相剋のドゥエット

うてな

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06 忍び寄る悪魔

065 キリエルを救うには。

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屋敷の庭。
ワレリーが持つ魔導書は未だ暴走を続けており、ワレリーは赤い触手に首を掴まれながらも苦しんでいた。
そしてフロルはワレリーを救う為に奮闘を続ける。

「ワレリーお兄様!早くその書を手放してください!」

ワレリーはその声を聞くと、力いっぱいに触手を振り払って魔導書を手放した。
ふらつくワレリーを、フロルは支える。

手放された魔導書は暴走を続け、ワレリーを狙っている。
ワレリーは魔導書を見つめながら言った。

「悍ましい力です…。未だかつて、魔導書からこれほどまでに凶悪な魔力は感じた事がありません。」

「魔力がわかるのですか?ワレリー兄様。」

フロルの問いに、ワレリーは小さく頷く。

「悪魔の瘴気に当たり続けたせいですか。私が従える悪魔の魔力だけははっきり見分けがつきます。」

「なるほど。」

フロルが言うと、ワレリーは飛んでくる触手を避けた。
フロルも同じように避けると、ワレリーは言う。

「この魔力は、私が従える悪魔のものだけではありません。…別の力が混ざっています。」

「別の力…?」

「少なくとも、魔導書が原因ではないはずです。」

フロルはふと、タイミを思い出す。
フロルは一瞬だけ屋敷に振り返り、すぐに魔導書の方を見て思う。

(ワレリーお兄様が従えている悪魔以外の力…。あの子を手に入れる為に、あの人が何か仕掛けているのか…?)

その時、ワレリーは急に心臓を押さえてしゃがみこむ。

「ワレリーお兄様!」

フロルは触手を払いながらもワレリーに駆け寄ると、ワレリーは息を切らせていた。

「クッ…!魔導書伝いに…私の体に魔力が流れてきている…!」

「魔力が流れるとどうなるのですか?」

フロルの質問に、ワレリーは少し息を整えてから言う。

「その人間はやがて悪魔になるか…死にます。」

その言葉に、フロルは驚きつつも悔しい表情を浮かべた。

「だったらこの魔導書を破り捨ててしまえば…!」

「おやめなさい!」

ワレリーが凄い剣幕でフロルに言い放つので、フロルは一瞬固まった。
フロルはすぐに眉を潜め、ワレリーに言う。

「なぜですか…!あなたの命がかかっているんですよ!?」

「やめなさい…」

ワレリーは理由を答える事なく、ただそう言った。
そして、心臓の痛みを堪えて立ち上がる。

「私はまだ…抵抗できます。」

そんなワレリーを見て、フロルは呆れてしまう。

「呆れました。何がワレリーお兄様をそこまで突き動かすのでしょうか。」



屋敷内では。
ケリスとヴァレリカは交戦を始めていた。
フューレンはアイナを守る為にバリアを貼っている。
ケリスとヴァレリカの圧倒的な力の前に、フューレンはバリアを貼るのが精一杯だった。

「二人とも、本当に強いな…。だが…」

フューレンがそう呟いた時、ケリスはヴァレリカの力に押し飛ばされる。
フューレンは険しい表情を見せた。

「やっぱりケリスが押されている。俺も加勢しないと…」

そう呟くと、フューレンはアイナに言う。

「アイナは廊下の角で待ってろ!ヴァレリカは倒せなくとも、俺達で道を開く!」

フューレンはそう言ってバリアを貼ったまま、腰にあったメモ帳とペンを取り出した。
メモ帳に陣を描き、召喚術を使う。

「いでよ!ナイトゴースト!」

ナイトゴーストは出てくると、即座にケリスの援護に回った。
ケリスにトドメを刺そうとしているヴァレリカの背後に回り、剣を振り下ろす。
しかしそれはヴァレリカの槍で受け止められてしまう。
ヴァレリカはバリアの内側に居るままのフューレンに言った。

「どうした、お前もかかってきてもいいんだ。それとも、私に負けるのが怖い?」

それに対し、フューレンは眉を潜める。
するとアイナは言った。

「ダメよ!フューレン、絶対に行っちゃダメ!力を相殺されてしまうわ!」

「わかってるよ!」

フューレンはそう答えたが、違和感を感じる。
思わずフューレンはアイナの方を見た。

(あれ、俺がヴァレリカと戦ったらいけない理由、アイナにはわからないはずなのに。)

アイナも思わず言ってしまったが、ギョッとした顔をする。
それからアイナは思った。

(大変、ついフューレンが天使である事前提に口走っちゃったわ。)

ケリスは立ち上がり、再びヴァレリカと戦った。
フューレンはアイナの言動を然程気にせずに考える。

(そんな事より、このままじゃ勝機がないのが確か。
キリエルが今どうしているかもわからないし…非常にまずいな。)

アイナは思わず口走った事を恥ずかしく思っており、ついつい窓の外へ視線を向かわせた。
するとアイナは、魔導書に飲まれそうになっているワレリーを発見。
アイナは驚いた。

(あれは…!間違いない、あの赤い触手は主君殺しの魔術…!あの人が殺されかけてるわ!)

そう思うとアイナはふとキリエルの事を思い出す。

(タイミ…まさかキュースを媒介にして、あの人を殺そうって魂胆なの?
そうすれば、彼が結ぶ悪魔の契約は全て解除される。タイミが好きなミレサって女の契約まで。)

アイナはフューレンに言った。

「大変…!教会の牧師さんが主君殺しの魔術にかけられているわ…!このままじゃ死んじゃう!」

「主君殺し…?」

フューレンはアイナの方を見ると、アイナは続ける。

「この屋敷の主が言ってたわ。牧師さんと契約してるキュースを使って、主君殺しの魔術を使うって。
主君殺しの魔術は、悪魔使い最大の弱点と言われているの。
悪魔使いに使える悪魔を一人でもいいから自分の手中に収めて、その悪魔を媒介にして主君に強大な魔力を押し流すものなの。」

「そうするとどうなる…?生身の人間なら死ぬか?」

「ええ。それか、同じく悪魔になってしまうわ。
どちらにせよ、悪魔と悪魔使いの契約を断ち切るのに使われる強硬手段ね。」

「どすうれば中断できる?」

フューレンが聞くと、アイナは考える。
するとアイナは閃いた。

「召喚術よ!」

「え?」

「召喚術でキュースを召喚するのよ!」

「でも召喚術は、精神と力を具現化するだけのものでアイツ本人を連れてくる術じゃない!」

「それでもいいの!キュースに私が無事である事を知らせるのよ!
きっとキュースは、私が人質になっているから相手に従っているだけだと思うの。」

それを聞いたフューレンは落ち着いた様子で黙る。
フューレンは頷いた。

「わかった。やってみよう。」

「ありがとう!」

アイナは喜ぶと、次の瞬間顔を引き攣った。

(あれ、なんで私は喜んでるんだろう。
まさかキリエルの事心配してたとか…ないよね?)

フューレンはそんなアイナを見ておらず、ケリスに言う。

「ケリス!少しの間ここを頼んだ!」

ケリスはヴァレリカと交戦を続けながらも言った。

「わかり…ました…!」

ケリスは傷だらけではあったが、それでもヴァレリカに立ち向かう。
フューレンはそれを見ると眉を潜める。

(急がないとな。)

そしてフューレンはヴァレリカの視界の入らない場所へと移動。
共にアイナもついてきた。
フューレンは周囲に誰もいない事を確認すると、陣をメモ帳に描く。

「出てこいキリエル…!」

その瞬間に陣は光り始め、陣から伸びる光はキリエルの形を帯びるのであった。





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