異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
278 / 653
第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました

124.おせっかいも時には必要です

しおりを挟む
 翌朝、太陽が昇る前に紅児は紅夏と共に王城を出発した。


 夜のうちに、香子は玄武と朱雀に翌朝は早く起きたいと希望を伝えていた。紅児が出て行った頃には起きていたい。紅児の身が心配なのだと訴えた。

『そこまでそなたが気にする必要もあるまい』

 つまらなそうに朱雀が言う。玄武も同意しているようだったが、紅児は未成年である。

『紅夏が手を出したらたいへんです。エリーザは他の大陸からきたお嬢さんなんですよ』

 玄武と朱雀は顔を見合わせた。少しばかり思うところはあったようだった。

『ふむ』

 今までの四神との会話の内容から総合すると、他の大陸には他の神が住んでいるはずである。セレスト王国のあるセレスティアル大陸にどんな神がいるのか香子は知らない。けれど他の大陸出身の者にこちらの大陸の神の眷属が手を出すのは問題ではないかと思うのだ。

『だがな。香子シャンズ、相思相愛なればよいのではないのか?』

 朱雀が言う。

『まだ相思相愛じゃないから言っているんですよ。そりゃあエリーザが身も心も紅夏に捧げますというぐらい紅夏を愛しているのなら、こちらとしても言うことはありません。ただ彼女はまだ未成年ですし、紅夏に惚れたとしても勘違いの可能性もあります。そういう部分は大人が注意してあげないといけません』
『……成人しているか、未成年であるかは我らにとってさほど問題にはならぬが、心のありようが未熟というのは同意しよう。……だが、そなたが誰かのことを思うのはな……』

 朱雀の色を含んだ流し目に香子はくらくらしてきた。

(やばい、この目はやヴぁいい……)
『明日の夜は……その……』

 自分から誘うようなことはできないが、四神の嫉妬は厄介なのだ。香子は頬を染めながら朱雀と玄武の袍の袖をそっと引いた。玄武が満足そうに笑んだ。

『かわいいことをする』
『今宵は手加減してやろう。起こしてもやる。だが明日の夜は……』
『は、はい……』

 薄絹の睡衣の中に朱雀が顔を落とす。後はもう、香子はただその身を玄武と朱雀に捧げることしかできなかった。


(今夜が怖すぎる……)

 毎晩どろどろに愛されるのは変わらないが、確かに昨夜は多少手加減してくれたのがわかった。香子の目覚めは相変わらずすっきりで、すごくおなかがすいているのもいつも通りだ。紅児が出かけたという報告を聞きながら早めの朝食に舌鼓を打つ。夜が明ける前に仕事をさせてしまうのは申し訳ないが、香子は紅児が心配でならなかった。
 紅児は今日一日休みである。香子は四神の今までの行動から、紅夏が暴走するのではないかと予想していた。
 養父が秦皇島の村に帰ることで紅児はナーバスになっている。その心の隙をつく、というと聞こえは悪いが、この機会を紅夏が逃すとは思えなかった。
 案の定、紅夏は戻ってきたと同時に自分の室へ紅児を連れ込んだらしい。

『朱雀さま! 何がなんでも止めますよ!』
『承知した』

 朱雀を足として紅夏の室に急行する。

 ダンダンダンッッ!! ダンダンダンッッ!! ダンダンダンダンダンダンダンッッ!!

 三三七拍子じゃないんだぞ、と自分にツッコミを入れながら扉を壊さんばかりに叩く。

『紅夏!! 開けなさい!! そこにエリーザがいるのはわかっているのよっっ!! あーけーなーさーいっっ!!』

 周囲の迷惑など知ったことではない。香子は必死だった。
 少し間を置いて、扉の向こうから不機嫌そうな声がした。

『どうなされました』

 平静を装ってはいるが、香子からすればバレバレである。

『紅夏、エリーザを出しなさい。語らいなら部屋でなくてもできるはずよ。……それとも、既成事実でも作ろうとしたのかしら?』

 紅夏の返しは予想だにしないものだった。

『そうですね。それで紅児が私に嫁いでくるならそうしましょう』
『開き直った!』

 愕然とした。ありえない、と香子は思う。やはり二人きりにするのは危険だ。
 紅児が何か言ったのか、紅夏はしぶしぶ扉を開けた。紅児は恥ずかしそうに、頬をほんのりと染めていた。
 のちほどお茶をする約束を取り付け、香子はやっと一息つくことができた。


 四神宮の庭で、香子は朱雀の腕に抱かれたまま紅児を待っていた。
 紅夏に伴われてやってきた紅児は、薄桃色の衣装を身に着けていた。何もしてないだろうな、と香子は紅夏を睨む。紅夏はどこ吹く風だ。
 気を取り直して、香子は昨日セレスト王国の貿易商に会ったことと、問い合わせに対する書状を渡したということを紅児に伝えた。紅児は信じられないというような顔をしながら、一つ一つ香子に質問した。それに丁寧に答え、半年以内には返事がくるはずだと納得させた。
 本題はもう一つある。
 香子は紅夏に、紅児が15歳になるまでは手を出すなと命令した。紅夏は不満を隠しもしなかったが、香子は引き下がるわけにはいかなかった。
 性交渉は許さんとは言ったが二人が付き合うのまでは制限するつもりはないということを伝えると、紅夏はしぶしぶながらも了承した。

『花嫁様のお心づかい、感謝いたします』

 全くそんなことは思っていないだろう。紅夏が礼をとると朱雀がククッと笑った。

『まぁせいぜいあがくといい』

 それには紅夏が冷たい目で応戦する。

『ひとのことを言える立場ですか』
(あ、飛び火した)

 香子は俯いた。

『ふむ、それもそうだな。ではせいぜい我もがんばるとしよう』

 何故そこで同意するのだろうか。朱雀は香子を抱いたまま席を立つ。己の室に連れ込むつもりだろう。香子は慌てた。

『朱雀様! これ以上がんばらなくていいですから!』
『何を言う。ただでさえ昼間は遅れをとっているのだ。これまで以上にがんばらねばな』
『朱雀様の愛はちゃんと届いてますーー!!』

 言っても無駄だということはわかっているが足掻かずにはいられない。紅夏がほくそ笑んでいるのを横目でとらえる。

『紅夏!! 覚えてなさいよ!!』

 あ、これ負け負けの悪役のセリフだと思いながら、香子は叫ばずにはいられなかった。



ーーーー
「貴方色に染まる」39~41話辺りです。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/977111291/934161364
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

処理中です...