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第七十話 取締役会の処刑
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時刻:翌朝 10:00
場所:澄原銀行本社・最高取締役会議室
巨大な紅木の円卓。空気は凍っていた。澄原惟宗が上座に座り、目を閉じている。二哥・龍雅は意気揚々とスライドを進めた。
「父上、消費者金融部門は今四半期、利益が倍増し――」
「――ドン」
会議室の扉が押し開かれた。龍立が黒いスーツで入ってくる。背後に松本、および三上弁護士。足取りは迷いがない。
「龍立! ここは取締役会だ!」
龍雅が怒鳴る。
「警備を――!」
「言わせろ」
長兄・龍仁が冷たく制した。場が沈黙する。龍立は父の前へ立つ。父は目を開けず、指で机を軽く叩いただけだった。龍立は松本へ合図する。
松本が息を吸い、山のような証拠を――氷室常務の前へ叩きつけた。
「氷室常務、二少。私は松本だ。久しぶりだな。これは“ハッピー信販”を使った資金洗浄と、高利貸しの全証拠だ。14ページが氷室の私印、28ページが二少の資金移動命令」
松本の声が会議室を貫く。
「あなた方の“利益”は、違法な黒金だ。――一枚一枚が血に濡れている!」
氷室は機密書類を見た瞬間、膝から崩れ落ちた。龍雅が青ざめて叫ぶ。
「父上! 兄上! これは捏造だ! 龍立が家産を奪うための――!」
龍仁はゆっくり立ち上がり、解任決議書を卓上へ放った。
「龍雅。証拠は揃っている」
そして父へ視線を向ける。
「父上。銀行を守るには、“切り捨て”が必要です」
惟宗が、ようやく目を開けた。刃のような視線が龍雅を削ぐ。
「龍雅。――京都へ戻れ。私の命令があるまで、死んでも戻るな」
龍雅は灰のような顔になり、警備に両腕を掴まれて引きずり出された。龍立は氷室の前へ。
「氷室。次はお前だ。消費者金融子会社を分離しろ。1円で俺に売れ。不良債権と法的責任は俺が引き受ける。――そしてお前は“辞任”できる」
氷室は震える手で署名し、逃げ切った気になって訊いた。
「さ、三少……サインしました。これで、私は……帰れますよね……?」
龍立は契約書を受け取り、笑みを消した。眼が、研いだ刃になる。
「帰る? どこへ?」
龍立が指を鳴らす。待機していた東京地検特捜部の検事が雪崩れ込み、手錠を掲げた。
「氷室 厳。巨額金融詐欺、資金洗浄の容疑で逮捕する」
氷室が絶叫する。「お、お前……行かせるって言っただろう!」
龍立は氷室の耳元へ顔を寄せ、低く囁いた。
「俺が買うと言ったのは“免許”だ。――お前の命を買うなんて、一言も言ってない。それに、お前はヤクザの金を抜きすぎた。刑務所じゃ、独房でも三日持たない。お前に搾られた連中が――中で待ってる」
氷室の叫びが引きずられて消えていった。
一週間後。F区・新銀行ロビー。「ハッピー信販」の看板は引き剥がされ、「澄心銀行(ChengXin Bank)」へ掛け替えられた。ロビーは社員と、外から来た高利貸し被害者で溢れ返る。
龍立は壇上に立ち、松本からマイクを受け取った。
「澄原龍立、ここに宣言する。本日より、“ハッピー信販”における過去債務の――利息は全免除だ! 元本は会社が先に立て替える。返済は分割、利息ゼロで会社へ返せ!」
歓声が天井を揺らした。高橋は床に膝をつき、嗚咽しながら、吸血の借用書を引き裂いた。見えない鎖が――ついに切れた。
松本は龍立の隣で眼鏡を外し、涙を拭った。
「社長……銀行はできました。でも、私たちは触れてはいけない“皿”をいくつも割りました」
龍立は窓の外を見た。長兄からメッセージが届く。
【龍雅は完膚なきまでに敗れた。だが、背後の極右議員が激怒している。お前は国家の金融の根を揺さぶった、と。気をつけろ。次の嵐は――国会から吹く】
龍立の目が、静かに細くなる。
「――来い」
そう言うように、彼は画面を閉じた。
場所:澄原銀行本社・最高取締役会議室
巨大な紅木の円卓。空気は凍っていた。澄原惟宗が上座に座り、目を閉じている。二哥・龍雅は意気揚々とスライドを進めた。
「父上、消費者金融部門は今四半期、利益が倍増し――」
「――ドン」
会議室の扉が押し開かれた。龍立が黒いスーツで入ってくる。背後に松本、および三上弁護士。足取りは迷いがない。
「龍立! ここは取締役会だ!」
龍雅が怒鳴る。
「警備を――!」
「言わせろ」
長兄・龍仁が冷たく制した。場が沈黙する。龍立は父の前へ立つ。父は目を開けず、指で机を軽く叩いただけだった。龍立は松本へ合図する。
松本が息を吸い、山のような証拠を――氷室常務の前へ叩きつけた。
「氷室常務、二少。私は松本だ。久しぶりだな。これは“ハッピー信販”を使った資金洗浄と、高利貸しの全証拠だ。14ページが氷室の私印、28ページが二少の資金移動命令」
松本の声が会議室を貫く。
「あなた方の“利益”は、違法な黒金だ。――一枚一枚が血に濡れている!」
氷室は機密書類を見た瞬間、膝から崩れ落ちた。龍雅が青ざめて叫ぶ。
「父上! 兄上! これは捏造だ! 龍立が家産を奪うための――!」
龍仁はゆっくり立ち上がり、解任決議書を卓上へ放った。
「龍雅。証拠は揃っている」
そして父へ視線を向ける。
「父上。銀行を守るには、“切り捨て”が必要です」
惟宗が、ようやく目を開けた。刃のような視線が龍雅を削ぐ。
「龍雅。――京都へ戻れ。私の命令があるまで、死んでも戻るな」
龍雅は灰のような顔になり、警備に両腕を掴まれて引きずり出された。龍立は氷室の前へ。
「氷室。次はお前だ。消費者金融子会社を分離しろ。1円で俺に売れ。不良債権と法的責任は俺が引き受ける。――そしてお前は“辞任”できる」
氷室は震える手で署名し、逃げ切った気になって訊いた。
「さ、三少……サインしました。これで、私は……帰れますよね……?」
龍立は契約書を受け取り、笑みを消した。眼が、研いだ刃になる。
「帰る? どこへ?」
龍立が指を鳴らす。待機していた東京地検特捜部の検事が雪崩れ込み、手錠を掲げた。
「氷室 厳。巨額金融詐欺、資金洗浄の容疑で逮捕する」
氷室が絶叫する。「お、お前……行かせるって言っただろう!」
龍立は氷室の耳元へ顔を寄せ、低く囁いた。
「俺が買うと言ったのは“免許”だ。――お前の命を買うなんて、一言も言ってない。それに、お前はヤクザの金を抜きすぎた。刑務所じゃ、独房でも三日持たない。お前に搾られた連中が――中で待ってる」
氷室の叫びが引きずられて消えていった。
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【龍雅は完膚なきまでに敗れた。だが、背後の極右議員が激怒している。お前は国家の金融の根を揺さぶった、と。気をつけろ。次の嵐は――国会から吹く】
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「――来い」
そう言うように、彼は画面を閉じた。
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