植物人間の子

うてな

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第4章 侵食―エローション―

127 その気持ちが存在する理由

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誠治とサチは外に出て話をしていた。

「真渕さんいいのですか…?外に出ると真渕さんまで植物人間に…」

誠治はまだサチが植物人間である事を知らない様子だった。
サチは少し考えてから誠治に言う。

「いいんですよ。
あたし、実は植物人間の力を受けているんです。九重先輩と同じで。」

誠治は驚いた。

「え…!?」

ショックを隠せない顔を見せた。

「なぜショックするんですか?植物人間にならないですし、喜ぶと思ったんですが。」

サチが言うと、誠治は悲しい表情を見せて言う。

「確かに、ミンスの栄養になり消えないという点では本当に嬉しい…。
でも、真渕さんもそうなればきっと危険が及ぶ…!」

サチは誠治の真摯な顔を見ると、巨大植物でだいぶ塞がれた空を見上げた。

「先輩言ってましたよね、私の面接日に植物を見て『嫌な予感がする』って。
正直、あたしは信じてませんでした。だから今、凄く後悔しているんです。」

誠治は落ち込んだ様子で言う。

「…危険な思いをしているんだね…」

「違います。」

サチは言った。
誠治が顔を上げると、サチは言う。

「あたし、その日に既に植物人間の力も受けて、色々聞かされてたんです。植物人間の事。
クロマにも襲われて…あの日は散々でした。」

「え…」

誠治が信じられないような顔をすると、サチはしょんぼりして誠治に言った。

「だから先輩に危険がいづれ及ぶんじゃないかってわかってました。
守ろうって思ってましたけど、知らない間に先輩は力を受けていて、不死身になってるし…仕事が忙しい訳でもないのに守るどころか巻き込んでた。」

「そんな事…!この力も、私が望んだから得たものであって…!」

誠治は必死に否定するが、サチは言葉を阻んだ。

「先輩には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいなんです…!
こんなあたしに…きっと九重先輩を守りたいとか、憧れを抱く資格…ありませんから…!」

サチ悔しそうな顔をした。
誠治は心にすっかり穴が空いたような顔をしていた。
サチはそれに気づいて首を傾げた。

「九重…先輩?」

すると誠治は、口を手で覆って呟いた。

「まさか…魔法少女さん…」

「はい、あたしの事ですけど。」

それを聞くと誠治は思う事があるのか、両手で顔を隠してしまう。

誠治は思い出していた。
サチと数男が初めて会った時に話していた事を。


――「お前の心は徐々に欠け、大事な者を大事と思えなくなる。」――


サチが首を傾げると、誠治は手を離して笑顔を向けて言った。

「そう言ってくださるのは…今も私に、憧れを抱いてくださっている証拠ですよね…?思ってくれている…証拠…ですよね…?」

誠治の声が震えていく。
サチは顔を少し赤くして言う。

「…そ…そうですが…」

それと同時に、誠治はショックを受けた表情に。


――「お前じゃ無理だな。」――


という数男の言葉を思い出す。
すると、誠治は「ふっ」と笑ってしまうと笑顔を見せた。

「そうか。ただの憧れは大事な人の内には入らない…か。
…案外助かるかもしれない。」

それを聞いたサチは何の事だか首を傾げたが、思い出したのか呆然としてしまった。

「な…なぜそれを九重先輩が…!?
と言うよりなぜあたしの気持ち…!知ってたんですか…!?」

サチが質問をすると、誠治は無理に微笑んだ。

「だって…その話を聞いたから、真渕さんと五島さんが話しているところ。
それに、あんなにわかりやすく反応されたら満更でもないって思ってしまうだろう?」

するとサチは急に黙り込む。

「九重先輩は?」

そう聞かれると、誠治は空を見上げた。
続いてすんなりと言葉が出る。

「好きです。」

するとサチは頬を赤くするが、なぜかとても悲しい気分になってしまう。
ドキドキするのに違和感で、恋しいのにどこか恐ろしい。

誰かを想う、その心を徐々に失う。
両親を失った悲しみなど遠に消えたのに、大好きな先輩の思いは全く消えない。
これが、サチの心が誠治に向いていない強い証拠となっていた。

誠治を思う気持ちが偽りであると知ったサチは、限りなく絶望のドン底に落とされた気持ちになる。
サチの手は震える。

「私…先輩の事…!…先輩…ごめんなさい…」

サチが言うと、誠治は首を横に振った。
誠治は気丈に振舞っている。

「いいんだよ。これまで通りの関係が続くなら…私はそれで、満足です。」

サチは、誠治に対する思いが治まることはなかった。
それはサチが、誠治を一番に思っていない事を証明していた。

サチはショックでその場でしゃがみこみ、暫く虫の音ほどの嗚咽を上げた。

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