カナダに追放された財閥の三男が帰国しました:父が「搾取は伝統だ」と言うので、「あらゆる手段」を使ってこの1兆円規模のブラック巨艦を完全ホワイ

RyuChoukan

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第一百五十五話 シャンパンタワーの崩壊

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ローランドの言葉が終わるや否や、場内は雷鳴のような拍手に包まれた。優は感動で嗚咽し、胸を差し出してでも捧げたいという顔をしている。

その瞬間。

「ジ……」

耳障りな電流音が空気を裂いた。

昂揚する交響曲を流していた音響が、突然ミュートになる。

巨大LEDスクリーンが、瞬時に暗転する。

場内がどよめく。ローランドは眉をひそめ、マイクを叩いた。

「どうした? 音響?」

「おい、聞こえるか?」

「――あの馬鹿ども、全員いるのか?」

スピーカーから声が流れ出した。

ローランドの声だった。

舞台の甘い声ではない。吐き気がするほど下劣で、嘲りと悪意に満ちた声。

生配信ではない。私的な録音だ。

録音①(背景:バックヤードの休憩室)

「ハハハハ! あの葛城優っての、最高級の馬鹿だな。俺が適当に『愛してる』って言っただけで、三千万の闇金借りやがった」

「顔もそろそろ使い潰したし、数日したら東南アジアの地下に投げ込め。あそこは金が早い。死ぬのも早い」

録音②(背景:手下との会話)

「この女どもは豚だ。今回のを屠ったら、来月また新しいのに替える」

「顔が良くて口が甘けりゃ、親の年金も救命金も、勝手に盗んで持ってくる」

録音③(極めて悪辣)

「愛? 冗談言うな。あいつらは呼吸するATMだ」

「毎回あの“深情”の顔を見ると吐きそうになる」

「金が尽きたら、ゴミみたいに処理しろ。俺の店を汚すな」

沈黙。

墓よりも恐ろしい沈黙が、Club VENUSを覆った。

数百の少女の表情が、茫然から、衝撃へ、そして極限の崩壊へ固定されていく。

彼女たちの“神”。優しく、気遣い、彼女だけが“唯一”だと言ってくれた男が、裏では彼女たちを“豚”と呼び、ゴミのように処分すると言っている。

優は床に膝をつき、全身が激しく震えた。歯が唇を噛み切り、血が滲む。爪は絨毯へ深々と食い込み、世界が音を立てて崩れていく。

ローランドの顔は一瞬で蒼白になった。彼は狂ったように音響へ怒鳴る。

「止めろ! 今すぐ止めろ!」

「偽物だ! AIだ! 誰だ、誰がやった!!」

スクリーンが急に点いた。

そこにはローランドと地下組織の“人身取引記録”が、文字として流れている。

【葛城優 残余価値の搾取完了後、金三角へ転送。価格:500万】

崩壊。

「嘘つき……嘘つき!!」

誰かが叫んだ。声は幽鬼のように凄惨だった。

次の瞬間、怒りが火山のように噴き上がる。

負債を背負い、尊厳を売り、家族関係さえ断った少女たちが、完全に理性を失った。

彼女たちは舞台へ雪崩れ込み、復讐の女鬼のようにローランドの高価な燕尾服を引き裂いた。

優が先頭だった。未開封のワインボトルを掴み、全身の力で、虚栄と嘘の象徴であるシャンパンタワーへ叩きつける。

「ガシャァァ――!!!」

五メートルのタワーが轟音とともに倒れた。

無数のガラス片と高価な酒が、赤い血潮のように滝となって降り注ぎ、ローランドを呑み込む。

ローランドは悲鳴を上げ、碎けたガラスの中で転げ回った。誇りだった顔は切り裂かれ、血肉が崩れる。

「やめろ!」

店の用心棒がようやく反応し、警棒を抜いて少女たちへ突っ込もうとする。

「――動くな」

二階の個室で、龍立が立ち上がった。混乱を冷たく見下ろす。

大扉が蹴破られる。

「澄心セキュリティ特勤班(SSG)」が完全装備で突入した。プロの戦術小隊が、場末の用心棒数人に挑むのは、次元の違う暴力だ。十秒もかからず、用心棒は全員床に押さえつけられた。

龍立はゆっくり階段を降りる。革靴が碎けたガラスとシャンパンの海を踏み、ギリギリと嫌な音を立てる。

血塗れのローランドの前へ来て、見下ろした。かつて不可一世の“帝王”だった男。

「人の心で遊ぶのが好きか?」

龍立の声には、温度が一片もない。

「今度は、自分が玩具にした心に噛み返される味を、存分に味わえ」

優は床にへたり込み、散乱する破片を見つめたまま、声を上げて泣いた。

龍立はコートを脱ぎ、彼女の肩に掛ける。

「帰ろう、優」

「爺さんが待ってる」

その一言が、彼女の最後の防壁を折った。

同時に、それは再生の最初の一筋の光になった。

終幕と鉤:深淵の凝視。

警視庁・組織犯罪対策部が現場に入る。ローランドは逮捕された。詐欺と監禁などの重罪が彼を待つ。

優は澄心療養院の心理リハビリセンターへ送られた。

だが、終わらない。

深夜、澄心グループ本部。

劉立がローランドの暗号化された帳簿を洗っていたとき、顔色が変わった。

「龍立、ローランドは倒れた。でも……債務は消えていない」

劉立は画面を指し、指の関節が白くなるほど力が入っている。

「ローランドが逮捕される一分前、これらの少女たちの数億円規模の“ツケ”がシステムで自動的にパッケージ化され、債権が一瞬で暗号化された地下サーバーへ譲渡されている」

その時。

病院にいる優が、ようやく取り戻したスマホの画面が点いた。

督促電話ではない。

暗号化メッセンジャー「Signal」を通して届いた“求人”だった。短い数行。だが息が詰まるほど冷たい。

【債務移転通知。】

【あの三千万を返したいか? 身体はいらない。必要なのは、お前の手だ。】

【任務:荷物受け取り/現金運搬/入室“調査”。】

【高給・日払い・無リスク。やらないなら、店での動画を親に送る。】

【参加グループ:闇バイト(Yami-Baito)。】

【コードネーム:L。】

澄原龍立は、その文面を見た瞬間、眼差しが鉄のように重くなった。

ホストクラブは、この巨大犯罪ネットワークの「入口」に過ぎない。

まず人間を搾り尽くし、巨額の債務を背負わせる。次に、その債務で脅し、普通の人間を犯罪へ追い込み、「使い捨ての駒」にする。

本当の怪物は、ネットの背後に潜み、すべてを操る「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ/Tokuryu)」だ。

「闇バイト、か」

龍立はスマホを机に投げ置いた。宣戦布告の音だった。

「なら、網線の向こうに隠れる連中を、網線ごと手繰って一人ずつ引きずり出す」

「吉岡、信号を追え。劉立、餌を用意しろ」

「次は――見えない“L”を狩る」
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