カナダに追放された財閥の三男が帰国しました:父が「搾取は伝統だ」と言うので、「あらゆる手段」を使ってこの1兆円規模のブラック巨艦を完全ホワイ

RyuChoukan

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第一百二十九話 帰る道

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 時間:早朝 06:00

 場所:新宿・歌舞伎町一番街 入口

 灰色の靄を裂き、東京の空に最初の陽が差す。アルコール、吐瀉物、欲望の臭いに満ちた街へ――その光が、今日だけは妙に“澄んで”見えた。

 救出された東横キッズが二百人以上、路口に立っている。昨日のままの汚れた服。恐怖で固まった顔。禁断症状で震える身体。傷ついた小獣の群れが、周囲を警戒する。

 警察のサイレンはない。威圧もない。彼らの前に並んでいたのは、暖かいオレンジ色に塗装された澄心グループの豪華バス十台。車体には冷たい企業ロゴではなく、『幻星神域』の可愛いキャラクターが描かれていた。

 龍立がバスの前に立つ。昨夜の殺気を纏う装備は脱ぎ、柔らかな白のカシミアセーター。マイクで演説などしない。彼は震える少年の前にしゃがみ、目線を合わせた。

「……腹は減ってるか?」少年は戸惑い、そして小さく頷く。「バスに温かい牛乳がある。焼きたてのパンも。施しじゃない。朝飯だ」

 龍立は立ち上がり、全員へ言う。「家に帰りたくないのも分かる。警察にも行きたくないだろ。誰もお前らの痛みを理解しない。だから、別の場所を用意した」

 場所転換:東京湾F区・澄心ユースコミュニティ(ChengXin Youth Hub)

 バスがF区へ入る。子どもたちは、少年院のような場所を想像していた。だが目の前の光景に、言葉を失う。廃倉庫を改装した“オープン街区”。壁はグラフィティと緑で覆われ、囲いも鉄条網もない。

 ――「再生計画(Project Re-Birth)」始動。龍立は中核チームを招集し、コミュニティホールで詳細な施策を発表した。これは単なる保護ではない。精密な“魂の修復工事”だ。

 第一段階:心身デトックス
 責任者:南方仁 & 劉立

「普通のカウンセリングは効きません」劉立は眼鏡を押し上げ、ホログラムを展開する。「彼らは医者を拒絶する。いや、“会話”そのものを拒絶する」

 スクリーンに現れたのは、彼が準備してきたシステム。【GIGA・澄心心理療癒システム(VR Sandplay Therapy)】

「現実から逃げたいなら、逃げ場を“治療用”に作ります」劉立は並ぶVRカプセルを示した。

「これはゲームじゃない。“デジタル箱庭療法”です。説教する医者は居ない。子どもたちは勇者になる。彼らの恐怖――家庭内暴力の父親、搾取する悪党は、“影の怪物”として具現化される。彼らが剣で怪物を倒す。あるいは仮想庭園で花を育てる。その瞬間、脳波をリアルタイムで測定して正のフィードバックを返す。一回のクリアは一回の暗示だ。――自分には、恐怖に勝つ力がある」



 南方が続ける。「同時に、医療チームが三ヶ月の身体的離脱治療を行う。ゲームで注意が逸れている時が、一番離脱症状を越えやすい」

 第二段階:情緒アンカー
 責任者:小鳥遊凛

 凛はアイドルの光を脱ぎ捨て、地味なエプロン姿で子どもたちの中へ入った。“スカウト”に騙された経験を持つ彼らにとって、凛の過去は何よりの共鳴だ。説教はしない。彼女はギターを抱え、芝生に座り、歌う。

「……私も、ゴミ捨て場にいた。大人に騙されて、商品にされた。でも、這い上がれた」凛はここで“大姉ちゃん”になる。ダメ男の見分け方。化粧は男のためじゃなく、自分のためにすること。地獄の記憶を歌詞に変えて吐き出すこと。凛の歌声の中で、刺だらけだった少女たちは初めて鎧を外し、凛の肩で泣いた。

 第三段階:価値の再構築
 責任者:源田鉄男 & 澄心各事業部

「金を渡しても意味はない」龍立は、暴力性を持つ少年たちを見る。「必要なのは、“必要とされる感覚”だ。源田。任せる」

 精工工場:源田は優しい教師のふりをしない。不良少年に、大ハンマーを投げ渡した。

「中に火があるんだろ。殴りたいんだろ」彼は廃材の金属山を指す。「これを叩き潰せ。平らにした分だけ金を払う。これが“金属回収”だ。――機甲を作る最初の一歩だ」

 少年たちは汗だくで叩き続ける。その鉄塊が溶鉱炉に運ばれ、タイタン機甲の部品になるのを見た瞬間、“俺でも作れる”という達成感が、空洞だった心を埋めた。

 GIGAインタラクティブ:引きこもり気質の子には、劉立が社員証を渡す。「お前らはゴミじゃない。GIGAの“主任バグハンター”だ。俺のバグを見つけたら、最高スペックPCをやる」社会に捨てられた“ゲーム廃人”が、ここで技術者になる。

 結末:新生の芽
 時間:一ヶ月後
 場所:澄心総合病院・回復病棟

 陽菜は、ついに起き上がれるようになった。朝の光がベッドを照らす。劉立が椅子に座り、不器用な絵を手にしている。陽菜が震える手でタブレットに描いた絵だった。

 暗い路地も、注射器もない。そこにいるのは――鎧を纏った劉立と、剣を持つ龍立。「貧困」という名の黒竜を斬っている。そして二人の背後に、画板を抱えた小さな少女が笑っている。

「……劉立お兄ちゃん」陽菜の声はまだ弱い。だが、はっきりしていた。「生きたい。世界で一番きれいなお姫様を描きたい」

 劉立は鼻の奥が熱くなるのを感じた。だが泣かない。笑って、陽菜の頭を撫でた。「上手い。この絵は、GIGAの次の大作のコンセプトアートだ。退院したら、働け。席はもう用意した」

 尾声:次の敵

 龍立はユースコミュニティの入口に立ち、作業着に着替えた子どもたちが整列して食堂へ向かう姿を見る。この街の深い傷は、少しずつ塞がり始めていた。そこへ工藤孝太が、暗号化資料を差し出す。顔は重い。

「社長……兵頭極は倒れましたが、所詮“仕入れ役”の末端です。背後の資金池を突き止めました。子どもを搾取し、薬で稼いだ黒い金は、日本に残っていません。数百の地下両替を通り……最終的に流れ込んでいるのは、巨大プロジェクトです。東京湾IR(統合型リゾート/カジノ)計画」

 龍立が資料を見る。そこにある名前が、視界に刺さった。――「クラウン・ゲーミング・グループ(Crown Gaming)」海外の巨大カジノ財閥。日本国内の“パチン王王”と組み、「観光振興」の名の下に東京湾をアジア最大の賭場へ変える。

「……賭博か」龍立の目が細くなる。嫌悪が、刃になる。「子どもを商品にして金を作り、次は大人の貯金を賭場で吸い尽くす。この国を、ATMにする気だな」

 資料を閉じ、襟を整え、マイバッハへ向かう。「子どもを救ったなら――未来を賭場に渡すわけにはいかない。工藤。通達しろ。次の目的地は――“欲望の街”だ」


【次回予告:欲望のルーレット】

「十赌九输?――違う。俺のルールでは、胴元が死ぬ」

 東京をラスベガスに変えようとする国際カジノ財閥。無数の家庭の貯金を呑み込む“パチンコ帝国”。龍立は「確率」と「金融阻撃」で、一切譲歩のない賭けに打って出る。「この国で――運で人命を刈り取ることは、俺が許さない」
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