75 / 161
第七十五話 人買いの末路
しおりを挟む
時刻:翌朝
場所:帝国人材本社ビル & 東京地検特捜部 記者会見
夜が明ける前に、帝国人材本社ビルはパトカーで包囲された。単なる商法違反の容疑者ではない。政治スキャンダルの核心証人として、狩り出される。
吉岡が暴いた帳簿は、蟻川が“中抜き”で吸い上げた数千億円の血汗を、政治献金へ洗い、親民党の国会議員の懐へ流した流れを、細部まで記録していた。これは商業トラブルではない。国の土台を揺らす「疑獄事件」だった。
ビル入口。蟻川正臣は二人の特捜部検事に挟まれ、連行される。かつての傲慢は消え、髪は乱れ、手首には手錠。自殺や口封じを防ぐため、頭には黒い布まで被せられていた。
見物人の中に、大島由美がいる。若い新卒がいる。搾取されてきた派遣労働者が、無数にいる。誰も卵を投げない。罵声も飛ばさない。ただ、静かに見送る。そこにあるのは、やっと息を吸えるようになった者の“解放”だった。
龍立は人垣の最前列に立つ。蟻川は彼の横で足を止め、黒布の奥から、掠れた声を吐いた。悪鬼の囁きみたいに。
「澄原龍立……お前の勝ちだ……だが俺は手袋に過ぎない……お前は“ピラミッドの頂点”の財布を揺らした。本物の大物が……お前を許すと思うな……最後の日々を楽しめ。」
龍立は表情を変えない。ただ、襟を整えた。
「国会議事堂の奥に隠れてる連中のことか。」声が淡々と、冷たく届く。「なら伝えろ。首を洗って待て。――俺が、行く。」
蟻川は警察車両へ押し込まれ、連れ去られた。人材帝国は、轟音もなく崩れ落ちる。
一週間後。澄心Link運営センター。巨大モニターに数字が跳ねる。
・登録ユーザー:500万人
・平均賃金上昇率:60%
・仲介手数料:0%
大島由美は、新しい澄心の正規制服を着て、本社ロビーへ入った。生地は良い。縫製も良い。それは“扱い”が変わった証だ。ATMで、初めての「満額給与」明細を引き出す。控除なし。中間搾取なし。
【支給額:550,000円】
(時給3,000 × 8時間 × 22日 + 夜勤手当 + 皆勤賞)
由美は数字を見て、口を押さえ、その場にしゃがみ込んだ。涙が床を濡らす。以前の彼女には、想像すらできなかった額。スマホを取り出し、息子へメッセージを送る。
「息子へ。ママ、お給料が出たよ。今夜は和牛焼肉、行こう。参考書も一番いいのを買おうね。」
由美は立ち上がり、龍立のオフィスの方向へ深く頭を下げた。変わったのは金だけじゃない。“人としての尊厳”が戻ったのだ。
――だが最上階のオフィスで、龍立は祝っていなかった。窓の向こう、国家権力の象徴――国会議事堂を見つめている。蟻川の警告が耳に残る。佐久間が入ってきた。顔が硬い。
「社長、今、情報が入りました。親民党最大派閥の領袖――大門剛造議員が、明日の予算委員会であなたを証人喚問します。理由は――澄心グループが離岸資金を用いて国家経済秩序を攪乱した疑い。」
宣戦布告だった。手袋を落とし、汚れた手そのものが、表へ出てくる。龍立は机上の“政治献金帳簿”を掴む。目に恐れはない。あるのは、狩りの前の高揚だけ。
「俺を喚問?」口元に薄い笑み。「いい。全日本に見せてやる。――いったい誰が、この国を攪乱しているのかを。」
【第十六巻予告:永田町の審判】
政治決戦篇、開幕。
「この国では、法は権力の侍女だ。」
国家機構の圧殺。メディアの包囲。国会の法廷。
龍立は、孤身で“嘘だけが満ちた議事堂”へ入っていく。彼は弁護しに行くのではない。――宣告しに行く。
「お前たちは俺を“ルール破壊”で裁く?」
「違う。俺は――お前たちが蛀虫みたいに齧り腐らせたルールを修繕している。」
「次に倒れるのは――お前だ、大門剛造。」
場所:帝国人材本社ビル & 東京地検特捜部 記者会見
夜が明ける前に、帝国人材本社ビルはパトカーで包囲された。単なる商法違反の容疑者ではない。政治スキャンダルの核心証人として、狩り出される。
吉岡が暴いた帳簿は、蟻川が“中抜き”で吸い上げた数千億円の血汗を、政治献金へ洗い、親民党の国会議員の懐へ流した流れを、細部まで記録していた。これは商業トラブルではない。国の土台を揺らす「疑獄事件」だった。
ビル入口。蟻川正臣は二人の特捜部検事に挟まれ、連行される。かつての傲慢は消え、髪は乱れ、手首には手錠。自殺や口封じを防ぐため、頭には黒い布まで被せられていた。
見物人の中に、大島由美がいる。若い新卒がいる。搾取されてきた派遣労働者が、無数にいる。誰も卵を投げない。罵声も飛ばさない。ただ、静かに見送る。そこにあるのは、やっと息を吸えるようになった者の“解放”だった。
龍立は人垣の最前列に立つ。蟻川は彼の横で足を止め、黒布の奥から、掠れた声を吐いた。悪鬼の囁きみたいに。
「澄原龍立……お前の勝ちだ……だが俺は手袋に過ぎない……お前は“ピラミッドの頂点”の財布を揺らした。本物の大物が……お前を許すと思うな……最後の日々を楽しめ。」
龍立は表情を変えない。ただ、襟を整えた。
「国会議事堂の奥に隠れてる連中のことか。」声が淡々と、冷たく届く。「なら伝えろ。首を洗って待て。――俺が、行く。」
蟻川は警察車両へ押し込まれ、連れ去られた。人材帝国は、轟音もなく崩れ落ちる。
一週間後。澄心Link運営センター。巨大モニターに数字が跳ねる。
・登録ユーザー:500万人
・平均賃金上昇率:60%
・仲介手数料:0%
大島由美は、新しい澄心の正規制服を着て、本社ロビーへ入った。生地は良い。縫製も良い。それは“扱い”が変わった証だ。ATMで、初めての「満額給与」明細を引き出す。控除なし。中間搾取なし。
【支給額:550,000円】
(時給3,000 × 8時間 × 22日 + 夜勤手当 + 皆勤賞)
由美は数字を見て、口を押さえ、その場にしゃがみ込んだ。涙が床を濡らす。以前の彼女には、想像すらできなかった額。スマホを取り出し、息子へメッセージを送る。
「息子へ。ママ、お給料が出たよ。今夜は和牛焼肉、行こう。参考書も一番いいのを買おうね。」
由美は立ち上がり、龍立のオフィスの方向へ深く頭を下げた。変わったのは金だけじゃない。“人としての尊厳”が戻ったのだ。
――だが最上階のオフィスで、龍立は祝っていなかった。窓の向こう、国家権力の象徴――国会議事堂を見つめている。蟻川の警告が耳に残る。佐久間が入ってきた。顔が硬い。
「社長、今、情報が入りました。親民党最大派閥の領袖――大門剛造議員が、明日の予算委員会であなたを証人喚問します。理由は――澄心グループが離岸資金を用いて国家経済秩序を攪乱した疑い。」
宣戦布告だった。手袋を落とし、汚れた手そのものが、表へ出てくる。龍立は机上の“政治献金帳簿”を掴む。目に恐れはない。あるのは、狩りの前の高揚だけ。
「俺を喚問?」口元に薄い笑み。「いい。全日本に見せてやる。――いったい誰が、この国を攪乱しているのかを。」
【第十六巻予告:永田町の審判】
政治決戦篇、開幕。
「この国では、法は権力の侍女だ。」
国家機構の圧殺。メディアの包囲。国会の法廷。
龍立は、孤身で“嘘だけが満ちた議事堂”へ入っていく。彼は弁護しに行くのではない。――宣告しに行く。
「お前たちは俺を“ルール破壊”で裁く?」
「違う。俺は――お前たちが蛀虫みたいに齧り腐らせたルールを修繕している。」
「次に倒れるのは――お前だ、大門剛造。」
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる