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第10話【告白】
中編
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唇が離れると同時に、真駒はバランスを崩し掛ける。そんな真駒の腰に椎葉が手を添え、上体を支えた。
(何……? 何が……? な、何……?)
まとまらない思考で必死に現状を理解しようと努めるも、顔が熱くて仕方ない。好きな人に情熱的なキスをされて何も感じない程、真駒は枯れていないのだ。
「『取引を止めたい』……君は、そう言いたいのかな?」
浮ついた真駒を現実に引き戻したのは、椎葉の静かな声だった。息を呑んだ真駒の反応は、肯定だと椎葉は気付く。
真駒の体が震えていることに、手を添えている椎葉が気付かない筈がない。真駒の動揺は文字通り、椎葉には手に取るように分かった。
「それは……僕の首に、飽きたから?」
「まさか……ッ!」
椎葉の問い掛けを、真駒は瞬時に否定する。
椎葉の首は、いつだって魅力的だ。どんなに傷付こうと、どんなに汚れようと……それは決して変わらない。真駒自身でも予想外だったが、包帯が巻かれている首のラインですら見惚れてしまう程、美しいのだ。
真駒は首を何度も横に振って、全力で否定する。
「か、課長はいつだって……魅力的、です……だ、だからこそ……俺と、こんなこと続けたら……駄目、だって、思って……っ」
恐る恐る、真駒は椎葉を見上げた。
――そして、真駒は目を見開く。
――何故か、椎葉の頬が……赤く、染まっているのだ。
椎葉は自身の口元を手で隠し、真駒のように歯切れ悪くボソボソと呟く。
「そ、れは……自惚れても、いい……の、かな?」
「え……?」
「課長の首、じゃなくて……課長はって、言ったでしょ……?」
椎葉の言葉を頭の中で反芻し、真駒は再度、耳まで赤くなった。
「あっ、いやっ、えっと……ち、違、違わない……ですけど……違います……いやっ、違わ……ないん、ですけど……っ」
「どっち?」
「……っ」
違わないに、決まっている。真駒は椎葉のことが、好きなのだから。
そうは思っても、口にできない。
昨日知った噂話が、今朝の悪夢が、真駒の心を曇らせるから。
「課長は……も、本坂さんと……お、お似合い……です……っ」
「本坂さん?」
「つ、付き合ってるって……う、噂……っ」
椎葉の表情が、怪訝そうなものに変わる。
「僕、毎晩君と一緒に居るよね?」
「っ……は、はい……っ」
「え、ここ、照れるところかな?」
当然の指摘に、真駒は恥ずかしそうに頷いた。
(何……? 何が……? な、何……?)
まとまらない思考で必死に現状を理解しようと努めるも、顔が熱くて仕方ない。好きな人に情熱的なキスをされて何も感じない程、真駒は枯れていないのだ。
「『取引を止めたい』……君は、そう言いたいのかな?」
浮ついた真駒を現実に引き戻したのは、椎葉の静かな声だった。息を呑んだ真駒の反応は、肯定だと椎葉は気付く。
真駒の体が震えていることに、手を添えている椎葉が気付かない筈がない。真駒の動揺は文字通り、椎葉には手に取るように分かった。
「それは……僕の首に、飽きたから?」
「まさか……ッ!」
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「か、課長はいつだって……魅力的、です……だ、だからこそ……俺と、こんなこと続けたら……駄目、だって、思って……っ」
恐る恐る、真駒は椎葉を見上げた。
――そして、真駒は目を見開く。
――何故か、椎葉の頬が……赤く、染まっているのだ。
椎葉は自身の口元を手で隠し、真駒のように歯切れ悪くボソボソと呟く。
「そ、れは……自惚れても、いい……の、かな?」
「え……?」
「課長の首、じゃなくて……課長はって、言ったでしょ……?」
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「あっ、いやっ、えっと……ち、違、違わない……ですけど……違います……いやっ、違わ……ないん、ですけど……っ」
「どっち?」
「……っ」
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そうは思っても、口にできない。
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