カナダに追放された財閥の三男が帰国しました:父が「搾取は伝統だ」と言うので、「あらゆる手段」を使ってこの1兆円規模のブラック巨艦を完全ホワイ

RyuChoukan

文字の大きさ
132 / 161

第一百三十二話 数学者たちの戦争

しおりを挟む
 時間:三日後

 場所:澄心グループ・量子計算研究所

 史上最も高額で、そして最も狂気じみた“イカサマ準備”かもしれない。

 研究所の中央には、分解され尽くした金城のパチンコ最上位機が置かれていた。基板も機械構造も、弾珠一つひとつの重量データさえ、すべて露わになっている。

 部屋には、ウォール街のヘッジファンドから高給で引き抜いたトップ級量子数学者が三人。さらにCTOの吉岡俊介が率いる百人規模のハッカーチーム。空気にはコーヒーの匂いと、高負荷の脳労働特有の焦げつく緊張が漂っていた。

「目標:擬似乱数生成器(PRNG)の解読。」

 吉岡は大画面に流れる膨大なコード列を指し、技術者特有の狂熱を滲ませた声で言う。

「金城のアルゴリズムは複雑だ。カオス理論まで入れている。」

「だが澄心の量子計算機の前では、小学生の算数と同じだ。」

「すでに“シード値”の規則性を掴んだ。」

「我々は“神の眼(God’s Eye)”システムを開発した。」

「高速カメラで弾珠の初速を捕捉し、バックエンドの脆弱性と組み合わせる。」

「0.1秒で、必中の発射力度と角度を算出できる。」

 実戦チーム集結――。

 今回、龍立は素人を一人も使わなかった。

 目の前に並んだのは、GIGA eスポーツ戦隊(Team GIGA)のプロ選手20名。黒と白の統一ユニフォーム。全員が『幻星神域』世界ランキング100位以内のトッププレイヤーだった。人間の限界に近い動体視力と、APM(1分間操作数)。指の精密さは外科医に匹敵する。

「これは試合じゃない。」

 龍立は若き王者たちを見つめ、確固たる眼で言う。

「戦争だ。」

「相手は詐欺で金をむしり取る悪党。」

「俺たちは技術で運を叩き潰す。」

「人間の計算が、貪欲なアルゴリズムに勝てることを証明する。」

「勝ち取った金は全額、“反ギャンブル公益基金”を設立するために使う。」

 選手たちは一人ずつ、特製のARコンタクトレンズを装着した。それが“神の眼”の端末だった。

 隊長が指をほぐし、自信満々に笑う。

「社長。データが見えるなら、攻略できないステージはないっす。」

 新宿・金城旗艦店。

 20名の選手は店内へ分散して入った。見た目はただの大学生だ。飲み物を買い、隅の台に座る。

 彼らの視界で、世界はデータの海へ変わった。

 台を見つめれば、ARが赤い補助線を描き、最適な発射点と、ミクロン単位の力加減バーを表示する。

「A組、配置完了。」

「B組、配置完了。」

「狩りを開始。」

 指がわずかに動く。ハンドル角度の誤差は0.01ミリ以下。

 弾珠発射。

 一般人の目には、ただの一発だ。だが“神の眼”の支援下では、弾珠は精密誘導弾のように、障害釘を完璧に避け、反射の死角を利用し、“麒麟眼”と呼ばれる当たり口へ一直線に吸い込まれる。

「ジャララララ――!」

「Jackpot(大当たり)!!」

 一台目が、轟音の当たり音楽を鳴らした。

 続けて二台目、三台目――。

 店内は当たり音の連続で埋め尽くされ、荒唐無稽で狂った交響曲になっていく。それは金城グループへの弔鐘だった。

 機械から吐き出される鋼球が小山となり、皿から溢れ、床へ転がり落ちる。周囲の客は呆然とし、次々に取り囲み、叫ぶ。

「嘘だろ!?あいつら神かよ!?」

「付いて行け!あいつらの後ろに付け!!」

 店員は補給に走り回り、顔は蒼白、汗が滝のように流れる。バックエンドで難易度を調整しようとするが、どれだけ弄っても彼らは当て続けた。まるで未来が見えているかのように。

 店長が絶望しながら本部へ電話する。

「会長!大変です!!怪物が来ました!!」

「台が壊れたみたいに、ずっと金を吐いてます!!」

 戦果――。

 たった一日。

 このeスポーツ軍団は金城傘下の30店舗を蹂躙した。

 現金換金は150億円超。

 さらに致命的だったのは、客が“彼らの後ろで買えば勝てる”と気づき、同調し始めたことだ。金城のキャッシュフローは一夜で取り付け騒ぎのように枯渇し、システムのアルゴリズムロジックは完全に撃ち抜かれた。

「胴元不敗」の神話は、圧倒的技術の前で崩れ去った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...