相剋のドゥエット

うてな

文字の大きさ
71 / 94
07 悪魔に産まれた事

071 教会のみんなに話すべきか。

しおりを挟む
大魔導師から知らされた真実に驚愕するフューレン。
フューレンは言った。

「カオスリートが、ヴァレリカを倒す為に必要な力だって…?
お前がカオスリートを探している理由…
まさかヴァレリカの存在を、自分を脅かす存在だからって消したいとかじゃねぇよな…?」

すると大魔導師は言った。

「まあ端的に言えばそうなるね。
でも、君も他人事じゃないだろうフューレン。」

フューレンはそれを聞いて考える。

(確かにヴァレリカが天界を滅ぼす気なら、全力で止めるしか他ねぇ。
俺の故郷であり、まだ母さんもいる天界を滅ぼさせる訳には…!)

すると大魔導師は続けた。

「今、この世界では革命が始まっているだろう?」

「あ?ああ、賞金首制度廃止運動の事か?」

「そうだよ。それと同時にね、今まで人々を惨殺してきた極悪人を処刑しようって要望も強まっていてね。」

フューレンは驚いた顔。

「は…!?それって…!俺もアウトだがワレリー達も相当…!」

「そうだね。まあ一人や二人くらいなら許されるみたいだよ。
問題なのは金の為に人々を惨殺するする人間や悪魔だからね。」

それでもフューレンの表情は優れない。

(つまりワレリーにスピムにモルビスにフレノアにフェオドラまで…キリエルとケリス以外は全員当てはまるんじゃないのか!?)

「でも人間だけじゃ圧倒的力不足、悪魔は裁ききれないだろう?
だから人間達はねぇ、ここに天使を連れてきて裁いて欲しいって僕にお願いしてきたんだよ。」

「天使?」

「うん。だから私はこれから天界に行ってね、話をつけに行きたい。」

「へぇ。」

「それでねー、天界は使いを送る前に視察の天使を送るんだって。
視察の天使が『OK』を出したら、天使は来てくれるらしいんだけど…フューレン?」

「は?まさか俺にやれって?
言っとくが、視察は視察の仕事をしてる天使に…」

フューレンはそこまで言ったが、大魔導師に言葉を阻まれてしまう。

「大丈夫だ、別に書類を書いて提出するわけじゃない。
ただフューレンが『OK』を僕に言えばいいだけさ。無駄な苦労はかけないよ。」

「そうか?じゃあいいけど。」

すると大魔導師は、フューレンに顔を近づけて言った。

「ありがとフューレン。OKって事で私は失礼するね。」

「お、おい!もう帰るのか!?」

フューレンが言うと、最後に大魔導師は言う。

「天使の裁きが終わったら、その時はフューレンも天界に帰れるよう手続きしておこう。」

それを聞いたフューレンは目を丸くした。
そして大魔導師が立ち去るので、声を掛けるまもなくフューレンは立ち尽くしていた。

(あの制度を廃止して…この世界が平和になったら…俺は帰れるって事か…
いやでも待て、天使の裁判が始まったとして、天使の力も悪魔の力も効かないヴァレリカはどう処罰するんだ?
多分捕まえる事も難しいんじゃないのか。)

フューレンは難しい表情をしながらも考えていた。
するとフューレンは、先程大魔導師が着席していた席の机に目が行った。
その机の上には、一枚の手紙が。
宛先を見ると、それはフューレンへの手紙だった。
しかも、故郷の母親からの。

(母さんからの…!?そう言や、手紙送ってから返事が来ないと思っていたんだ!
アイツが隠し持ってたのか…!)

フューレンは一度手紙を胸ポケットにしまい、仕事に集中する事にした。



そして仕事が終わったフューレン。
フューレンは帰り道を歩きながらも、母親の手紙を見ていた。
母親の手紙を見ると、フューレンは安堵の溜息。

(そっか…天界の奴等には知らせてくれたみたいだな…良かった…)

それからフューレンは険しい顔を見せた。

(大魔導師の話は、もう世間には知れ渡っているんだろうか。いや、知れ渡っていたら今頃大騒ぎか。
悪魔ばっかりいるこの世界に、天使が現れるとなればな…
これは教会の奴等に言うべきか…?いや、大騒ぎになるな、ほぼ全員処罰を喰らう事になるし…
当然の報いっちゃ当然の報いなんだが…)

フューレンはヘグリスメオン教会のみんなを思い出すと、眉を潜めた。

(なんだか煮え切らないな。)



フューレンは帰宅。
教会のみんなはいつも通り自分のやりたい事をやっている様子だった。
フューレンは表情は優れなくとも、ワレリーの部屋を訪ねる。

(ワレリーだけにも…伝えておくべきか…?)

扉にノックしようとするが、留まるフューレン。
フューレンは頭を抱えた。

(いやでも、ワレリーって意外と突飛な行動するから言ったら何するかわかんないんだよな…
呆気なく自棄になっちまうし、言わない方が…)

その時だ。
風呂場の方からケリスの悲鳴が聞こえた。

「ケリス!?」

フューレンは思わず走り、風呂場へ駆け込んだ。
扉を開くと、フューレンはその壮絶な現場に息を飲んだ。
風呂の床が血だらけなのだ。
それだけではない。

上半身裸のワレリーが、ケリスの上に覆い被さっている。
ちなみにケリスはちゃんと服を着ていた。
ケリスは顔を真っ赤にしながら目をぐるぐるに回していた。
そして肝心のワレリーはというと、気絶している様子だった。
フューレンは言う。

「そういう趣味だったのかワレリー…」

しかしケリスは言った。

「どういう趣味ですか!」

ケリスはワレリーを起き上がらせると、困った顔。
フューレンはふざけるのをやめて言う。

「で、一体どうしたんだ?ワレリーは入浴中…ってわけでもなさそうだが。」

すると、フューレンはワレリーの腕の傷に気づいた。
深い傷で、そこから血を流している。
床が血だらけだったのは、ワレリーの腕から流れているからだった。

「どうしたんだ!」

フューレンはすぐにタオルを持ってきて血を止めると、ケリスは小声で言う。

「魔力に侵された血を…抜いていたんです。」

「は?」

フューレンが言うと、ケリスは続ける。

「牧師様は、ケリス達悪魔と関わりを持っています。
人間は悪魔と多く関わりを持つと、悪魔の魔力に強く影響されるんです。
血が魔力に侵されれば、その人間も悪魔になってしまうんですよ。」

「なるほど、だから血を抜くのか…」

「はい。ケリスは魔力に侵された血をある程度抜く事ができるので、いつもこうして牧師様の血を抜いているんです。
だから…」

「だから?」

するとケリスは顔を真っ赤にして言った。

「牧師様とそういう関係ではありません…!」

それに対し、フューレンは呆れた顔。

「ケリスは男だろ。」

そう言われると、ケリスは目を丸くした。

「え、ケリスは女です。」

「女?」

フューレンは思わず目を剥くと、ケリスは頷く。
ケリスはワレリーの血が大体止まった事を知ると、ワレリーを背中で抱えた。

「たまに皆さん勘違いしますが、ケリスは女ですよ!」

「そっか、勘違いしててすまないな。」

「いえいえ、いつもの事なので。
さ、牧師様をお部屋に…」

ケリスは風呂場から出て、シャワーで床の血を洗い流した。
ワレリーの体もしっかり拭き、廊下に出ようとすると…

その外には、スピムとフレノアがいた。
二人とも真剣な眼差しで、ケリスを見ていた。

「ひっ…」

ケリスが怯えると、フレノアが言った。

「待ちなさいケリス。今の話は本当?牧師様がいつも血を抜いてらっしゃるって。」

「そんな事したら、牧師様の体に大きな負担がかかるじゃない!」

スピムにも言われ、ケリスは涙目になって震える。
ケリスはワレリーを抱える手を握り締めて言った。

「で、でも…これが牧師様の願いです…!」

「確かに魔族になりたくないのはわかるけれど…!それでもアタシ達に一言言ってくれればいいじゃない。
そしたらアタシ達だって牧師様の事…もっと気づかえたのに…」

フレノアが悲しそうに言うので、ケリスは反省した顔。

「ごめんなさい…、でも、牧師様の言いつけだったもので…」

ケリスの言葉に、スピムは怒りを表情を見せた。

「ケリスは『でも』って、いっつも『牧師様が言ったから』って!
いくら牧師様が主人だからといって、全部全部聞き従う事ないじゃない!牧師様のお体に関係ある事なら尚更よ!
もっと私達を頼ってくれてもいいじゃない…!」

その言葉に、ケリスは暗い表情を見せた。
するとケリスは俯き、呟いた。

「ご、ごめんなさい…」

ケリスは急いで、ワレリーを部屋まで運んだ。
その様子に、スピムやフレノアは眉を潜める。

「ケリスったら、なんであそこまで従順なのよ。」

スピムはそう小言を吐いた。





しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...