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第六十九話 一度きりの握手
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時刻:二日後/豪雨の夜
場所:東京・赤坂 某隠れ家の高級茶室 & 東京湾・ハッピー信販 地下金庫
赤坂・茶室
聞こえるのは、湯が沸く音と、障子の向こうの雨音だけ。長兄・龍仁は素色の着物姿で、優雅に龍立へ茶を注いだ。
「珍客だな。――お前の人間が、“ハッピー信販”の犬の脚を何本か折ったそうじゃないか。老二は電話で発狂していた」
龍立は茶に口を付けず、松本がまとめた資金流向図を卓上に置いた。
「二哥は高利貸しだけじゃない。銀行の公金を抜いている。この金の一部は極右議員へ、残りは自分の懐へ。――澄原家の根を掘ってる」
龍仁は一瞥しただけで、穏やかな目が一瞬で凍った。
「……龍雅。食い方が汚すぎる。権力争いは好きにやればいい。だが、銀行の金庫に手を入れるのは許さん」
「取引しよう、大哥」
龍立は真正面から見据える。
「二哥はこの“業績”で来月、東京へ戻るつもりだ。董事会上で勢いづけば、大哥の座も揺らぐ。俺が鉄の証拠を渡す。大哥は董事会上で、奴に致命傷を入れろ。報酬は――氷室が握る“消費者金融免許”だ」
沈黙。龍仁は茶を一口含み、面白がるように口角を上げた。
「成立だ。原本(紙の署名付き)を取って来い。持って来られるなら、董事会上――俺が刺してやる」
その夜 ハッピー信販本部(廃物流倉庫に偽装)
夜明け前に終わらせねばならない戦い。正面の陽動が先に始まる。
「ドンッ!」
大型トラックが倉庫の門を叩き割った。龍立は三十名の警備員を率い、雨の中へ踏み込む。
「誰だぁ!? 死にてぇのか!」
倉庫から六、七十の刺青男が飛び出す。バット、鉈。二哥が飼う私兵。
「ゴミ掃除だ」
龍立が冷たく命じた。澄心警備隊は、圧倒的な戦術で潰す。高圧スタンシールドが壁を作り、催涙ガスと連携し、烏合の衆を死角へ追い詰めた。
地下金庫の入口。本命はここだ。源田鉄男が、工業用の巨大プラズマ熱溶断機を押してくる。
「ジィィ――!!」
青いプラズマ束が噴き上がる。厚さ半メートルの合金鋼板が、蝋のように無音で溶け落ちた。扉が轟音を立てて倒れる。
松本と老会計たちが突入。札束と帳簿の山をかき分ける。
「見つけた! 二少の直筆決裁の原本だ!」
――だが龍立は、数十億円の現金が積み上がる金庫で、足を止めた。札束の卓上に、金メッキの回転式拳銃。暴力を誇示する玩具。
龍立は銃を取った。慣れた手つきでシリンダーを開き、「ガララ」と回し――カチン、と閉じる。束ねた札の上へ腰を下ろし、長い脚を組む。銃口は無造作に、床へ押さえつけられた組織のボスへ向く。
ボスは失禁し、声が裏返った。
「や、やめてくれ……金なら全部持っていけ……!」
龍立は四壁の“金”を見る。高橋や美咲の、汗と血でできた金だ。龍立は天井へ向けて引き金を引いた。
「カチ」
空撃ち。龍立は笑った。背筋が凍る笑いだ。銃の指紋を拭い、札束の山へ放り投げる。
「金? いらねぇ。お前の汚れた金は」
龍立は立ち上がり、襟を整える。ボスを見下ろし、言い放つ。
「お前らが回収するのは利息だ。俺が回収するのは――お前らの命だ。連行しろ。帳簿は全部。紙一枚残すな」
場所:東京・赤坂 某隠れ家の高級茶室 & 東京湾・ハッピー信販 地下金庫
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聞こえるのは、湯が沸く音と、障子の向こうの雨音だけ。長兄・龍仁は素色の着物姿で、優雅に龍立へ茶を注いだ。
「珍客だな。――お前の人間が、“ハッピー信販”の犬の脚を何本か折ったそうじゃないか。老二は電話で発狂していた」
龍立は茶に口を付けず、松本がまとめた資金流向図を卓上に置いた。
「二哥は高利貸しだけじゃない。銀行の公金を抜いている。この金の一部は極右議員へ、残りは自分の懐へ。――澄原家の根を掘ってる」
龍仁は一瞥しただけで、穏やかな目が一瞬で凍った。
「……龍雅。食い方が汚すぎる。権力争いは好きにやればいい。だが、銀行の金庫に手を入れるのは許さん」
「取引しよう、大哥」
龍立は真正面から見据える。
「二哥はこの“業績”で来月、東京へ戻るつもりだ。董事会上で勢いづけば、大哥の座も揺らぐ。俺が鉄の証拠を渡す。大哥は董事会上で、奴に致命傷を入れろ。報酬は――氷室が握る“消費者金融免許”だ」
沈黙。龍仁は茶を一口含み、面白がるように口角を上げた。
「成立だ。原本(紙の署名付き)を取って来い。持って来られるなら、董事会上――俺が刺してやる」
その夜 ハッピー信販本部(廃物流倉庫に偽装)
夜明け前に終わらせねばならない戦い。正面の陽動が先に始まる。
「ドンッ!」
大型トラックが倉庫の門を叩き割った。龍立は三十名の警備員を率い、雨の中へ踏み込む。
「誰だぁ!? 死にてぇのか!」
倉庫から六、七十の刺青男が飛び出す。バット、鉈。二哥が飼う私兵。
「ゴミ掃除だ」
龍立が冷たく命じた。澄心警備隊は、圧倒的な戦術で潰す。高圧スタンシールドが壁を作り、催涙ガスと連携し、烏合の衆を死角へ追い詰めた。
地下金庫の入口。本命はここだ。源田鉄男が、工業用の巨大プラズマ熱溶断機を押してくる。
「ジィィ――!!」
青いプラズマ束が噴き上がる。厚さ半メートルの合金鋼板が、蝋のように無音で溶け落ちた。扉が轟音を立てて倒れる。
松本と老会計たちが突入。札束と帳簿の山をかき分ける。
「見つけた! 二少の直筆決裁の原本だ!」
――だが龍立は、数十億円の現金が積み上がる金庫で、足を止めた。札束の卓上に、金メッキの回転式拳銃。暴力を誇示する玩具。
龍立は銃を取った。慣れた手つきでシリンダーを開き、「ガララ」と回し――カチン、と閉じる。束ねた札の上へ腰を下ろし、長い脚を組む。銃口は無造作に、床へ押さえつけられた組織のボスへ向く。
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