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1話【死後生命保険加入】
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もっと詳しく話を聴いてみると、どうやら何歳までの肉体でリビングデッドになるかも契約の時に決められるらしい。年老いた体で第二の生は大変だろうからな。
「まぁ、天使の金儲けって感じもするし……リビングデッドになるとそこそこ大変らしいけどそれはホラ、リビングデッド専用保険に色々切り替えれば問題無い無い!」
「デメリットがあるのか」
人間七割、他種族三割の人口割合なこの街で、他種族の知り合いはそこそこいる。現に、鷭だってバンシーだ。だから、他種族に嫌悪感があるとかそういうわけではない。
が、ゾンビやリビングデッドの知り合いがいないのだ。情報が少なすぎる。
鷭は俺の疑問に対し、顎に指を当てて考えるような仕草をしながら答えた。
「う~んと……色々とケアが大変みたい。週に一回は肉体が腐らない為の防腐剤が入った血液を輸血して、朝起きた時に死後硬直させないよう寝る前のストレッチが必須で……あ! リビングデッドになったらまずは一ヶ月のリハビリが必要なの!」
「『リハビリ』? 何故だ」
「無痛症的な?」
簡単に言うと、リビングデッドには痛覚も触覚もないから普通の生活をするのには慣れが必要らしい。たった一歩歩くのにも、地に足の着く感覚がないから難しいとか。
しかし、リハビリを完璧に終えて体のケアさえきちんとしていれば、第二の生を謳歌できる。記憶はそのまま引き継がれ、理性も感情も人間の頃と同じ。
正直……あまり乗り気にはなれないが、ノルマ達成に困っている友人を放っておくのも気が引ける。どうしたものかと悩み、悩みに悩んだ末……俺は結論を出した。
「三十代の間だけという内容で、契約しよう」
「え、いいのっ?」
「あぁ」
山瓶子麒麟……現在、三十才。この若さで死んだら、確かに死んでも死にきれない。
自分の死に対して深く考えたことはなかったが、よくよく考えてみると確かに少し不安だ。これはそういうセールストークなのかもしれないが……まぁ、いいだろう。
鷭は嬉しそうに俺の手を両手で取り、上下にブンブンと揺らす。
「麒麟、ありがとう~!」
「俺の意思だ。気にするな」
そう言う鷭は、目に涙を浮かべていた。泣くほど喜ばれると、何だか落ち着かない。たかが保険の契約だというのに、大袈裟な反応だ。
用意された契約書に名前を書き、保険料を一括入金。依然ポロポロと泣いている鷭に見送られながら、俺は保険会社を後にした。
さて、次は病院へ行こう。腱鞘炎は事務作業をしている俺には困ったものだからな。きちんと医者に言われた通り、定期的な検査を心掛けているさ。
保険会社から病院までは、徒歩十分ほど。検査が終わったら、午後から仕事に行く予定だ。予想外の契約に時間を取られはしたが、昼休憩終了時間までには出勤できるだろう。
そう思い、俺は病院へ向かって歩き出す。
――その時だ。
「いやだぁああッ!」
――不意に背後で、鷭の叫び声が聞こえた。
そして、死後生命保険に加入した……その日。
――俺は死んだ。
「まぁ、天使の金儲けって感じもするし……リビングデッドになるとそこそこ大変らしいけどそれはホラ、リビングデッド専用保険に色々切り替えれば問題無い無い!」
「デメリットがあるのか」
人間七割、他種族三割の人口割合なこの街で、他種族の知り合いはそこそこいる。現に、鷭だってバンシーだ。だから、他種族に嫌悪感があるとかそういうわけではない。
が、ゾンビやリビングデッドの知り合いがいないのだ。情報が少なすぎる。
鷭は俺の疑問に対し、顎に指を当てて考えるような仕草をしながら答えた。
「う~んと……色々とケアが大変みたい。週に一回は肉体が腐らない為の防腐剤が入った血液を輸血して、朝起きた時に死後硬直させないよう寝る前のストレッチが必須で……あ! リビングデッドになったらまずは一ヶ月のリハビリが必要なの!」
「『リハビリ』? 何故だ」
「無痛症的な?」
簡単に言うと、リビングデッドには痛覚も触覚もないから普通の生活をするのには慣れが必要らしい。たった一歩歩くのにも、地に足の着く感覚がないから難しいとか。
しかし、リハビリを完璧に終えて体のケアさえきちんとしていれば、第二の生を謳歌できる。記憶はそのまま引き継がれ、理性も感情も人間の頃と同じ。
正直……あまり乗り気にはなれないが、ノルマ達成に困っている友人を放っておくのも気が引ける。どうしたものかと悩み、悩みに悩んだ末……俺は結論を出した。
「三十代の間だけという内容で、契約しよう」
「え、いいのっ?」
「あぁ」
山瓶子麒麟……現在、三十才。この若さで死んだら、確かに死んでも死にきれない。
自分の死に対して深く考えたことはなかったが、よくよく考えてみると確かに少し不安だ。これはそういうセールストークなのかもしれないが……まぁ、いいだろう。
鷭は嬉しそうに俺の手を両手で取り、上下にブンブンと揺らす。
「麒麟、ありがとう~!」
「俺の意思だ。気にするな」
そう言う鷭は、目に涙を浮かべていた。泣くほど喜ばれると、何だか落ち着かない。たかが保険の契約だというのに、大袈裟な反応だ。
用意された契約書に名前を書き、保険料を一括入金。依然ポロポロと泣いている鷭に見送られながら、俺は保険会社を後にした。
さて、次は病院へ行こう。腱鞘炎は事務作業をしている俺には困ったものだからな。きちんと医者に言われた通り、定期的な検査を心掛けているさ。
保険会社から病院までは、徒歩十分ほど。検査が終わったら、午後から仕事に行く予定だ。予想外の契約に時間を取られはしたが、昼休憩終了時間までには出勤できるだろう。
そう思い、俺は病院へ向かって歩き出す。
――その時だ。
「いやだぁああッ!」
――不意に背後で、鷭の叫び声が聞こえた。
そして、死後生命保険に加入した……その日。
――俺は死んだ。
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