カナダに追放された財閥の三男が帰国しました:父が「搾取は伝統だ」と言うので、「あらゆる手段」を使ってこの1兆円規模のブラック巨艦を完全ホワイ

RyuChoukan

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第八十話 巨人の黄昏

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 時刻:正午 12:00

 場所:国会議事堂 正門

 日本の立憲史に刻まれる瞬間だった。数百台のカメラのフラッシュの中、かつて不遜を極めた与党の巨頭――「永田町の太上皇」と呼ばれた大門剛造が、冷たい手錠をかけられる。

 特捜官は衣服で頭と手を覆った。だが、震える身体が恐怖を隠しきれない。

 群衆は歓声を上げなかった。あるのは、死のような静けさ。怒りが言葉を越えていた。吸血鬼がパトカーに押し込まれるのを、旧時代の葬列みたいに見送る。

 大門の逮捕で、親民党内閣の支持率は一時間で底へ落ちた。火消しのため、首相は衆議院解散と前倒し総選挙を発表せざるを得ない。旧い政治の骨組みが、一夜で崩れた。

――一週間後。澄心ホールディングス本社。

 嵐を越えても、澄心は倒れなかった。むしろ龍立の“硬骨”は、国民の心に英雄企業を刻んだ。国税も金融庁も、いつの間にか調査班を引き上げた。この局面で民意に逆らう者はいない。

 新しく発足した暫定内閣は、経済安定のため龍立へ橄欖枝を差し出す。首相官邸の朱印が鮮やかな一枚の文書が、龍立の机に置かれた。

【国家戦略特区 認定書】
 特区範囲:東京湾F区および周辺拡張区域
 権限:医療・教育・雇用・エネルギー等、既存法制の制約を一部解除し、「超法規的」社会実験を許可

 龍立が命を賭して得た“特権”。次の時代を開く鍵。

 龍立は落地窓の前に立ち、夕陽の東京湾を見た。吉岡が近づく。声がまだ震える。「社長……勝ちました。俺たち、本当に怪物を倒した。」

 佐久間も目を赤くして頷く。「もう誰も、古い法律で首を締められない。」

 龍立は、狂喜しない。冷静で、むしろ憂いがある。「勝った……か?」

 窓の下の街。生計のため走り続け、結婚も出産も諦め、孤独に老いていく人々。政治家を一人倒しても、国の病巣は治らない。

「吉岡、佐久間。」龍立は夕陽を背に振り返る。影が長く伸びた。「政治の障害は片付いた。だがそれは地ならしに過ぎない。本当の建設は――これからだ。次は、少子化と高齢化。」

 龍立は遠くの公園を指す。そこには、ブランコに老人が一人。砂場は空っぽで、子どもがいない。「これを止めなければ、二十年後、日本に人がいなくなる。金を稼いでも、意味がない。死にかけた国で、生命を作り直す。尊厳を定義し直す。たとえ挑む相手が、生物学の限界でも――倫理の境界でも。」

予告:社会リビルド篇・開幕

「若者が産めないのは、産まれた瞬間から奴隷だからだ。老人が生きたくないのは、生きるほど“負債”になるからだ。」

 国家戦略特区の権限を得た龍立は、F区に“本物のユートピア”を作ると決めた。

 狂気の子育てプログラム
 出産で住宅支給? AIベビーシッター無料? F区に「人類繁殖特区」を設け、家族観を塗り替える。

 銀髪戦争
 捨てられた老人は、ただ死を待つだけ? 違う。澄心精工が第一世代の民生用外骨格スーツを投入する。「七十歳が寝たきりだと、誰が決めた? 着れば、お前は“超人”だ。」

 龍立は老人を“負担”ではなく、“戦士”として立たせる。「死神から、この国の未来を奪い返す。」
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