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最終話 前を向いて…(挿絵あり)
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八月――お盆。
彩音は帰省していた。
この一ヵ月に起きた出来事は、両親にはすべて話した。
だが、それを物語にすることはなかった。
今は祖母の家に滞在している。
その日、墓参りを終え、家族で車に乗って帰る途中だった。
見慣れた道の先に、鳥居が見えてくる。
「あ……お父さん。ちょっと車、止めて」
「ん? どうした?」
「ここ……笠間稲荷。私、ちょっと寄って帰るから。先に帰ってて。」
「先に?」
「大丈夫。おばあちゃんちまで、歩いて帰れるから。」
ガチャ……バタン。
「お、おい……」
彩音は振り返らず、鳥居のほうへ向き直った。
(なんだろ……呼ばれた……?)
(わかんない……)
鳥居をくぐる。 両脇には、いつもと変わらない狐の像。
(お稲荷様……)
境内に足を踏み入れた瞬間、胸の奥が、きゅっと鳴った。
(なんだろ……ドキドキする……)
拝殿の前を通り過ぎる。 視線が、自然と右手へ引かれた。
(こっち……)
誰かに導かれるように、奥へ進む。 人の気配は少なく、音も遠い。
裏手に回ると、本殿が見えた。
その下―― 小さなお稲荷様の祠が、いくつも並んでいる。
「狐塚…」
その前には、誰かが置いていったのだろう、小さなお狐様たち。
(……なんだろ)
彩音は、その中の一つに近づいた。 そっと手を伸ばし、祠を撫でる。
(……!?)
胸の奥に、すとん、と何かが落ちた。
(……うん……そっか……)
彩音の目から、一筋の涙がこぼれる。
(私は……大丈夫だよ……)
(ちゃんと……前に進むから……)
しばらく、そのまま立っていた。
風が、静かに境内を通り抜けていく。
(彩乃……ありがとう……)
彩音は帰省していた。
この一ヵ月に起きた出来事は、両親にはすべて話した。
だが、それを物語にすることはなかった。
今は祖母の家に滞在している。
その日、墓参りを終え、家族で車に乗って帰る途中だった。
見慣れた道の先に、鳥居が見えてくる。
「あ……お父さん。ちょっと車、止めて」
「ん? どうした?」
「ここ……笠間稲荷。私、ちょっと寄って帰るから。先に帰ってて。」
「先に?」
「大丈夫。おばあちゃんちまで、歩いて帰れるから。」
ガチャ……バタン。
「お、おい……」
彩音は振り返らず、鳥居のほうへ向き直った。
(なんだろ……呼ばれた……?)
(わかんない……)
鳥居をくぐる。 両脇には、いつもと変わらない狐の像。
(お稲荷様……)
境内に足を踏み入れた瞬間、胸の奥が、きゅっと鳴った。
(なんだろ……ドキドキする……)
拝殿の前を通り過ぎる。 視線が、自然と右手へ引かれた。
(こっち……)
誰かに導かれるように、奥へ進む。 人の気配は少なく、音も遠い。
裏手に回ると、本殿が見えた。
その下―― 小さなお稲荷様の祠が、いくつも並んでいる。
「狐塚…」
その前には、誰かが置いていったのだろう、小さなお狐様たち。
(……なんだろ)
彩音は、その中の一つに近づいた。 そっと手を伸ばし、祠を撫でる。
(……!?)
胸の奥に、すとん、と何かが落ちた。
(……うん……そっか……)
彩音の目から、一筋の涙がこぼれる。
(私は……大丈夫だよ……)
(ちゃんと……前に進むから……)
しばらく、そのまま立っていた。
風が、静かに境内を通り抜けていく。
(彩乃……ありがとう……)
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