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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
114.やっと四神宮に戻ってきました
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皇帝は何やら話をしたさそうな様子を見せたが香子はひどく疲れていた。そんなものは後日にしてほしい。祭祀のことならば神官に尋ねればいいだけのことである。
『夕玲、これからの予定は?』
『恐れながら申し上げます。酉の刻(夕方5時以降)より晩餐会に出席していただくことになっております』
『そう……。朱雀さま、部屋に戻りたいです』
『わかった』
『馬車で移動しましょうね』
『……ふむ。わかった』
さすがにこれだけ人の目がある場所で瞬間移動させるわけにはいかない。前門の内側とはいえ兵もいるのだ。
『それでは失礼します』
『……ああ、ではのちほど』
皇帝の視線に気づかないフリをしてその場を辞する。正直前門から王城まではとても遠い。輿に乗るのは論外だ。四神の気が短いということもあり、午門までは馬車で移動することを認めさせていた。その後は王城の目立たないところまで進み、瞬間移動をしてもらうことにした。広いが故の面倒である。
『……遅れて参加するのはダメなのかしら』
馬車の中でぼやくと延夕玲が冷たい目をした。
『いいですか。花嫁さまがみなさまの前に正式に顔を出されるのは今夜までです。それがどういうことかおわかりですか?』
『……はーい』
『参加などせずともよかろう』
『朱雀さまは黙っていてください!』
神さまからすれば些細なことだが今は王城に滞在しているのだから気ままに過ごすというわけにもいかない。
『言いたかっただけだから……』
『花嫁さまの言は四神の意向をも左右します。重々気をつけて発言なさってください』
『……はーい』
夕玲の言っていることは正しい。ただ四神は基本面倒くさがりだ。香子が行きたくないと言えばこれ幸いと行かないだろう。香子は少し釈然としないものを感じた。
王城に入ったら瞬間移動してもらおうかと思っていたが気が変わった。香子は朱雀の胸に頭を摺り寄せた。
『四神宮まで歩いていただいてもいいですか?』
『かまわぬ』
そう答える朱雀はなんだか少し嬉しそうだった。
王城は元の世界で言うところの故宮(紫禁城)である。唐の都なのだから長安の宮殿とやらも見てみたかったなと香子は思ったが、この世界では約1400年も続いている王朝である。遷都しなければならない理由があったのだろう。ただこういうことは基本皇帝の一声で決まったりもする。
(あ、でも……)
四神の力も関係しているのかもしれない。以前聞いたかもしれなかったが香子はあまりよく覚えていなかった。
西洋の城のように上へ上へと高く作られているわけではなく王城は基本平屋建てだ。王城内を移動する際は主に屋根のある外廊下を通る。その柱にも天井にも絵が描かれていたり彫刻がされていたりと見事なので、香子はそれらを朱雀の腕の中からぼうっと眺めながら四神宮に戻った。
自分が思っていたよりはるかに疲れていたらしい。四神宮の外にある謁見室を認めると、香子はひどくほっとした。
朱雀はそんな香子の様子を感じ取っていたのか、まっすぐ部屋に香子を送ってくれた。長椅子に下ろされ、香子はぐったりとその背もたれにもたれかかった。
『しばし休むといい』
『朱雀さま、ありがとうございます……』
瞼に口付けを受けて長椅子に座ったまま朱雀を見送る。こういうちょっとした気遣いがとても嬉しい。
(ほだされてるなぁ……)
好きだな、と香子はぼんやり思う。侍女がお茶を淹れてくれた。
『ありがとう……』
蓋碗でなかったのは幸いだった。茶壷から淹れてくれたので茶葉を避ける必要がない。思ったよりも動かない手で茶碗を持ち薄緑色のお茶を啜る。
(緑茶だ……碧螺春かな……)
まろやかな味わいが喉を潤す。
『やっぱりお茶はいいわね……』
心情としては何杯でも飲みたかったが、一杯を飲み干すのが精一杯だった。
『少し休むわ……』
黒月に青龍のことを聞かれたが何も聞いていないからいつも通り気まぐれにくるのだろう。夕玲は香子の体調が心配なようだった。けれどさすがに寝ていれば青龍も手を出してはこないはずだ。というか四神は香子に対して無体なことはしない。
(夜は……別に本当の意味で嫌なわけじゃないし……)
抱かれていれば余計なことを考えなくて済む。現実逃避をしているわけではないが、一人で考えすぎてもよいことはない。それだけでなく愛されるのはとても心地いい。
(さすがに言えないけど)
寝台に転がりながらそんなことを思う。少しして、思った通り青龍が現れた。
香子は寝台の上で笑みを浮かべ、青龍に両手を伸ばした。
ーーーーー
注:暗くなる直前に晩餐会は開始されるので正確には酉の正刻以降ですが、準備などもあるので延夕玲は早めの時間を伝えています。
「貴方色に染まる」30話辺りです。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/977111291/934161364
『夕玲、これからの予定は?』
『恐れながら申し上げます。酉の刻(夕方5時以降)より晩餐会に出席していただくことになっております』
『そう……。朱雀さま、部屋に戻りたいです』
『わかった』
『馬車で移動しましょうね』
『……ふむ。わかった』
さすがにこれだけ人の目がある場所で瞬間移動させるわけにはいかない。前門の内側とはいえ兵もいるのだ。
『それでは失礼します』
『……ああ、ではのちほど』
皇帝の視線に気づかないフリをしてその場を辞する。正直前門から王城まではとても遠い。輿に乗るのは論外だ。四神の気が短いということもあり、午門までは馬車で移動することを認めさせていた。その後は王城の目立たないところまで進み、瞬間移動をしてもらうことにした。広いが故の面倒である。
『……遅れて参加するのはダメなのかしら』
馬車の中でぼやくと延夕玲が冷たい目をした。
『いいですか。花嫁さまがみなさまの前に正式に顔を出されるのは今夜までです。それがどういうことかおわかりですか?』
『……はーい』
『参加などせずともよかろう』
『朱雀さまは黙っていてください!』
神さまからすれば些細なことだが今は王城に滞在しているのだから気ままに過ごすというわけにもいかない。
『言いたかっただけだから……』
『花嫁さまの言は四神の意向をも左右します。重々気をつけて発言なさってください』
『……はーい』
夕玲の言っていることは正しい。ただ四神は基本面倒くさがりだ。香子が行きたくないと言えばこれ幸いと行かないだろう。香子は少し釈然としないものを感じた。
王城に入ったら瞬間移動してもらおうかと思っていたが気が変わった。香子は朱雀の胸に頭を摺り寄せた。
『四神宮まで歩いていただいてもいいですか?』
『かまわぬ』
そう答える朱雀はなんだか少し嬉しそうだった。
王城は元の世界で言うところの故宮(紫禁城)である。唐の都なのだから長安の宮殿とやらも見てみたかったなと香子は思ったが、この世界では約1400年も続いている王朝である。遷都しなければならない理由があったのだろう。ただこういうことは基本皇帝の一声で決まったりもする。
(あ、でも……)
四神の力も関係しているのかもしれない。以前聞いたかもしれなかったが香子はあまりよく覚えていなかった。
西洋の城のように上へ上へと高く作られているわけではなく王城は基本平屋建てだ。王城内を移動する際は主に屋根のある外廊下を通る。その柱にも天井にも絵が描かれていたり彫刻がされていたりと見事なので、香子はそれらを朱雀の腕の中からぼうっと眺めながら四神宮に戻った。
自分が思っていたよりはるかに疲れていたらしい。四神宮の外にある謁見室を認めると、香子はひどくほっとした。
朱雀はそんな香子の様子を感じ取っていたのか、まっすぐ部屋に香子を送ってくれた。長椅子に下ろされ、香子はぐったりとその背もたれにもたれかかった。
『しばし休むといい』
『朱雀さま、ありがとうございます……』
瞼に口付けを受けて長椅子に座ったまま朱雀を見送る。こういうちょっとした気遣いがとても嬉しい。
(ほだされてるなぁ……)
好きだな、と香子はぼんやり思う。侍女がお茶を淹れてくれた。
『ありがとう……』
蓋碗でなかったのは幸いだった。茶壷から淹れてくれたので茶葉を避ける必要がない。思ったよりも動かない手で茶碗を持ち薄緑色のお茶を啜る。
(緑茶だ……碧螺春かな……)
まろやかな味わいが喉を潤す。
『やっぱりお茶はいいわね……』
心情としては何杯でも飲みたかったが、一杯を飲み干すのが精一杯だった。
『少し休むわ……』
黒月に青龍のことを聞かれたが何も聞いていないからいつも通り気まぐれにくるのだろう。夕玲は香子の体調が心配なようだった。けれどさすがに寝ていれば青龍も手を出してはこないはずだ。というか四神は香子に対して無体なことはしない。
(夜は……別に本当の意味で嫌なわけじゃないし……)
抱かれていれば余計なことを考えなくて済む。現実逃避をしているわけではないが、一人で考えすぎてもよいことはない。それだけでなく愛されるのはとても心地いい。
(さすがに言えないけど)
寝台に転がりながらそんなことを思う。少しして、思った通り青龍が現れた。
香子は寝台の上で笑みを浮かべ、青龍に両手を伸ばした。
ーーーーー
注:暗くなる直前に晩餐会は開始されるので正確には酉の正刻以降ですが、準備などもあるので延夕玲は早めの時間を伝えています。
「貴方色に染まる」30話辺りです。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/977111291/934161364
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