植物人間の子

うてな

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第4章 侵食―エローション―

124 非常に腹が立った

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ある日。
ミィシェルは家の中にて、窓から外を歩く植物人間を眺めていた。

「Michel、ショクブツニンゲン襲ワれるです」

それを聞いたミンスは微笑みながら言う。

「ではミィシェルさんもなってみますか?自我のある植物人間、ハジメ様とお揃いです。」

「ハジメ…自我ある植物人間?」

ミィシェルが首を傾げたので、ミンスは頷いた。

「ハジメ様が自我ある植物人間になったのも、私の力でなんですよ?ミィシェルもなりますか?」

「ウィ!Michelお揃いなるです!」

ミィシェルは喜んで跳ねた。
そこでクロマは何かを思い出して言った。

「ミンス、植物人間はやがて栄養となってしまうのだろう。お前の…そして私の。」

「あら、それがどうしたのですか?」

ミンスが言うので、クロマは眉を潜めた。
クロマは真摯な表情を浮かべる。

「ミィシェルが植物人間になれば、やがて我等の栄養となり消える。
…いや、そうするのだろう。」

ミンスは顔色を少し変えて、少し黙ると言った。

「どういう事ですか?」

「死霊召喚で世に現れたテオドールが言っていた。死霊召喚は死霊ではなく、栄養になった者達と。」

クロマの言葉に、ミンスは動揺した顔を一瞬見せた。

「テオドール…」

「ミンスに聞く。
お前は私の友人たちを…父を、私の栄養にするために殺した。
そして今、ミィシェルも同じようにする気ではあるまいな。」

クロマはミンスを睨みつけた。
ミィシェルが不穏な空気を感じていると、ミンスは急に黙り込んだ。

「クロマ…」

「なんだ。」

クロマが言うと、ミンスは悲しみを混じえた顔をクロマに見せた。

「なぜクロマはそんなにわたくしに冷たくするのです…!愛を語ったばかりではないですか…!」

クロマは冷静に言う。

「それとこれとは関係がないだろう。」

「関係あります…!」

クロマが眉を潜めると、ミンスは言う。

「わたくしは…!クロマだけを愛しているのに…クロマは他の生き物にばかり興味を示すのです…!
クロマはわたくしの事を好きなのに…それでも他の生き物ばかり…!わたくし…とっても苦しいのです…!」

「それはまた別だろう。」

クロマが言うと、ミンスは首を横に振った。

「わたくしはクロマしか愛せません!クロマも…わたくしの事だけを愛してください…!」

クロマは溜息をつくと、愚痴をこぼした。

「本当に面倒な奴だな。」

ミンスは次にミィシェルを睨みつける。
ミィシェルはドキッと何かが来るのを察すると、クロマはミンスの腕を強く掴んでしまう。

「いっ!」

ミンスが痛そうな顔をすると、ミィシェルはクロマがミンスを粗末に扱う姿に驚きを隠せないでいた。

「ミィシェルは家族。
…グレネも、野良もかつてそうだった。」

クロマはそう言ってミンスを離し、外に出て行ってしまう。

「貴様、喚けば何でも思い通りに行くと思うな。」

ミンスはその場で泣き崩れると、ミィシェルは小さな声で話しかけた。

「ミンス…?」

ミンスはミィシェルに顔を背け、しくしく泣いているとミィシェルは言った。

「クロマ兄様ハ、ミンス 愛してるです。」

「証拠にもなく何を…」

ミンスが震えた声で言うと、ミィシェルはしょんぼりしながら言った。

「クロマ兄様、ミンス を直接傷つけるなかった。」

「そんなの…わたくしが命を繋ぐだけの道具だからですよ…」

ミンスが言うので、ミィシェルは首を横に振った。

「ミンス!疑う!ダメです!
クロマ兄様ヲ疑う!ダメ!ソレ、ミンスノ悪い癖です!
…クロマ兄様モ、暴力、ダメ。」

ミンスは遠くを見つめながら呟く。

「なぜ…クロマはわたくしだけを愛さないのです…?」

すると、ミィシェルはミンスが見ている方向を見て言う。

「愛と友情、ベツです。」

それを聞くとミンスは伏せて、その場で泣き続けるのであった。



クロマは気分転換に外の様子を見て歩いていると、もみじ公園に着いた。
前までは人がよく集まっていた公園だが、今はほぼ無人。
すると公園の地面からムクムクとグレネが現れ、クロマに言った。

「おいおいおーい。ミンスと喧嘩か?
いつもの事だけど、今回はヤケに乱暴だったなお前。」

そして更に子犬姿になっている野良もクロマの肩に乗った。

「怖かった。心臓止まっちゃうかと思ったよ。」

クロマは険しい顔を見せると、グレネと野良を見た。

「お前達は、なぜ死んでしまったか覚えているか?」

二人は顔を見合わせると首を横に振った。

「俺、実は自分がいつ死んだとかわかんなくてよ…」

「僕も、気づいたらクロマに召喚されてた!」

クロマは暫く黙ると、虚しそうにふと呟く。

「お前達がミンスに殺されたかと思うと、非常に腹が立った。」

二人がその言葉に反応を示すと、クロマは俯いた。
ミンスの考えを理解できない苦しみとかつて友人を失った悲しみを感じていたが、その表情を必死に抑える。

「グレネが死んだ時も、野良が死んだ時も、ミンスは私の前では悲しい顔をした。
…しかし、全て偽りだったのだ。」

そう言って噴水広場まで歩いていく。
二人は困った様子でいたが、クロマについて行く。

「そう言えば、クロマが植物人間を嫌いになったのもそれが原因だもんなぁ。
ミンスが作ってるモンだと思うと複雑か…。」

しかしクロマは首を横に振った。

「お前たちの死因は植物人間ではなくミンスと知った。…もう、私が植物人間を恨む理由はない。」

クロマの様子を見つめるグレネと野良。
グレネはこの沈黙が耐えられなかったのか、思い付きで言う。

「公園と言えば!不死身のお兄さんだよな!」

グレネが笑顔を見せ、野良は首を傾げた。

「だれだれ~?」

クロマは周りを見回しながら言う。

「奴は力を奪う能力があるからな、出くわすと非常に厄介だ。」

「前もやられたもんな…」

グレネがしみじみと言う。
クロマはグレネを見つめており、次に野良を見る。
野良は首を傾げると、クロマは引き返した。

「引き返す。」

「なんで!?」

「貴様は奴に消されたいのか。」
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