと笑う。

「ああ、ヴァレリカ来たよ。この子が新人だ。」

ヴァレリカは相手を見ると、目を剥いて驚いた。

額に赤いハチマキ、スナイパーライフルを持ち歩く傭兵姿の男。
その男は間違いなくフロルなのだ。

「コイツッ!」

ヴァレリカはフロルを真っ先に襲おうとすると、タイミは止める。

「待て。」

ヴァレリカは止まると、タイミは続けた。

「初めましてフロル君。僕は雇用主のタイミ、そして彼女は私と契約しているヴァレリカだ。」

フロルはヴァレリカを見て目を丸くしていた。

「へぇ、ここに仕えていたんだな。」

「黙れ!」

ヴァレリカは敵意むき出しだ。
それに対しフロルは笑い、ヴァレリカは癪に障るのか眉をピクリと動かす。
フロルは言った。

「仕事仲間になったんだ。殺し合いはできないけど、手合わせくらいならいくらでも付き合うよ。」

ヴァレリカは一歩前に出て呟く。

「私を馬鹿にしているのか。」

「いいや。」

フロルはそう言うと、続いてタイミに言った。

「それで、仕事って何をすればいいんですか?あんなに金を積んでくれたんだ、相当なお仕事なんでしょう?」

それに対しタイミはクスッと笑うと、首を横に振る。

「指定した賞金首を狩るだけでいい。
…いずれ、本当の宿敵と戦わせてやるさ。」

そう言ってタイミは、フロルに一冊のファイルを投げた。
フロルはそれを手に取り、中身を確認。
どうやら狩って欲しい賞金首がリストアップされているようだ。

するとフロルはニコリ。

「ほう、楽しみにしています。」

立ち去ろうとするフロルに、ヴァレリカは敵意を緩める事はない。
フロルはヴァレリカに言った。

「君は太刀筋や動きはとってもいいけど、いつも焦ってるの勿体無いよ。」

そう言ってフロルは立ち去るので、ヴァレリカは歯を食い縛る。
タイミはそれを聞いて笑った。

「確かにヴァレリカは獲物に挑発されると取り乱すからなぁ。」

ヴァレリカはタイミにそう言われ、少し恥ずかしいのか俯いた。
それから言う。

「つ、次からは気をつけます。」

「頑張って。」





フューレンは本日、バイトの日。
飲食店で、バイトをしている時だった。

店に見慣れた四人姉妹が現れた。
緑の傭兵服を身に纏った姉妹。
そう、ヤーナ、キーラ、オリガ、アンゲリーナだった。

フューレンは目を丸くすると、ヤーナはフューレンを見つけて笑顔。

「フューレン!」

「おう、まさかお前達姉妹が来るとはな。」

(片方は初めましてだけど。)

と、フューレンはキーラを見ながら思った。
キーラはあの時は捕まっていた為、フューレンは会っていないのだ。
オリガは無愛想に言う。

「何ジロジロ見てんのよ。」

「初めて会うから誰かと思ったんだよ。」

するとキーラはフューレンの前に来て、お辞儀をした。

「初めまして。この子達の姉の、キーラです。」

「初めまして、フューレンだ。それで、四人ともご注文は?」

フューレンが聞くと、アンゲリーナは言った。

「確かに食事にも来たけど、今日はそれだけじゃないのよ?」

「どういうことだ?」

アンゲリーナは続ける。

「最近、賞金首制度の廃止を求める勢力の力が強まりつつあるの。
私達はその促進派だから、演説に来たの。」

それを聞いたフューレンは、ふとそういう話をアイナ辺りから小耳にはさんだ事を思い出す。
フューレンは納得した。

「そうだな。その制度が廃止され、普通の職が増えるといいな。」

フューレンは深く頷くので、オリガ以外の姉妹が笑う。
キーラは言った。

「フューレンさんが賛同派で嬉しいわ。」

そう言われると、フューレンはふと思う。

「傭兵一家なのに、廃止派なんて意外だな。」

「ええ。確かに私達にとってはそっちの方がやりやすいのだけど…
世の中の流れに身を合わせるのも大事な一環です。置いてけぼりにされたら、私達が職を失いかねません。」

「それは廃止派が勝ったらの話だ。」

「いいえ、廃止派の勢力が強まっています。廃止されてしまうのも時間の問題です。」

キーラに言われ、フューレンは目を丸くする。

「どこからそんな情報仕入れたんだ?新聞とかに載ってたっけ?」

すると、オリガは背負っていたバッグから一つの新聞を取り出す。
それを無造作にフューレンに押し付けると言った。

「最近廃止派が作った新聞記事が流行りだしてるの。ここはまだみたいだったから、私達が宣伝に来たのよ。」

「そんなに勢力が強まっていたのか…」

「当たり前よ。この制度のせいで、世界中の人々が大切な人を失い、奪われているんだもの。」

オリガが言うと、フューレンは心の中で思う。

(人を無慈悲に殺す兄がいる姉妹とは思えない言葉だな。)

「でも反対派はどうなんだ?絶対にいるだろ。」

「いるわ。勿論廃止派は弱い人々の集まりだから、強い反対派に押し切られる事も多いの。
でも、廃止派が消えたり減る事はないわ。ある種、革命だと思うの。」

すると、アンゲリーナは言った。

「争いのない世界、見てみたいわ。」

「自分の星でも、争いばかり絶えなかったのか?」

それに対し、アンゲリーナは首を横に振る。

「私は小さい頃にこの世界に来たから、争いのない世界がわからないの。」

「なるほど。」

次にオリガはアンゲリーナの服を引っ張って言った。

「もう、早く演説始めないと次の場所に遅れるわよ!」

「うん。」

そして四人は演説の為に、店の一番広い場所を借りて話を始める。
フューレンは仕事を続けながらも、四人の演説を聞いていた。

穏やかに話すキーラ、ハキハキと話すオリガ、楽しそうに話すアンゲリーナ、ぎこちなく話すヤーナ。
この四姉妹に、以前争いの場にいた雰囲気はなかった。
だからなのか、ただただ穏やかな時間が過ぎるのをフューレンは身に染みて感じていた。





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