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ライラック王国~ダウスト村編~

朝焼けとお姫様

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 ミナミは、いつも目を覚ますのは、誰かに起こされてだった。



「…う…ん」

 ミナミは肌寒さを感じ、目を開いた。

 寝ているのは地面だったが、掘り起こしたおかげか体は辛くない。



 ミナミの少し離れた位置に、シューラが目を閉じて寝ている。



 ふと見える空は、ミナミの見たことのない色をして居る。

 まだ、太陽が完全に出ていない空の色だ。



 起き上がり、より太陽が見える場所を探した。



 見晴らしのいい場所を見つけて、ミナミはそこに座った。

 もう地面に座ることに抵抗なんてなかった。



 寝床から数分歩いた場所にある高台のような岩場は、おそらくミナミたちが通った川が見下ろせ、さらにマルコムが言っていた別の分岐した川の一部であろう部分も見える。



 今いる場所は岩場だが、山は木が生い茂っている。

 彼の言った通り、木々の隙間から滝が見えているので、あのまま船で言ったら滝つぼにドボンと言うのは本当のようだ。



 それよりも、ミナミは光だけ覗いた太陽を見た。

 辺りはまだ少し暗いが、日が出て来て赤くなっている空は綺麗だ。

 山の隙間から漏れ出すように溢れる光に、ミナミは目を細めた。



 夕焼けに似ているが、違う空にミナミは少し心躍った。

 初めて見る景色…



「綺麗…」

 ミナミは景色に感動して、久しぶりに思えるほど落ち着いた気持ちでふわふわと魔力を漂わせた。



「朝焼けだよ…お姫様。」



「!?」

 ミナミは急に掛けられた声に驚き、飛び上がった。



「やけに早起きだね…」

 ミナミの後ろには、寝床にいなかったマルコムが立っていた。



「…お、おはよう…マルコムさん」



「おはよう。」



「あの…マルコムさんはどうして…」



「ここは見晴らしがいいからね…周りを警戒するにはもってこいの偵察地点なんだ。」

 マルコムはそう言うと、ミナミが確認した木々の隙間から見える滝を指さした。



「あの滝まで行ったら、一旦休むよ。ただ、今日は目的地があるからそこまでは歩いてもらうよ。」



「あ…はい…」

 ミナミは淡々と説明するマルコムの口調に、ただ戸惑いながらも頷くしかできなかった。



 今更彼を気まずいとか思うのは、どうかと思のもあるし、彼がまったく気にしていないから、気にする必要は無いのではないかとも思っている。



「…大丈夫?」



「え?」



 考え込んでいるミナミをマルコムはじっと見ていた。



 色合いは同じだが、造りの違う茶色の瞳…



 彼の目を見てフロレンスを、リランを思い出した。



 ミナミに優しさを向けてくれた彼が、あんなに怖い顔をするのは信じられなかった。

 マルコムに対して、シューラに対して…



 逃げているときは、彼のことを気にしていられなかったが、今はとても気になっている。

「…あの、フロレンスさんと…知り合いなんですか?」

 ミナミは恐る恐る訊いた。



「雇われ側だから敬語はいらないよ。俺も使っていないし…。」



「あ…はい」

 ミナミは



「それに見ていればわかるでしょ…知り合いだよ。」

 ミナミの問いをマルコムは鼻で笑った。



「…そうなんだ…」

 それ以上聞けない空気のあるマルコムに、ミナミは問い詰めることができなかった。



 マルコムもそれ以上話そうとしなかった。

 マルコムは、帝国の罪人であって、元々帝国の人間だ。



 それに、エミールとリランがマルコムの話をしているのを聞いた。

 ただの知り合いだけではないのはわかっている。





「…ここに来たのはどうして?」



「え?」

 また、考え込んでいるとマルコムがミナミを見つめていた。



 マルコムは徐々に顔を出す太陽の光を受けていた。



「…えっと…太陽が、見たかったから…見晴らしのいいところに…」



「…見晴らしのいいところ…ね。」

 マルコムは少しだけ悲しそうに笑った。



「?」



 マルコムは首を振って何かを振り払うようにした。

「いや…もうすぐシューラも起きるだろうから、戻るよ。」



 マルコムはミナミの肩を軽く叩いて、戻るように促した。

 その時に見た彼の横顔は、ミナミが気まずいと思った人間とは全く違うものだった。



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