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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
106.食いしん坊なのは仕様です
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青龍と愛を交わした次の夜も玄武と朱雀が逃がしてくれるわけがなく、結局丸一日香子は神々に抱かれていた。
身も心も蕩かすような快感に香子はいつだってされるがままだ。脳髄まで満たされる甘い”熱”に翻弄され、しまいにはただ喘ぎ揺すぶられるだけになってしまう。
気を失うように意識を飛ばし、なのに目が覚めた時には抱かれていた時の痴態がありありと思い出される。いったいどういうことなのだ。責任者出てこい! と香子は思う。思い出してあまりの羞恥に身悶えるということもつらいのだが、目覚めた後の空腹感がまた殺人的である。特に青龍とはどういうわけか長いので、空腹感もものすごく指先一本動かすことができない。疲労については癒してもらっているが空腹だけはいかんともしがたいようだ。
玄武に抱かれてから胃もたれもしなくなったので朝から春巻を余裕でいただけるようになったのは嬉しいことだが、香子としてはいろいろ物申したい気持ちでいっぱいである。
青龍に抱かれ、目覚めた後の昨夜もこれでもかと食べたのだが、その後玄武と朱雀に抱かれて目覚めた今朝も香子はとんでもない食欲をみせた。
(野菜饅おいしい! 餡儿餅(中国版のおやきのようなもの)おいしい! 春巻サイコー!! コーンスープうまー!)
次々と運ばれてくる料理に舌鼓を打つ。コーンスープは香子の好みでしょっぱいものだ。最初の頃甘いのを飲んで切ない思いをしたことは記憶に新しい。馄饨も出されて香子はご満悦だった。鶏がら醤油ベースのスープに馄饨とのりが入っている。見た目はよくないがこれがおいしい。
(学校の側の建物で一杯一元(一元=約15円)で食べられたなぁ、これ。ああもうなんておいしいんだろう……)
侍女が水餃子を運んできた。もう香子の頭の中は食べることしかない。それを玄武と朱雀が微笑ましく見つめている。
『香子を見ていると何を食べてもうまく感じられる』
『玄武兄の言うとおりです』
食いしん坊だと言われている気がしたが香子は無視した。中華料理が好きだったのは幸いだった。もうなんというか何を食べてもおいしい。
おかげで満足した頃には、香子は自分が何に憤っていたのか忘れてしまった。
(ま、いっか)
いつまでも怒っていてもつまらない。
遅めの朝食を終え、玄武の腕に抱かれて部屋に戻ると女官である延夕玲に声をかけられた。
『花嫁さま、贈物が届いているそうですが如何なさいますか?』
『謁見の間に持ってきて。すぐに向かうわ。今日は……玄武さまと白虎さまが一緒だと嬉しいです』
前半は夕玲に言い、後半は己を抱き上げている玄武を見ながら言った。春の大祭では朱雀、青龍と共に過ごすことになる。まだ一週間以上も先のことではあるが香子なりに考えていた。そしてそんな香子の気遣いに玄武は笑みを浮かべた。
『そうか。白虎にも伝えよう』
そう言って玄武はしばし虚空を見る。きっと念話で白虎に伝えてくれたのだろう。四神は離れていても意志の疎通が可能だが香子とは身体の一部が触れていないと無理だという。
(神さまの花嫁ではあるけど神さまじゃないもんねー)
香子としてはそんな認識でいるが、はっきり言葉としては聞こえないものの四神は香子の感情の動きに敏感ではある。それは香子がたまに部屋で一人になった時もそうで、絶妙なタイミングで玄武が来てくれた時はたまらなかった。香子は玄武の腕の中で彼に擦り寄った。
『香子、そなたがたまらなく愛しい』
『っっっっ!!』
耳元で色を含んだバリトンは禁止にしたい。そう切実に。
香子は真っ赤になって俯いた。ちら、と周りを見ると夕玲が少し顔をそらしている。部屋付の侍女たち(紅児含む)の顔は真っ赤で、今にも崩れ落ちそうだった。
(ぎゃーーー!! 穴! 穴はどこですかーーー!!)
ここに来てからもう何度穴に埋まりたいと思ったことか。いたたまれずどうしようかと思った時部屋の表から声がかかった。
『花嫁さま、玄武さま。謁見の間の準備が整ったそうです』
『は、ははははい!』
ここに来てからもう3ヶ月以上が経つが未だに四神に慣れない。
(1年もあっというまな気がする……)
先が思いやられると考えながら香子は玄武に抱かれたまま謁見の間へ移動した。
朝食と昼食の間はあまりない。けれどいつも通り食べられてしまうのが香子は不思議だった。
(やっぱり抱かれてるからかなー?)
そんなことを思いながら昼食もおいしくいただいた。
その日の午後は白虎の室で玄武と白虎と共に過ごした。特に何をするでもないが、今回の贈物が載っている目録を見ながら知らない単語を覚えるのが香子は楽しかった。そんな風に穏やかに過ごしていると、珍しく四神宮主官の趙文英から連絡があった。
『三年前の記録が見つかった?』
今は部屋付の侍女として働いている紅児の父親の件だった。紅児の父親は貿易商で、彼女曰く父は王さまと謁見したと言っていたらしい。皇帝に拝謁していたなら記録が残っているはずだ。香子が調べるよう王英明に言いつけたのがつい二、三週間前である。
(一ヶ月で調べろって言ったんだっけ)
さすがに四神宮まで記録簿は運んでこれないと言われたが、「エンリークァ・グーテンバーグ」という名が確かに載っていたという。間違いがないか改めて確認するように指示し、確かならば明日にでも紅児に伝えることにした。
そうして翌日、王英明の口から紅児にそのことを伝えさせると彼女は泣きそうな顔をした。更に行方不明者に対しての捜索願がセレスト王国から出されていないかということを調べさせるよう言った後、香子は白虎にお持ち帰りされた。
趙も王もこの国の官吏で香子に対してひとかけらも懸想はしていないだろうに、人間の男と香子が口を利くのを四神は本当に嫌がる。
(エリーザと少し話がしたかったけど、まいっか……)
まだ白虎には抱かれていない。まだこのままでいたいと思ってしまうのは香子のわがままかもしれないが、さすがに虎に抱かれるのには多大な勇気が必要だと彼女は内心ため息をついた。
───
「貴方色に染まる」24話と連動しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/977111291/934161364
身も心も蕩かすような快感に香子はいつだってされるがままだ。脳髄まで満たされる甘い”熱”に翻弄され、しまいにはただ喘ぎ揺すぶられるだけになってしまう。
気を失うように意識を飛ばし、なのに目が覚めた時には抱かれていた時の痴態がありありと思い出される。いったいどういうことなのだ。責任者出てこい! と香子は思う。思い出してあまりの羞恥に身悶えるということもつらいのだが、目覚めた後の空腹感がまた殺人的である。特に青龍とはどういうわけか長いので、空腹感もものすごく指先一本動かすことができない。疲労については癒してもらっているが空腹だけはいかんともしがたいようだ。
玄武に抱かれてから胃もたれもしなくなったので朝から春巻を余裕でいただけるようになったのは嬉しいことだが、香子としてはいろいろ物申したい気持ちでいっぱいである。
青龍に抱かれ、目覚めた後の昨夜もこれでもかと食べたのだが、その後玄武と朱雀に抱かれて目覚めた今朝も香子はとんでもない食欲をみせた。
(野菜饅おいしい! 餡儿餅(中国版のおやきのようなもの)おいしい! 春巻サイコー!! コーンスープうまー!)
次々と運ばれてくる料理に舌鼓を打つ。コーンスープは香子の好みでしょっぱいものだ。最初の頃甘いのを飲んで切ない思いをしたことは記憶に新しい。馄饨も出されて香子はご満悦だった。鶏がら醤油ベースのスープに馄饨とのりが入っている。見た目はよくないがこれがおいしい。
(学校の側の建物で一杯一元(一元=約15円)で食べられたなぁ、これ。ああもうなんておいしいんだろう……)
侍女が水餃子を運んできた。もう香子の頭の中は食べることしかない。それを玄武と朱雀が微笑ましく見つめている。
『香子を見ていると何を食べてもうまく感じられる』
『玄武兄の言うとおりです』
食いしん坊だと言われている気がしたが香子は無視した。中華料理が好きだったのは幸いだった。もうなんというか何を食べてもおいしい。
おかげで満足した頃には、香子は自分が何に憤っていたのか忘れてしまった。
(ま、いっか)
いつまでも怒っていてもつまらない。
遅めの朝食を終え、玄武の腕に抱かれて部屋に戻ると女官である延夕玲に声をかけられた。
『花嫁さま、贈物が届いているそうですが如何なさいますか?』
『謁見の間に持ってきて。すぐに向かうわ。今日は……玄武さまと白虎さまが一緒だと嬉しいです』
前半は夕玲に言い、後半は己を抱き上げている玄武を見ながら言った。春の大祭では朱雀、青龍と共に過ごすことになる。まだ一週間以上も先のことではあるが香子なりに考えていた。そしてそんな香子の気遣いに玄武は笑みを浮かべた。
『そうか。白虎にも伝えよう』
そう言って玄武はしばし虚空を見る。きっと念話で白虎に伝えてくれたのだろう。四神は離れていても意志の疎通が可能だが香子とは身体の一部が触れていないと無理だという。
(神さまの花嫁ではあるけど神さまじゃないもんねー)
香子としてはそんな認識でいるが、はっきり言葉としては聞こえないものの四神は香子の感情の動きに敏感ではある。それは香子がたまに部屋で一人になった時もそうで、絶妙なタイミングで玄武が来てくれた時はたまらなかった。香子は玄武の腕の中で彼に擦り寄った。
『香子、そなたがたまらなく愛しい』
『っっっっ!!』
耳元で色を含んだバリトンは禁止にしたい。そう切実に。
香子は真っ赤になって俯いた。ちら、と周りを見ると夕玲が少し顔をそらしている。部屋付の侍女たち(紅児含む)の顔は真っ赤で、今にも崩れ落ちそうだった。
(ぎゃーーー!! 穴! 穴はどこですかーーー!!)
ここに来てからもう何度穴に埋まりたいと思ったことか。いたたまれずどうしようかと思った時部屋の表から声がかかった。
『花嫁さま、玄武さま。謁見の間の準備が整ったそうです』
『は、ははははい!』
ここに来てからもう3ヶ月以上が経つが未だに四神に慣れない。
(1年もあっというまな気がする……)
先が思いやられると考えながら香子は玄武に抱かれたまま謁見の間へ移動した。
朝食と昼食の間はあまりない。けれどいつも通り食べられてしまうのが香子は不思議だった。
(やっぱり抱かれてるからかなー?)
そんなことを思いながら昼食もおいしくいただいた。
その日の午後は白虎の室で玄武と白虎と共に過ごした。特に何をするでもないが、今回の贈物が載っている目録を見ながら知らない単語を覚えるのが香子は楽しかった。そんな風に穏やかに過ごしていると、珍しく四神宮主官の趙文英から連絡があった。
『三年前の記録が見つかった?』
今は部屋付の侍女として働いている紅児の父親の件だった。紅児の父親は貿易商で、彼女曰く父は王さまと謁見したと言っていたらしい。皇帝に拝謁していたなら記録が残っているはずだ。香子が調べるよう王英明に言いつけたのがつい二、三週間前である。
(一ヶ月で調べろって言ったんだっけ)
さすがに四神宮まで記録簿は運んでこれないと言われたが、「エンリークァ・グーテンバーグ」という名が確かに載っていたという。間違いがないか改めて確認するように指示し、確かならば明日にでも紅児に伝えることにした。
そうして翌日、王英明の口から紅児にそのことを伝えさせると彼女は泣きそうな顔をした。更に行方不明者に対しての捜索願がセレスト王国から出されていないかということを調べさせるよう言った後、香子は白虎にお持ち帰りされた。
趙も王もこの国の官吏で香子に対してひとかけらも懸想はしていないだろうに、人間の男と香子が口を利くのを四神は本当に嫌がる。
(エリーザと少し話がしたかったけど、まいっか……)
まだ白虎には抱かれていない。まだこのままでいたいと思ってしまうのは香子のわがままかもしれないが、さすがに虎に抱かれるのには多大な勇気が必要だと彼女は内心ため息をついた。
───
「貴方色に染まる」24話と連動しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/977111291/934161364
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