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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
110.異世界では突拍子もないことが起こります
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輿にかけられた薄絹を払い、青龍は危なげなく香子を抱いて天壇の敷地内に下りた。
はしたないとは思ったが好奇心に勝てず、香子はきょろきょろと辺りを見回した。
香子は元の世界にある天壇公園には一度しか行ったことがない。ただ天壇の由来等については少し調べたことがあった。
(今日は祈念殿で祭祀を行うって聞いたけど、祈念殿での祭祀は確か春節にするものじゃないのかな?)
今更ながら疑問が浮かぶ。
基本は天に五穀豊穣を祈るらしいが、四神に対し国の繁栄を祈るという意味合いもある。すでに千年以上も歴史のある唐王朝だが、更なる繁栄を求めるのは人の常だろう。日本の天皇制のことをふと香子は思い出したが、全然違うので軽く頭を振って追い出した。
『香子、如何した』
横合いから朱雀の声がかかる。こうしていつも気にかけてくれるのは嬉しいと香子は思う。
『なんでもないです』
北天門から入った辺りの場所というのはあまり広くない。なので香子たちが乗ってきた輿と仕える者たち、近衛兵以外は門側に移動したようだった。南の方から神官たちと思しき集団がしずしずとやってくるのが見えた。以前神官を見た時も思ったがみな道袍と呼べるような衣裳を纏っている。全員頭を垂れながらやってくるので顔は見えないが、一番手前にいる神官には見覚えがあった。
(あ……老師……?)
香子は思わず声を上げそうになったが寸前で飲み込んだ。三、四歩(一歩=1.6m)ほど手前で神官が足を止める。
『孟章神君、陵光神君並びに白香娘娘、ようこそおいでくださいました』
黒の冠、黒を基調とした道袍のような衣裳を着た神官がおごそかに拝す。銀にも見える白髪に真っ白な長い髭を蓄えたその神官は張錦飛だった。そういえば最後に会った時意味深なことを言っていたのを香子は思い出した。
『……面白いことをする』
朱雀が口元をクッと上げた。張は柔和な笑みを浮かべる。
『お褒めに預かり光栄です。ここからは私ども神官が祈念殿までご案内いたします』
『面倒な儀礼はいらぬ。案内せよ』
『承知しました』
張の後に青龍と香子、朱雀、黒月、延夕玲、青藍、神官たちが続く。まっすぐ祈念殿に向かうらしく、張は南のつきあたりから東西に分かれる道で西に折れた。道は曲がっており、途中からまっすぐになった道は南に向かう。
更に西側には庭園があったなと香子は思い出した。確か夏の暑い日に来たような気がする。だからあまり見ないで帰ってしまったのだ。
(少し見て回るのは……無理かな?)
とりあえず祭祀が済んだ後聞いてみようと香子は思う。
張の歩みは気になるほど遅いわけではなかったが、それでも多少時間はかかる。次のつきあたりで張は東に折れた。また少し行くと北へ向かう広い道が現れた。
『こちらへ』
促されて青龍(と香子)と朱雀が先に進む。少し先に門があり、その先に天壇で有名な祈念殿の宝頂が少し見えるようだった。門に近づくにつれて宝頂は見えなくなる。門には三箇所入口があったが、その真ん中の門が開かれた。
(えー……この門って皇帝が通る場所じゃあ……)
四神が皇帝に仕えているかと問われれば否なので、冷汗を流しながらも香子は考えないことにした。門を入ればまた建物があり、そこを抜けると目の前に、紺色の瑠璃瓦に金色の宝頂を持つ円形の殿堂-祈念殿が現れた。それは三層の大理石でできた基壇上に聳え立っており、こんなに素晴らしい建物だったかと香子はぽかんと口を開けた。
『花嫁様はこちらへ。着替えをお願いいたします』
『あ、はい……』
青龍に抱かれたまま西側にある祭天禮儀館に促された。
(ってここ、皇帝が準備する場所では!?)
かといって東側の建物は儀式に必要なものが納められているはずだしで、冷汗が止まらない。こんなことならもっと手前で着替えをしてきた方がよかったのではないかと思ったが、それを口に出すことはできなかった。
室に入り延夕玲と黒月に手伝ってもらって黒をベースとした衣裳に着替える。どうやって織ったのか青龍と朱雀が描かれていてなんとも見事であった。
室を出ると朱雀に抱き上げられる。そのまま祈念殿の前にある広場の真ん中に連れて行かれた。そこでは青龍が先に待っており、何故か神官たちは門や両側の建物の方に控えていた。青藍も同様で、黒月、延夕玲も中心を避けるように端にいる。
『朱雀様?』
『しばし待て』
朱雀が天を仰ぐ。
雲一つない青空だった。青龍もまたまっすぐに立ち、天を仰ぐ。
すると。
『えええええ!?』
『しっかり掴まれ』
なんということだろう。青龍の姿がぼやけたかと思うと天に昇り、それは一頭の巨大な緑色の龍となった。そして朱雀もまた香子を抱いたまま天に昇り、一羽の巨大で真っ赤な鳥に変化したのである。
『うそーーーーっっっ!?』
香子の叫びが天壇にこだました。
ーーーーー
孟章神君 青龍
陵光神君 朱雀
白香娘娘 香子
「貴方色に染まる」27話辺りです。一方その頃あちらでは、というかんじです。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/977111291/934161364
張錦飛が何やら言っていたことについては103話を参照してください。
はしたないとは思ったが好奇心に勝てず、香子はきょろきょろと辺りを見回した。
香子は元の世界にある天壇公園には一度しか行ったことがない。ただ天壇の由来等については少し調べたことがあった。
(今日は祈念殿で祭祀を行うって聞いたけど、祈念殿での祭祀は確か春節にするものじゃないのかな?)
今更ながら疑問が浮かぶ。
基本は天に五穀豊穣を祈るらしいが、四神に対し国の繁栄を祈るという意味合いもある。すでに千年以上も歴史のある唐王朝だが、更なる繁栄を求めるのは人の常だろう。日本の天皇制のことをふと香子は思い出したが、全然違うので軽く頭を振って追い出した。
『香子、如何した』
横合いから朱雀の声がかかる。こうしていつも気にかけてくれるのは嬉しいと香子は思う。
『なんでもないです』
北天門から入った辺りの場所というのはあまり広くない。なので香子たちが乗ってきた輿と仕える者たち、近衛兵以外は門側に移動したようだった。南の方から神官たちと思しき集団がしずしずとやってくるのが見えた。以前神官を見た時も思ったがみな道袍と呼べるような衣裳を纏っている。全員頭を垂れながらやってくるので顔は見えないが、一番手前にいる神官には見覚えがあった。
(あ……老師……?)
香子は思わず声を上げそうになったが寸前で飲み込んだ。三、四歩(一歩=1.6m)ほど手前で神官が足を止める。
『孟章神君、陵光神君並びに白香娘娘、ようこそおいでくださいました』
黒の冠、黒を基調とした道袍のような衣裳を着た神官がおごそかに拝す。銀にも見える白髪に真っ白な長い髭を蓄えたその神官は張錦飛だった。そういえば最後に会った時意味深なことを言っていたのを香子は思い出した。
『……面白いことをする』
朱雀が口元をクッと上げた。張は柔和な笑みを浮かべる。
『お褒めに預かり光栄です。ここからは私ども神官が祈念殿までご案内いたします』
『面倒な儀礼はいらぬ。案内せよ』
『承知しました』
張の後に青龍と香子、朱雀、黒月、延夕玲、青藍、神官たちが続く。まっすぐ祈念殿に向かうらしく、張は南のつきあたりから東西に分かれる道で西に折れた。道は曲がっており、途中からまっすぐになった道は南に向かう。
更に西側には庭園があったなと香子は思い出した。確か夏の暑い日に来たような気がする。だからあまり見ないで帰ってしまったのだ。
(少し見て回るのは……無理かな?)
とりあえず祭祀が済んだ後聞いてみようと香子は思う。
張の歩みは気になるほど遅いわけではなかったが、それでも多少時間はかかる。次のつきあたりで張は東に折れた。また少し行くと北へ向かう広い道が現れた。
『こちらへ』
促されて青龍(と香子)と朱雀が先に進む。少し先に門があり、その先に天壇で有名な祈念殿の宝頂が少し見えるようだった。門に近づくにつれて宝頂は見えなくなる。門には三箇所入口があったが、その真ん中の門が開かれた。
(えー……この門って皇帝が通る場所じゃあ……)
四神が皇帝に仕えているかと問われれば否なので、冷汗を流しながらも香子は考えないことにした。門を入ればまた建物があり、そこを抜けると目の前に、紺色の瑠璃瓦に金色の宝頂を持つ円形の殿堂-祈念殿が現れた。それは三層の大理石でできた基壇上に聳え立っており、こんなに素晴らしい建物だったかと香子はぽかんと口を開けた。
『花嫁様はこちらへ。着替えをお願いいたします』
『あ、はい……』
青龍に抱かれたまま西側にある祭天禮儀館に促された。
(ってここ、皇帝が準備する場所では!?)
かといって東側の建物は儀式に必要なものが納められているはずだしで、冷汗が止まらない。こんなことならもっと手前で着替えをしてきた方がよかったのではないかと思ったが、それを口に出すことはできなかった。
室に入り延夕玲と黒月に手伝ってもらって黒をベースとした衣裳に着替える。どうやって織ったのか青龍と朱雀が描かれていてなんとも見事であった。
室を出ると朱雀に抱き上げられる。そのまま祈念殿の前にある広場の真ん中に連れて行かれた。そこでは青龍が先に待っており、何故か神官たちは門や両側の建物の方に控えていた。青藍も同様で、黒月、延夕玲も中心を避けるように端にいる。
『朱雀様?』
『しばし待て』
朱雀が天を仰ぐ。
雲一つない青空だった。青龍もまたまっすぐに立ち、天を仰ぐ。
すると。
『えええええ!?』
『しっかり掴まれ』
なんということだろう。青龍の姿がぼやけたかと思うと天に昇り、それは一頭の巨大な緑色の龍となった。そして朱雀もまた香子を抱いたまま天に昇り、一羽の巨大で真っ赤な鳥に変化したのである。
『うそーーーーっっっ!?』
香子の叫びが天壇にこだました。
ーーーーー
孟章神君 青龍
陵光神君 朱雀
白香娘娘 香子
「貴方色に染まる」27話辺りです。一方その頃あちらでは、というかんじです。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/977111291/934161364
張錦飛が何やら言っていたことについては103話を参照してください。
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