植物人間の子

うてな

文字の大きさ
217 / 222
第5章 大絶滅―グレートダイイング―

193 残る心

しおりを挟む
誠治は綺瑠をそっとしておき、書斎を調べた。
暫く調べていると…

「あ。」

誠治は秋田の日記に目がいった。
綺瑠はその声に気づいて、ハンカチで涙を拭ってから誠治の所へ来た。

「父さんは日記書いてるんだ。一緒に見よう?」

綺瑠は震えた声を抑えてそう言った。

「いえ、この日記、ひとページしかないんです。」

「え?」

綺瑠は驚き、日記を開くと本当にページが一つしかなかった。

『彼女は言った、私の名を。喜美子の様だった。きっと彼女の中に喜美子は隠されている。』

と書かれており、更に数行下にはメモの様に書き足されている。

『アジアの砂漠に石の巫女の国があった。
そうだ。あの日、喜美子と約束した。アジアの砂漠地帯を共に調べようと。
だから彼女はそこにいた。喜美子は私との約束を待っている、守らねば。』

更に最近書き足された様な文もあった。

『遂に彼女を手に入れた。彼女に力を戻せば、喜美子が元に戻る糸口を発見できるだろうか。』

『要らない力は取り除いた。でも喜美子が見当たらない、喜美子はどこにいる。
まさか、本当に彼女の心となってしまったのか。私は綺瑠の為に研究を急ぐ、喜美子を取り返す研究を。』

「お母さんは石の巫女の一部になっているんですか?」

誠治の質問に、綺瑠は難しい顔をした。

「僕は確信がないからあまり信じてないけど、父さんは言ってたよ。母さんは石の巫女に取り込まれたって。
しかも力としてじゃなく、自分の心として。」

誠治は驚くと、綺瑠は書斎を歩いた。

「にしても凄い研究量だ。
父さんは言っていたよ、百を調べあげても本当に役立つ情報はその中で数個しかないって。有力な情報は僕にくれたけど、ここのも十分役に立ちそうだね。」

「そうですね。特に今の情報は、役に立つかもしれません。」

「だよね、僕も思ったよ。」

そう言って綺瑠は、一冊の日記を手に取った。
その時だ。
上の階、秋田の家に誰かが入ってきた。

「ここに気配を感じたのですが…」

ミンスの声が聞こえたので、二人は驚く。
それだけではない。

「誰もいないぞ。」

「きっとどっか行ったです。も一回調べるです。」

クロマもミィシェルもいるのだ。

誠治達は何をしているのかと思っていると、綺瑠は急に何かを感じ取る。
引き寄せられるような、まるでミンスに呼ばれているような感覚がする。

「あら、下の階にいますね。」

ミンスが言った。

「下の階?行ってみるか。」

クロマ達はそう言って一度、秋田の家を後にした。

「どうしよう、何を探しているんだ彼等は。」

誠治が言うと、綺瑠は真面目な顔になる。

「誠治、お願いがある。」

「なんでしょう。」

「誠治は父さんの家のベランダに隠れて、彼等が去るまで待って欲しい。」

「奈江島さんは?」

「僕は彼等に会って、目的を聞く。
僕に何があってもいいように、誠治にはそこで全部聴いて欲しい。」

誠治は解せないのか眉を潜める。

「しかし、」

「いいから!来ちゃうよ!」

綺瑠はそう言って急かした。
誠治は仕方なく思い、ベランダに出て物陰に隠れる。

暫くして、再び秋田の家に入ってくるミンス達。
今度は下の階で物音が聞こえたので、クロマが急いで物音を辿る。

「この辺から聞こえたぞ。」

「下から聞こえるです!」

ミンスは周囲を見渡すが、そこでコタツが目に付いた。

「このコタツ、さっきはこの位置にありませんでしたよね?」

クロマは黙ってコタツを動かしてみると、下に続く階段を発見した。

「階段だ。行くぞ。」

クロマは階段を降りる。
そしてミンスとミィシェルと続いて下に向かうのである。
下の書斎を見ると、ミンスは眉を潜めた。

「こんなところが…。
実に危険です、ここの物は全て破棄しなければなりません。」

ミンスが言うと、クロマは机の下を見る。
するとそこには綺瑠がいて、クロマは綺瑠を引っ張り出した。

「貴様、そこで何をしている。」

綺瑠はミンス達が怖く感じているが、気丈に振舞う。

「両親の仇が、ここまで来て何の用かな?」

「貴方を探していたのですよ、奈江島綺瑠さん。
先日の工業地帯の爆発は貴方がやりましたよね?」

綺瑠は目を剥いて少し黙ると、次に笑顔を見せた。

「だったらなんだい?」

「今、わたくし達の一番の驚異は貴方です。貴方には消えてもらわないと、わたくし達、安心していられません。」

すると綺瑠は目を丸くして軽く首を傾げる。

「悲しいな、母さん。」

「は?」

クロマが声を低くする。
それはそうである、自分の母に「母さん」と発言する他人がいるのだから。
ミンスは急に無表情になる。

「あら、その手に乗ってくれると思いましたか?
貴方の母の意思はわたくしには通用いたしません、諦めなさい。」

ミンスが言うので、クロマは綺瑠の額に指を当てる。

「消えろ。」

綺瑠は息を呑む。
クロマがプラズマを当てようとした時、「クロマ。」とミンスは止めた。
クロマがミンスを見ると、ミンスは目を閉じる。

「一分さしあげます、出て行きなさい。ここの資料は全て焼き払います。」

それに対し、クロマは険しい顔になる。

「ミンス…!コイツは危険だ、滅した方がいい!」

「いえいえ、もう遅いですよ。既に『ジラーチ』の準備は出来ておりますし。
サウザも動けない事でしょうし、どう足掻いても無駄です。」

綺瑠は驚いたのか少し目を見開く。

「ジラーチ…?まさか隕石衝突…大絶滅(グレート・ダイイング)の事か!」

すると、ミンスは綺瑠を睨んだ。

「これ以上貴方とお話する気はありません。早く出て行きませんとクロマに殺されますよ?」

綺瑠はそれを聞くと微笑む。

「二度も血を吐きたくはないね。
じゃあお言葉に甘えて。また今度、母さん。」

綺瑠はそう言うと、さっさと家を出て行ってしまう。

「なぜ生かした。」

クロマはミンスに聞くと、ミンスは頭を軽く抱えた。

「ああ、わたくしが…あの人間如きに心を左右されるだなんて…」

ミンスは呟き、階段を登っていく。
ミンスは葛藤しつつ部屋に戻ると、更に部屋で秋田を思い出してしまう。

それから逃げるように、ミンスは急いで外へ向かう。
クロマは解せずに、ミンスについていくのであった。

「ミンス…」

ミィシェルは切ない顔を浮かべ、ぴょんぴょんと階段を登っていく。



外に出た綺瑠は、ベランダが見える場所まで移動した。
誠治がひょっこり顔を出しているのを見て、綺瑠は眉を困らせながらも微笑んだ。

その時だ。
秋田の家が突然爆発を起こし、炎を立てて燃え上がった。
爆発の衝撃で誠治は吹き飛ばされ、少し離れたところで顔面から落っこちる。

「誠治!」

綺瑠が近くまで来ると、誠治は自力で立ち上がって汚れた顔をハンカチで拭いた。

「いやぁ、死ぬかと思いました。」

誠治が笑顔を見せるので、綺瑠はつい安心してしまう。
勿論不死身の誠治は無傷。

「もう!ビックリさせてさ。」

「すいません…」

綺瑠は誠治を見ると、眉を困らせた。

「…誠治が無事で良かった。」

それに対し、誠治は即答。

「こちらのセリフです…!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

婚約破棄ですか?あなたは誰に向かって口をきいているのですか!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、マリアンヌ・バークレーは王宮の誕生日パーティーでいきなり婚約破棄を言い渡された。は!?婚約破棄ですか?あなたは誰ですの?誰にモノを言っているのですか?頭大丈夫ですか?

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!

貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。

処理中です...