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06 忍び寄る悪魔
066 半分悪魔で半分人間。
しおりを挟む陣から出てきた光は、やがてキリエルの形を描いてキリエルとなる。
精霊のキリエルは、目が覚めると周囲を見て驚いた。
「あれ!ここって屋敷の廊下だ!いつの間にここに来たっけ?」
フューレンとアイナは微妙な反応を見せつつも、キリエルに話しかける。
「キリエル。」
「ちょっと、こっち見て。」
キリエルは二人に気づくと、更に驚いた。
「なんで二人が屋敷に!?まさかケリスが言っちゃったの!?」
「うん。」
フューレンが素直に言うと、キリエルは絶望した顔。
そこに空かさずアイナは言った。
「助けに行っちゃダメな理由でもあるの?人質ならもう解放されてるけど。」
キリエルはアイナを見ると、またまた驚く。
それから瞳を光らせてアイナに近づいた。
「無事だったんだねアイナ!良かった~!」
それを見たアイナは思う。
(忙しい人ねキリエルは…)
続いてアイナは言った。
「それで、今あなた、術にかけられてるでしょ。」
「うん。」
「それを自分から断ち切って欲しいの。そのくらいできるでしょ。」
それを聞いたキリエルは目を丸くしたが考える。
(確かにアイナが助かった今、術にかけられてる必要ないよね!)
「うん!」
キリエルは陽気に返事をした。
そしてキリエルがいる部屋にて。
キリエルは術に抵抗しようと、魔力を解き放つ。
キリエルの圧倒的な魔力に術は破れ、それに気づいたタイミは言った。
「どうしたんだい?抵抗か?人質の話はしたよね?」
「もう助かったんでしょ…!僕は知ってるよ!」
それを聞いたタイミは目を細くし、溜息をついた。
「ふん、面白くないな。もう少しであの牧師を殺せたものを。」
「この…!」
キリエルはタイミを睨むと、タイミは近くにあったビンボトルを手に取る。
そしてその蓋を開け、キリエルに投げた。
キリエルは咄嗟に体を庇うと、瓶の中にあった液体がキリエルにかかる。
キリエルは液体に気づいて顔をしかめると、タイミは言った。
「続きだ。」
「え…?」
キリエルが目を丸くしたその瞬間、キリエルは体中に魔力が巡るのを感じる。
それも強い魔力が全身を高速で流れるのだ。
キリエルはそれに耐え切れないのか足を崩し、唸った。
タイミは微笑むと言う。
「どうだ?潜在魔力を全て引き出させ、人間をも魔族に変えてしまう恐ろしい薬だ。」
「嘘…!」
キリエルの犬歯は伸び、耳は尖っていく。
苦しみでキリエルは唸り、頭を抱えたまま地面に伏せるのであった。
フューレンの所では、精霊のキリエルの様子がおかしい事に気づく。
精霊のキリエルは苦しんだ末に消えてしまうのだ。
「キリエル!?」
フューレンが呼ぶと、アイナは冷や汗。
「きっと本物のキリエルに何かあったんだわ!」
「クッソ!こうしちゃいられない!」
フューレンはそう言って、ヴァレリカと交戦しているケリスの方へ向かった。
ヴァレリカはフューレンに気づいて槍を構えるが、ケリスに攻撃を許してしまう。
ヴァレリカは壁に飛ばされると、フューレンはその横を通過。
アイナはタイミングが遅いせいで、フューレンと共に行く事はできなかった。
屋敷の庭にて、魔導書が落ち着いたのを確認したワレリー。
しかし続くように、魔導書が強い反応を見せる。
ワレリーはそれを見ると目を見開いて驚き、すぐさま屋敷へ走った。
(キリエルが危ない…!)
ワレリーは屋敷に向かうが、それをフロルが止めた。
「通しなさい。」
ワレリーは冷たく言うが、フロルも真剣な眼差しで言った。
「できません。ワレリーお兄様、今からでも遅くありません。悪魔から離れましょう。」
「通しなさい…」
ワレリーは二度言う。
それでもフロルは動かないので、ワレリーはダガーを手に取る。
フロルは言った。
「ワレリーお兄様、もうフラフラじゃないですか。まともに戦えませんよ。」
ワレリーは無言で魔導書を開くと、魔導書は宙に浮いた。
そしてワレリーはダガーで腕を切ろうとするのだ。
フロルは咄嗟にワレリーの方へ駆け出し、それを止める。
ナイフでワレリーのダガーを弾き飛ばし、ワレリーはその衝撃で体勢を崩してしまう。
倒れそうになったワレリーをフロルは支え、そのまま気を失ってしまうワレリーを見てフロルは頭を抱えた。
「こんなに疲労して…。やはり悪魔と離してあげた方がいい。」
フロルはそう言ってワレリーの顔色を見ながらも、ふとワレリーの細身の体を見る。
それを見ると、フロルは困った顔。
(顔色は随分と悪くなりましたが、細さは昔と大差ないな。…これ以上細くなっても困るが。)
フューレンは屋敷を走り、騒がしい一室を見つけてその扉を開いた。
その先にはキリエルとタイミがおり、キリエルは悪魔の姿にされながらも呻き声を上げていた。
「これは…!」
フューレンは驚く間は一瞬で、タイミを睨んだ。
「お前…!」
タイミはつまらなそうな顔をした。
「もう来たのか。追いつかれたのなら仕方ない、退散するか。」
「待て!」
フューレンはそう言ったが、タイミは近くの窓を開いてそのまま落ちる。
フューレンは窓に駆け寄ってその先を見たが、そこにはタイミの姿はなかった。
悔しい顔を見せるフューレン。
フューレンは部屋に戻ってキリエルの様子を見る。
キリエルはこちらに気づいていない様子だ。
そこに、部屋にアイナとケリスが入ってきた。
ケリスはキリエルを見て目を剥く。
「これは…!魔族化の薬を浴びたのですね!」
ケリスはキリエルに駆け寄り、急いでキリエルの上着を脱がす。
そして上半身を裸にさせるので、アイナは首を傾げた。
「何をするの?」
「こういう薬は体の部位に浸透して、そこから体内の血に魔力を注ぐんです。
だからその部位を探して…」
キリエルの右腕に血が固まった様な色をした血管模様があった。
ケリスはそれを見るなり、その腕に噛み付いた。
噛み付かれた腕から、鮮血が滲み出る。
ケリスは何度も噛み続け、ある程度血が流れるようにした。
ケリスはその過程を終えると、口を服で拭った。
「死なない程度に血を流しましょう。そうしないと、薬が抜けません。」
「そうか。じゃあ俺は止血や包帯に使えそうな物を探してくる。」
フューレンはそう言ってその場を立ち去る。
ケリスは言った。
「ありがとうございます。」
アイナはキリエルの腕の模様を見ると、微妙な反応。
「気持ち悪い。人間から魔族になるのに、こんなヘンテコな模様が出てくるなんて嫌ね。」
「魔族の仲間入りをすれば、多少はマシになりますよ。」
「ふぅ~ん。」
アイナが適当に返事をすると、ケリスはアイナに言った。
「あなた、吸血鬼でしょう?」
そう言われたアイナはギョッとし、ケリスに視線を合わずに言う。
「な、なんの事?」
「今はフューレンがいません、素直に話していただけたら嬉しいです。
キリエルの血を今のまま流せば、間に合わずキリエルが直に生粋の魔族になってしまいます。
でも悪魔であるあなたが血を吸っていただければ、きっと間に合うはず…。だから今だけ…今だけ手を貸してください。」
アイナはそう言われ、ふとキリエルを見た。
キリエルはずっと唸り声を上げている。
アイナは呟く。
「今も…もう魔族みたいなもんじゃない。あの牧師に悪魔にされたんでしょ?」
「そうですが。彼等は半分悪魔で、半分人間です。完全な悪魔にするのは、牧師様も望んではいませんから。」
「そう、何を考えているかわからない牧師ね。」
それに対しケリスは黙ってしまうと、アイナはキリエルの方へ歩いた。
ケリスはアイナの方を見ると、アイナはキリエルに近づいて言う。
「ま、丁度彼を味見してみたいと思ってた所だし。いいわよ?」
ケリスはアイナの言葉に、目をウルウルとさせて喜んだ。
笑顔になるケリスを無視し、アイナはキリエルに向かって牙を向ける。
鋭い吸血鬼の歯が、キリエルの喉元に刺さった。
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