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33 クロユリ:呪い
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ワレリーはパーヴェルの服を着て教会の裏の館に帰ってくると、廊下の壁で蹲るガリーナを発見。
ガリーナに駆け寄ると、ワレリーは優しく言った。
「どうかなさいましたか?」
ガリーナは顔を上げると、ワレリーを見つめる。
「ワレリーさん、悪魔を召喚する儀式…するの?」
ワレリーは部屋の方に一瞬だけ目を向けると、少し黙ってから言った。
「贄がいなければ出来ないでしょう。」
そう言ってワレリーは微笑むと、ガリーナは手に力を入れる。
「あの魔方陣、誰の血なの?」
「…私のですよ。」
ワレリーはそう言って右腕の袖を捲ると、ガリーナは近寄ってその腕を見た。
手首の下から肘辺りまで、縦に切られた痕がある。
ワレリーはガリーナに見せまいと庇ったが、ガリーナは見てしまい顔を引き攣った。
「ひぃ…!」
ワレリーは即座に袖を下ろすと、ガリーナは言う。
「なんで…そこまでして悪魔を…?」
ガリーナは悲しそうな表情を見せて言うので、ワレリーは少し躊躇った様子だが言った。
「私は…この村の在り方に疑問を抱いているのです。」
「疑問…?」
「ええ。
この村に、神がいない事はもうご存知でしょう?」
「ワレリーさんに言われたからね…」
ガリーナは苦笑すると、ワレリーは頷く。
「村の慣習で、誰に対しても心優しい村人達。
しかし…彼等は居もしない神に忠誠を誓わされ、掟によって個性を失うのです。
するとどうなると思いますか?
…彼等は、何においても神に望むようになるのです。
彼等の希望は、己ではなく神なのですよ。
彼等は何かを望む時、神にその善悪を問い質し、神の力に縋ります。
私は絶望しました…。
望みとは、自分で価値を見出すものです。他の誰かに侵害されるものではない。」
ガリーナはそれを聞いて眉を困らせると、ワレリーは続ける。
「私はこの疑問を抱く前、この村の掟は絶対的なものだと思っていました…。
しかし教会の事実を知った時、その考えは覆されました。
だから私は村の神として生きる事を決意し、村人を導いてきた…。
しかし私は…どう村を導けば村人を変えられるのか…わからないのです…。」
ワレリーは悔しそうな表情を浮かべて言うので、ガリーナは同情していた。
ワレリーは頭を抱えると、閉じていた目を開く。
「愚かな事に、私は神に縋りました。
神ならわかると思ったのです。
パーヴェルと入れ替わり、パーヴェルの仕事をしながら神を降臨させる方法を探しました。
四年間、多くの書物を読み漁り、多くを試し…
しかし、何をしても、神は一向に現れる事はありませんでした。
神なんていなかったのです。」
「四年も…」
ガリーナは呟くと、ワレリーは続けた。
「しかし、私は諦めきれませんでした。
神を呼び出す方法がなくなった時、
私は遂に手を出したのです、悪魔を召喚する儀式に。
例え悪魔でもいい、この村の未来を…私のすべき事を導いて欲しかったのです…!」
ワレリーは頭を抱えた手を握り、自分の髪をぐしゃりと掴む。
そこからは、ワレリーの葛藤が伺えた。
ガリーナは思わず自分の胸に手を当ててしまうと、ワレリーに優しく言う。
「凄い…ワレリーさん、苦しい思いをしながらも村の人の事、沢山考えてくれてたんだね。」
そう言ってガリーナは涙を流すと、更に言った。
「私がパーヴェルくんと結婚して…!幸せな日々を送っている間…ずっと…!
今だって…!」
ガリーナは自分の涙を拭うと、ワレリーは落ち着いた様子になる。
「いくら考えていても、実現できなければ意味がないのですよ。」
「そんな事ない…!ワレリーさんは立派だよ…!」
するとワレリーは首を横に振った。
「私はここの村人と変わらない…神に、悪魔に縋ろうとした。
何が立派なのでしょうか…」
ガリーナは真摯な表情を見せると、ワレリーに言い放つ。
「誰だって、気の迷いや間違いはあるよ!
私だって…そうだったもん…
ニコライと一緒に…死のうだなんて考えてた時期があったもの…」
ガリーナはそう言って俯くと、ワレリーはガリーナを見つめる。
ガリーナの悲しい表情を見ると、ワレリーは眉を潜め、それから微笑んだ。
「この話はまた機会がある時にしましょう。
さ、レギーナの元へ行きますよ。
家に行けば会えるでしょう。」
「え…うん。」
ガリーナは返事をすると、ワレリーはとある一室から頭を覆い隠せるほどの布を用意。
「髪を結びなさい、村の者に気づかれないようにしましょう。」
「ええ。」
ガリーナは、心配そうにワレリーを見つめていた。
==========
ガリーナは変装してワレリーと共に村を歩いていると、村人が一人話しかけてきた。
「パーヴェル、レギーナ見なかったか?」
「見るわけないでしょう。第一、自分は先程まで気を失っていたのです。」
「それもそうかー…そこのお嬢さんは?
見かけない顔だけど…」
村人がガリーナを見て言うと、ガリーナはビクッとする。
ワレリーは戸惑う様子もなく言った。
「気絶した際に助けていただいた通りすがりの旅人です。
本当は、近くにいた人に助けてもらいたかったんですけどね。」
ワレリーはそう言ってその村人に満面の笑みを見せると、その村人は図星なのか苦笑。
「な、なるほどな!俺ちょっと視界に入らなくてよ…!じゃあ俺はこれで!」
そう言って村人は立ち去ると、ワレリーは笑顔で手を振るのだった。
家の前に着くと、ガリーナはまず家の窓から中を覗いた。
「ガリーナ?」
ワレリーが聞くと、ガリーナは言う。
「二人とも何して過ごしてるかなーって思ったの。」
ワレリーも一緒に覗くと、リビングで二人は楽しそうに会話をしていた。
パーヴェルの笑顔と、レギーナの今までに見た事のない笑顔。
レギーナの笑顔を見ると、ガリーナは驚いた顔を見せる。
ワレリーは呟いた。
「いい笑顔ですねレギーナ。
私がパーヴェルとして一緒にいた時も、いつもあの笑顔を見せていました。」
ガリーナはそれを聞いて胸に手を当てると言った。
「レギーナ、本当に幸せそう…。
私、あんな笑顔見た事ない。」
「そうでしょうね。レギーナは、パーヴェルが生き甲斐みたいなものですから。」
ガリーナは俯いてしまうと、ワレリーに言う。
「私ね、レギーナに『お前は幸せだ』って言われるの。
レギーナは沢山不幸な目にあってるのに、なんだか悪いなって。」
「おや、あなたは幸せなのでしょうが、その分不幸な目にもあっています。」
しかしガリーナは首を横に振った。
「そんな事ない!…私がいっつも泣いて、みんなを不幸にしてる…。
別に、私は不幸な目にあってないよ…。」
「そうですか。
あなたは皆が不幸な目に遭って、嫌な思いをした事がないという事ですね。」
それを聞いたガリーナは慌てて言う。
「え?そんな…。嫌な思いしてなきゃ、前みたいに死にたいとか考えないよ。」
ワレリーは微笑むと、ガリーナに言った。
「では沢山不幸な思いをしていますね。
自分のせいでみんなを不幸にしてしまう、でも自分ではどうにもできない事、これほど苦しいものはあまりないでしょう。」
ガリーナは大人しくなって黙ると、ワレリーは優しく言う。
「あなたは自分の幸せの為に生きてもいいのですよ?
あなたは他人の不幸を、一緒に悲しむ事ができる心優しい人間なのですから。」
ワレリーにそう言われると、ガリーナは窓の先のレギーナを見つめる。
レギーナの近くでは、ニコライが床でゴロ寝。
朝早くから起きた為だろうか。
「ねえワレリーさん、帰ろう。」
ワレリーはそれを言う事を分かっていたのか、即答する。
「レギーナの思う壷ですよ。」
「…いいの。
私、レギーナの幸せを願ってるから…。」
「パーヴェルの気持ちはどうなるのですか?」
その言葉を聞くと、ガリーナは俯く。
それからガリーナは胸に両手を当ててしゃがみこむので、ワレリーは困った様子になって言った。
「わかりました。今日の所は一度引き返しましょう。
考える時間が必要でしょう。」
「うん…。」
そうしてワレリーはガリーナを立ち上がらせると、二人はトボトボと帰っていった。
ガリーナに駆け寄ると、ワレリーは優しく言った。
「どうかなさいましたか?」
ガリーナは顔を上げると、ワレリーを見つめる。
「ワレリーさん、悪魔を召喚する儀式…するの?」
ワレリーは部屋の方に一瞬だけ目を向けると、少し黙ってから言った。
「贄がいなければ出来ないでしょう。」
そう言ってワレリーは微笑むと、ガリーナは手に力を入れる。
「あの魔方陣、誰の血なの?」
「…私のですよ。」
ワレリーはそう言って右腕の袖を捲ると、ガリーナは近寄ってその腕を見た。
手首の下から肘辺りまで、縦に切られた痕がある。
ワレリーはガリーナに見せまいと庇ったが、ガリーナは見てしまい顔を引き攣った。
「ひぃ…!」
ワレリーは即座に袖を下ろすと、ガリーナは言う。
「なんで…そこまでして悪魔を…?」
ガリーナは悲しそうな表情を見せて言うので、ワレリーは少し躊躇った様子だが言った。
「私は…この村の在り方に疑問を抱いているのです。」
「疑問…?」
「ええ。
この村に、神がいない事はもうご存知でしょう?」
「ワレリーさんに言われたからね…」
ガリーナは苦笑すると、ワレリーは頷く。
「村の慣習で、誰に対しても心優しい村人達。
しかし…彼等は居もしない神に忠誠を誓わされ、掟によって個性を失うのです。
するとどうなると思いますか?
…彼等は、何においても神に望むようになるのです。
彼等の希望は、己ではなく神なのですよ。
彼等は何かを望む時、神にその善悪を問い質し、神の力に縋ります。
私は絶望しました…。
望みとは、自分で価値を見出すものです。他の誰かに侵害されるものではない。」
ガリーナはそれを聞いて眉を困らせると、ワレリーは続ける。
「私はこの疑問を抱く前、この村の掟は絶対的なものだと思っていました…。
しかし教会の事実を知った時、その考えは覆されました。
だから私は村の神として生きる事を決意し、村人を導いてきた…。
しかし私は…どう村を導けば村人を変えられるのか…わからないのです…。」
ワレリーは悔しそうな表情を浮かべて言うので、ガリーナは同情していた。
ワレリーは頭を抱えると、閉じていた目を開く。
「愚かな事に、私は神に縋りました。
神ならわかると思ったのです。
パーヴェルと入れ替わり、パーヴェルの仕事をしながら神を降臨させる方法を探しました。
四年間、多くの書物を読み漁り、多くを試し…
しかし、何をしても、神は一向に現れる事はありませんでした。
神なんていなかったのです。」
「四年も…」
ガリーナは呟くと、ワレリーは続けた。
「しかし、私は諦めきれませんでした。
神を呼び出す方法がなくなった時、
私は遂に手を出したのです、悪魔を召喚する儀式に。
例え悪魔でもいい、この村の未来を…私のすべき事を導いて欲しかったのです…!」
ワレリーは頭を抱えた手を握り、自分の髪をぐしゃりと掴む。
そこからは、ワレリーの葛藤が伺えた。
ガリーナは思わず自分の胸に手を当ててしまうと、ワレリーに優しく言う。
「凄い…ワレリーさん、苦しい思いをしながらも村の人の事、沢山考えてくれてたんだね。」
そう言ってガリーナは涙を流すと、更に言った。
「私がパーヴェルくんと結婚して…!幸せな日々を送っている間…ずっと…!
今だって…!」
ガリーナは自分の涙を拭うと、ワレリーは落ち着いた様子になる。
「いくら考えていても、実現できなければ意味がないのですよ。」
「そんな事ない…!ワレリーさんは立派だよ…!」
するとワレリーは首を横に振った。
「私はここの村人と変わらない…神に、悪魔に縋ろうとした。
何が立派なのでしょうか…」
ガリーナは真摯な表情を見せると、ワレリーに言い放つ。
「誰だって、気の迷いや間違いはあるよ!
私だって…そうだったもん…
ニコライと一緒に…死のうだなんて考えてた時期があったもの…」
ガリーナはそう言って俯くと、ワレリーはガリーナを見つめる。
ガリーナの悲しい表情を見ると、ワレリーは眉を潜め、それから微笑んだ。
「この話はまた機会がある時にしましょう。
さ、レギーナの元へ行きますよ。
家に行けば会えるでしょう。」
「え…うん。」
ガリーナは返事をすると、ワレリーはとある一室から頭を覆い隠せるほどの布を用意。
「髪を結びなさい、村の者に気づかれないようにしましょう。」
「ええ。」
ガリーナは、心配そうにワレリーを見つめていた。
==========
ガリーナは変装してワレリーと共に村を歩いていると、村人が一人話しかけてきた。
「パーヴェル、レギーナ見なかったか?」
「見るわけないでしょう。第一、自分は先程まで気を失っていたのです。」
「それもそうかー…そこのお嬢さんは?
見かけない顔だけど…」
村人がガリーナを見て言うと、ガリーナはビクッとする。
ワレリーは戸惑う様子もなく言った。
「気絶した際に助けていただいた通りすがりの旅人です。
本当は、近くにいた人に助けてもらいたかったんですけどね。」
ワレリーはそう言ってその村人に満面の笑みを見せると、その村人は図星なのか苦笑。
「な、なるほどな!俺ちょっと視界に入らなくてよ…!じゃあ俺はこれで!」
そう言って村人は立ち去ると、ワレリーは笑顔で手を振るのだった。
家の前に着くと、ガリーナはまず家の窓から中を覗いた。
「ガリーナ?」
ワレリーが聞くと、ガリーナは言う。
「二人とも何して過ごしてるかなーって思ったの。」
ワレリーも一緒に覗くと、リビングで二人は楽しそうに会話をしていた。
パーヴェルの笑顔と、レギーナの今までに見た事のない笑顔。
レギーナの笑顔を見ると、ガリーナは驚いた顔を見せる。
ワレリーは呟いた。
「いい笑顔ですねレギーナ。
私がパーヴェルとして一緒にいた時も、いつもあの笑顔を見せていました。」
ガリーナはそれを聞いて胸に手を当てると言った。
「レギーナ、本当に幸せそう…。
私、あんな笑顔見た事ない。」
「そうでしょうね。レギーナは、パーヴェルが生き甲斐みたいなものですから。」
ガリーナは俯いてしまうと、ワレリーに言う。
「私ね、レギーナに『お前は幸せだ』って言われるの。
レギーナは沢山不幸な目にあってるのに、なんだか悪いなって。」
「おや、あなたは幸せなのでしょうが、その分不幸な目にもあっています。」
しかしガリーナは首を横に振った。
「そんな事ない!…私がいっつも泣いて、みんなを不幸にしてる…。
別に、私は不幸な目にあってないよ…。」
「そうですか。
あなたは皆が不幸な目に遭って、嫌な思いをした事がないという事ですね。」
それを聞いたガリーナは慌てて言う。
「え?そんな…。嫌な思いしてなきゃ、前みたいに死にたいとか考えないよ。」
ワレリーは微笑むと、ガリーナに言った。
「では沢山不幸な思いをしていますね。
自分のせいでみんなを不幸にしてしまう、でも自分ではどうにもできない事、これほど苦しいものはあまりないでしょう。」
ガリーナは大人しくなって黙ると、ワレリーは優しく言う。
「あなたは自分の幸せの為に生きてもいいのですよ?
あなたは他人の不幸を、一緒に悲しむ事ができる心優しい人間なのですから。」
ワレリーにそう言われると、ガリーナは窓の先のレギーナを見つめる。
レギーナの近くでは、ニコライが床でゴロ寝。
朝早くから起きた為だろうか。
「ねえワレリーさん、帰ろう。」
ワレリーはそれを言う事を分かっていたのか、即答する。
「レギーナの思う壷ですよ。」
「…いいの。
私、レギーナの幸せを願ってるから…。」
「パーヴェルの気持ちはどうなるのですか?」
その言葉を聞くと、ガリーナは俯く。
それからガリーナは胸に両手を当ててしゃがみこむので、ワレリーは困った様子になって言った。
「わかりました。今日の所は一度引き返しましょう。
考える時間が必要でしょう。」
「うん…。」
そうしてワレリーはガリーナを立ち上がらせると、二人はトボトボと帰っていった。
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