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第二十話 鉄と雨の裁き
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時間:翌日 午前二時。
場所:東京湾・D地区 廃倉庫群外縁。
雨脚はさらに強くなっていた。
黒いセダンが、音もなく影の中に停まる。
フロントガラス越しに、廃倉庫群へ吸い込まれていく十数台の黒いトラックが見える。
入れ墨だらけの男たちが、ドクロマークの貼られた金属ドラム缶を次々と荷台から転がし降ろしていた。
そのとき――
いきなり、強烈なライトが車内を照らした。
「降りろ。」
低く唸るような声。
荒垣雷蔵は、すべてを読んでいた。
いつの間にか周囲には、鉄パイプや鉈を手にした男たちが十数人、車を取り囲んでいる。
荒垣は窓ガラスをコンコンと叩き、歯を剥き出して笑った。
「三坊ちゃま。
こんな時間に、こんな場所でドライブですか? ここ、事故多発地帯なんですよ。」
龍立は、静かにドアを開けた。
土砂降りの雨の中、武器を構えた男たちに囲まれても、震えひとつ見せない。
腕時計に視線を落とし、ぼそりと言う。
「二分、遅刻だ。」
「……あ?」
「もっと早く気付くと思っていたが、その程度か。」
その一言が、荒垣の逆鱗に触れる。
「死に際に粋がりやがって……! 海の底で反省会させてやる!」
「やれ!!」
怒号とともに、暴漢たちが一斉に襲い掛かる。
だが龍立は、微動だにしなかった。
構えも取らず、ごく軽く指を鳴らしただけだ。
――パチン。
次の瞬間。
世界が、揺れた。
ぐおおおおおおん――!!!
津波のような轟音とともに、周囲を取り囲んでいたコンテナの壁が動き出したのである。
闇に潜んでいた大型改造フォークリフトの群れが、一斉にヘッドライトを点灯させた。
鉄の牙を剥いた怪物のようなフォークが、鉄柵をなぎ倒し、戦場へ突入する。
「な、なんだあれは!?」
暴漢たちが悲鳴を上げて立ちすくむ。
その頭上、ひときわ巨大な重機の屋根の上に、源田鉄男が立っていた。
一メートルはあろうかという業務用ボルトカッターを片手に、下界を見下ろす。
「ほう。やっぱり三坊ちゃまの読み通り、獲物は釣れたか。」
大きな欠伸をひとつしてから、口にくわえていた楊枝を雨の中に吐き捨てる。
「雨ん中、三十分も待機させやがって。こっちは身体のオイルが切れちまうところだ。」
「おい職人ども! ウォーミングアップだ! 鉄屑とチンピラの仕分け作業、開始ぃ!」
「おおおおおおっ!!!」
鋼鉄と油にまみれた男たちの咆哮が、廃港に轟いた。
工場で鍛え上げられた腕力と重機が、ナマクラな暴力を一方的に蹂躙していく。
暴走族上がりのチンピラが乗り込んだ改造車は、ブルドーザーに正面からぶつけられ、そのままペシャンコに押しつぶされた。
一瞬で戦意を喪失する男たち。
荒垣は、状況がひっくり返ったことを悟ると、咆哮とともにシャツを引きちぎった。
墨で染め抜かれた背中一面の刺青が、雷光に照らされる。
「なめるなよ、ガキがああああ!!」
鉄パイプを振りかざし、龍立目掛けて突進する。
三百ポンド近い巨体が、暴風のような勢いで迫る。
龍立は、静かにジャケットのボタンを外した。
荒垣の一撃が、頭部めがけて振り下ろされる。
その瞬間、わずかな体重移動。
龍立は半歩、踏み込みながら身を捻り、殺人的な一撃を紙一重で外側に流した。
前のめりになった荒垣の懐に潜り込み、渾身の左フックを顎に叩き込む。
ズドン――!
巨体が宙に浮き、そのままぬかるんだ地面にうつ伏せに叩きつけられた。
立ち上がろうとした瞬間、その喉元に靴裏が乗る。
「その暴力は、ただの野蛮な駄々っ子だ。」
龍立は、冷ややかに告げた。
「本当の“技術”の前では、お前は何一つ優位に立てない。」
そのとき、遠くからサイレンが鳴り響いた。
吉岡が事前に通報していた警官隊が、到着したのだ。
荒垣は、手錠をかけられながらもなお叫ぶ。
「無駄だ! 俺を捕まえたって意味がねぇ! 明日の物流は全部止まる! お前らの可愛い百貨店も、工場も、全部な!」
龍立は、雨に濡れた顔を軽く拭いながら、東の空のかすかな光を見つめた。
「なら、その目で見ていろ。」
「“本当の効率”が何か――教えてやる。」
場所:東京湾・D地区 廃倉庫群外縁。
雨脚はさらに強くなっていた。
黒いセダンが、音もなく影の中に停まる。
フロントガラス越しに、廃倉庫群へ吸い込まれていく十数台の黒いトラックが見える。
入れ墨だらけの男たちが、ドクロマークの貼られた金属ドラム缶を次々と荷台から転がし降ろしていた。
そのとき――
いきなり、強烈なライトが車内を照らした。
「降りろ。」
低く唸るような声。
荒垣雷蔵は、すべてを読んでいた。
いつの間にか周囲には、鉄パイプや鉈を手にした男たちが十数人、車を取り囲んでいる。
荒垣は窓ガラスをコンコンと叩き、歯を剥き出して笑った。
「三坊ちゃま。
こんな時間に、こんな場所でドライブですか? ここ、事故多発地帯なんですよ。」
龍立は、静かにドアを開けた。
土砂降りの雨の中、武器を構えた男たちに囲まれても、震えひとつ見せない。
腕時計に視線を落とし、ぼそりと言う。
「二分、遅刻だ。」
「……あ?」
「もっと早く気付くと思っていたが、その程度か。」
その一言が、荒垣の逆鱗に触れる。
「死に際に粋がりやがって……! 海の底で反省会させてやる!」
「やれ!!」
怒号とともに、暴漢たちが一斉に襲い掛かる。
だが龍立は、微動だにしなかった。
構えも取らず、ごく軽く指を鳴らしただけだ。
――パチン。
次の瞬間。
世界が、揺れた。
ぐおおおおおおん――!!!
津波のような轟音とともに、周囲を取り囲んでいたコンテナの壁が動き出したのである。
闇に潜んでいた大型改造フォークリフトの群れが、一斉にヘッドライトを点灯させた。
鉄の牙を剥いた怪物のようなフォークが、鉄柵をなぎ倒し、戦場へ突入する。
「な、なんだあれは!?」
暴漢たちが悲鳴を上げて立ちすくむ。
その頭上、ひときわ巨大な重機の屋根の上に、源田鉄男が立っていた。
一メートルはあろうかという業務用ボルトカッターを片手に、下界を見下ろす。
「ほう。やっぱり三坊ちゃまの読み通り、獲物は釣れたか。」
大きな欠伸をひとつしてから、口にくわえていた楊枝を雨の中に吐き捨てる。
「雨ん中、三十分も待機させやがって。こっちは身体のオイルが切れちまうところだ。」
「おい職人ども! ウォーミングアップだ! 鉄屑とチンピラの仕分け作業、開始ぃ!」
「おおおおおおっ!!!」
鋼鉄と油にまみれた男たちの咆哮が、廃港に轟いた。
工場で鍛え上げられた腕力と重機が、ナマクラな暴力を一方的に蹂躙していく。
暴走族上がりのチンピラが乗り込んだ改造車は、ブルドーザーに正面からぶつけられ、そのままペシャンコに押しつぶされた。
一瞬で戦意を喪失する男たち。
荒垣は、状況がひっくり返ったことを悟ると、咆哮とともにシャツを引きちぎった。
墨で染め抜かれた背中一面の刺青が、雷光に照らされる。
「なめるなよ、ガキがああああ!!」
鉄パイプを振りかざし、龍立目掛けて突進する。
三百ポンド近い巨体が、暴風のような勢いで迫る。
龍立は、静かにジャケットのボタンを外した。
荒垣の一撃が、頭部めがけて振り下ろされる。
その瞬間、わずかな体重移動。
龍立は半歩、踏み込みながら身を捻り、殺人的な一撃を紙一重で外側に流した。
前のめりになった荒垣の懐に潜り込み、渾身の左フックを顎に叩き込む。
ズドン――!
巨体が宙に浮き、そのままぬかるんだ地面にうつ伏せに叩きつけられた。
立ち上がろうとした瞬間、その喉元に靴裏が乗る。
「その暴力は、ただの野蛮な駄々っ子だ。」
龍立は、冷ややかに告げた。
「本当の“技術”の前では、お前は何一つ優位に立てない。」
そのとき、遠くからサイレンが鳴り響いた。
吉岡が事前に通報していた警官隊が、到着したのだ。
荒垣は、手錠をかけられながらもなお叫ぶ。
「無駄だ! 俺を捕まえたって意味がねぇ! 明日の物流は全部止まる! お前らの可愛い百貨店も、工場も、全部な!」
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