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第一百三十五話 理性の損切り
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時間:翌日
場所:澄原グループ本社・副社長室
金城龍彦は逮捕された。ライブ配信の証拠が決定打となり、さらに「巨額詐欺」と「マネーロンダリング」の容疑で、IR免許はその場で取り消し。金城グループ株は暴落し、無数の被害者が会社の前で取り立てに押し寄せていた。
澄原グループ最上層では、空気が極限まで重かった。
兄・龍仁は広い執務机の奥に座り、背を入口へ向け、窓外の東京タワーを見つめていた。背中はなお真っ直ぐだが、隠しきれない疲労が滲む。
彼の手には財務報告書。金城の崩壊で、IRカジノ計画は完全に頓挫。海外基金を通じて密かに投入した1000億円の“私房金”は、すべて水泡に帰した。個人金庫の大きな塊だった。この一戦は痛すぎる敗北だ。
扉が開く。龍立が入ってきた。勝者の顔はない。ただ一枚の書類を静かに机へ置く。
「兄貴。これは“損切り”の協議書だ。」
龍仁は振り返り、複雑な目で弟を見る。
「龍立……お前の勝ちだ。」
「金城は馬鹿だった。やり口が汚すぎる。あれじゃ小事すら片づけられん。」
「俺のパートナーになる資格はない。」
少し間を置き、痛みを隠せない声音の奥に、財閥の決断と理性が戻ってくる。
「1000億は……俺が見る目を誤った授業料だ. 認める。」
「澄原家の長男として、その程度の授業料は払える。」
龍仁はペンを取り、その書類を見る――《澄原グループ 博彩事業からの永久撤退声明》。
「兄貴。」龍立は淡々と言う。「実業は遅いが、堅い。」「賭博の金は、来るのも速いが、去るのも速い。」
「知ってるか。」龍仁が不意に弱音を混ぜた。だがすぐ冷硬へ戻す。
「昨日、賭博船では……俺は本気でお前が負けると思った。」
「死ぬのが怖かったんじゃない。株を失うのが怖かった。」
龍仁は鼻で笑い、書類に署名する。ペン先は紙を裂くほど力がこもっていた。そしてペンを机へ叩きつける。「もういい。説教は要らん。この計画は潰れた。広報に処理させる。“グループが自主的に戦略調整し、初心へ回帰”――そう包装する。お前もほどほどにしろ。株価を崩すな。」
龍仁は立ち上がり、窓辺へ歩き、再び背を龍立へ向けた。「出て行け。ひとりで静かにしたい。」
言葉は強硬だが、龍立は分かっていた。兄は暗い敗北を喫し、面子を潰され、および何より――弟がもはや簡単に支配できる相手ではない、と痛感した。
それが龍立の狙いだった。骨を折らず、しかし確実に記憶へ刻む。二度と同じ道を踏ませないために。
場所:澄原グループ本社・副社長室
金城龍彦は逮捕された。ライブ配信の証拠が決定打となり、さらに「巨額詐欺」と「マネーロンダリング」の容疑で、IR免許はその場で取り消し。金城グループ株は暴落し、無数の被害者が会社の前で取り立てに押し寄せていた。
澄原グループ最上層では、空気が極限まで重かった。
兄・龍仁は広い執務机の奥に座り、背を入口へ向け、窓外の東京タワーを見つめていた。背中はなお真っ直ぐだが、隠しきれない疲労が滲む。
彼の手には財務報告書。金城の崩壊で、IRカジノ計画は完全に頓挫。海外基金を通じて密かに投入した1000億円の“私房金”は、すべて水泡に帰した。個人金庫の大きな塊だった。この一戦は痛すぎる敗北だ。
扉が開く。龍立が入ってきた。勝者の顔はない。ただ一枚の書類を静かに机へ置く。
「兄貴。これは“損切り”の協議書だ。」
龍仁は振り返り、複雑な目で弟を見る。
「龍立……お前の勝ちだ。」
「金城は馬鹿だった。やり口が汚すぎる。あれじゃ小事すら片づけられん。」
「俺のパートナーになる資格はない。」
少し間を置き、痛みを隠せない声音の奥に、財閥の決断と理性が戻ってくる。
「1000億は……俺が見る目を誤った授業料だ. 認める。」
「澄原家の長男として、その程度の授業料は払える。」
龍仁はペンを取り、その書類を見る――《澄原グループ 博彩事業からの永久撤退声明》。
「兄貴。」龍立は淡々と言う。「実業は遅いが、堅い。」「賭博の金は、来るのも速いが、去るのも速い。」
「知ってるか。」龍仁が不意に弱音を混ぜた。だがすぐ冷硬へ戻す。
「昨日、賭博船では……俺は本気でお前が負けると思った。」
「死ぬのが怖かったんじゃない。株を失うのが怖かった。」
龍仁は鼻で笑い、書類に署名する。ペン先は紙を裂くほど力がこもっていた。そしてペンを机へ叩きつける。「もういい。説教は要らん。この計画は潰れた。広報に処理させる。“グループが自主的に戦略調整し、初心へ回帰”――そう包装する。お前もほどほどにしろ。株価を崩すな。」
龍仁は立ち上がり、窓辺へ歩き、再び背を龍立へ向けた。「出て行け。ひとりで静かにしたい。」
言葉は強硬だが、龍立は分かっていた。兄は暗い敗北を喫し、面子を潰され、および何より――弟がもはや簡単に支配できる相手ではない、と痛感した。
それが龍立の狙いだった。骨を折らず、しかし確実に記憶へ刻む。二度と同じ道を踏ませないために。
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