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2話・無理矢理が好き

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 必死に考えをまとめようとしてみる。
 だけど、思考は全然まとまってくれない。

 だというのに……高遠原はまた、俺にキスをしてこようとした。
 だから俺は慌てて距離を置き、狼狽えてしまう。


「お、お前は俺が嫌いなんだろっ! だから、そうやって俺が困惑するようなことを言って……っ! やっ、やめろよ、マジでっ!」


 『好きだ』なんて……今まで、誰からも言われたことがない。
 高遠原が言いふらした噂のせいで、浮いた話一つ出なかったからだ。

 だから、当然告白なんてしたことないし、されたことも……ない。

 戸惑う俺を見て、高遠原が肩を揺らして笑う。


「ハハッ! 何だよ、お前……もしかして、照れてるのか?」
「ち、ちが……っ!」


 指摘されると、顔に熱が集まってくる。

 これは、告白とかに耐性がないからだ。高遠原のことを意識しているわけじゃ、ない。
 俺はコイツが、大嫌いなんだから。


「やべェな……。お前ってホント、たまんねェ」


 体を押して距離を取ったのに、高遠原は怯まない。
 ズケズケと、距離を詰めてくる。

 そして突然……不敵に、笑った。


「……そうだ」


 ニヤリと、高遠原の口角が上がる。


「お前さ、さっきの……俺様の手で射精したってこと、他の奴に知られたくないんだよな?」
「……っ!」
「だったら……今度こそお前は、俺様から逃げられない。……そうだよな?」


 告白なんて、一瞬にして頭から消し飛んだ。


「ヤッパリ、お前は俺が嫌いなんだろっ!」


 男が男を好きになるなんて、そうそうある話じゃない。

 さっきの告白は、俺をホモに仕立て上げる為の嘘なんだ。


「別に、とうとでも? どうせ初めから作戦は破綻してンだ。だったら、今度こそお前が逃げないように縛りつける。……当然だろ」
「離れろっ!」


 子供の頃にありがちな、独占欲。それが理由だったとしても、俺はコイツを許せやしない。

 現に……コイツは今また、別の方法で俺に嫌がらせをしようとしている。だったら、さっきの告白はなにかしらの布石に違いない。そう考えるのが、妥当だろう。


「真冬、怯えんなよ」


 高遠原の手が、伸ばされる。


「い、やだ……っ」


 抵抗しようとしたときには、もう遅い。


「あ……っ」


 無駄に立派な腕で、腰を引き寄せられたからだ。


「まぁ、怯えてるお前も可愛いけどな?」
「お前相手に誰が怯えるかよ……っ!」


 せっかく広げた距離を、あっという間に詰められる。


「いやだって、言ってるだろ……っ! 離れろ、高遠原……っ!」
「俺様のことを下の名前で呼んだら、考えてやってもいいぜ?」
「誰が呼ぶかよっ!」
「なら、交渉決裂だな」


 どうしたってコイツは、俺を逃がさない。


「怖いぐらい優しくシてやるよ」


 顎に指が添えられ、目が逸らせなくなった。
 高遠原の瞳には……情けない顔をしている俺が、映っている。

 そんな俺が見えなくなったのは……もう一度、高遠原と唇が重なったときだった。




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