メイドが世界を救った話

Masa&G

文字の大きさ
5 / 15

第4話 パァン!

しおりを挟む
(やさしく起こそうとしたけどだめか…)

モニカは小さくため息をつき、部屋の中を見渡した。 脱ぎ捨てられた服が床や椅子に散乱し、部屋の隅には洗濯物の山ができている。 

酒瓶の転がるテーブルと、乱れた寝具。英雄と呼ばれる男の私生活としては、あまりにもだらしない光景だった。

服の間から出ている腹に、ふと目が向く。無防備に上下するそれは、深い眠りの証でもあった。

(かくなる上は…)

はー…。 

モニカは覚悟を決めたように息を吐き、手のひらにそっと息を吹きかける。

振りかぶり、腹めがけて――

パァン!

「うおっ!?」

叩かれた感触にブランが飛び起きる。同時に、モニカは何事もなかったかのように背筋を伸ばし、姿勢を正した。

頭を掻きながら、ブランがぼんやりと周囲を見回す。

「いま…腹を叩かれたような…」

すかさず、モニカが口を開く。

「おはようございます。起きられましたか?」

満面の笑みだった。

「ん…。おぅ…さっき腹をひっぱた…」

ブランの言葉に、モニカが被せる。

「本日からブラン様のお世話係となりました、モニカ=ハブレットです。」

「よろしくお願いいたします。」

深々と頭を下げる。だが、下げた頭の下の表情は、笑っていなかった。

「ああ…よろしく…さっき、」

「汚れている服、溜まっているみたいなのでお洗濯してきますね!」

勢いで言葉を上書きされ、ブランは一瞬口を開いたまま固まる。

「ん…ああ…頼む。」

笑顔のまま、モニカはくるりと洗濯物の方へ向き直る。その背中を向けた瞬間、表情から笑みが消えた。

部屋の隅に山になっている汚れた服を見て、

(どんだけ洗濯物溜めてんのよ…)

(床に置かないでよね…まったく…)

モニカは洗濯物を抱え上げる。

(ぐ…)

ずしりとした重みとともに、ツンと鼻をつく匂いが立ち上った。

(何日前よ…)

息を止めながら、振り返る。

「今着ていらっしゃる服も、後で取りにくるので――」

一瞬言葉を選び、

「お着替え…お願いいたします。」

やんわりとした笑顔を浮かべた。

「失礼致します。」

ドアの前で丁寧におじぎをし、両手が塞がっているため、そのまま体当たりでドアを閉める。

バタン!!

部屋に残されたブランが、ぽつりと呟く。

「……なんか…俺、悪いことしたか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の守護霊さん『ラクロス編』

Masa&G
キャラ文芸
本作は、本編『私の守護霊さん』の番外編です。 本編では描ききれなかった「ラクロス編」を、単独でも読める形でお届けします。番外編だけでも内容はわかりますが、本編を先に読んでいただくと、より物語に入り込みやすくなると思います。 「絶対にレギュラーを取って、東京代表に行きたい――」 そんな想いを胸に、宮司彩音は日々ラクロスの練習に明け暮れている。 同じポジションには、絶対的エースアタッカー・梶原真夏。埋まらない実力差に折れそうになる彩音のそばには、今日も無言の相棒・守護霊さんがいた。 守護霊さんの全力バックアップのもと、彩音の“レギュラー奪取&東京代表への挑戦”が始まる──。

謎の最強師匠に弟子入りしたけれど、本当にこの師匠は何者なのだろう~最強を目指す少年が、謎の強すぎる師匠に弟子入りする話~

星上みかん(嬉野K)
ファンタジー
この作品は、 【カクヨム(完結済み)】 【ノベルアップ+】 【アルファポリス】 に投稿しております。 最強を目指す少年エトワールが町に行き着くと、メル・キュールという女性と出会う。 メルが道場主らしいという情報を仕入れたエトワールは、弟子入りを決意する。 それにしても、この師匠強すぎない? タフなことだけが取り柄の少年が最強を目指すお話。

私の守護霊さん

Masa&G
キャラ文芸
大学生活を送る彩音には、誰にも言えない秘密がある。 彼女のそばには、他人には姿の見えない“守護霊さん”がずっと寄り添っていた。 これは——二人で過ごした最後の一年を描く、かけがえのない物語。

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...