異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました

125.学びたいことがたくさんあります

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 やっと大祭の後始末があらかた終わったらしい。翌日、張錦飛がまた来られるようになったと香子は連絡を受けた。都合のいい時に声をかけてくれとのことである。
 ここのところ香子は紅児のことが心配で書の練習に身が入らなかった。さすがにひどい字を老師に見せるわけにはいかないと、香子はまた改めて書の練習を始めることにした。
 白虎は香子がどんな字を書いていようが気にしないが、青龍はそうではない。

『香子、また字が歪んでいる。もう少し墨をつけて、そう……』

 教え方がうまいとは言わないが、青龍は香子の字を見てくれるので助かっている。

『千字文を書くのはいいが、もう少し一文字一文字を丁寧に書くのが大事ではないか?』
『そうですね……』

 サボっていたりする為なかなか字がキレイにならない。ただこういうものはコツコツと毎日やっていくことでうまくなっていくので、焦りは禁物である。青龍にお手本を書いてもらいながら書を学ぶのは新鮮で、もう少し真面目にやろうと思いを新たにした。
 香子が現在習っているのは書だが、学んでいるのはそれだけではない。
 香子は大陸の歴史が好きなので、この国の歴史書も読ませてもらっていた。

(日本の歴史はさっぱりだったなぁ……)

 非国民と罵られそうなほど香子は自国の歴史を知らない。さすがに第二次世界大戦以降は大体頭に入っているが、それも詳しいとは言いがたい。

(もっといろいろ勉強しておけばよかった……)

 大人になってからみな思うことである。子どもの頃は勉強することに何の意味があるのかわからなかった。香子は典型的な文系で、数学は苦手だった。算数までは必要なのはわかるのだが、数学を何に使うのか意味不明だった。けれど、もし数学も理解できていたら楽しかったのではないかと思う。中国語が頭の中に入った、と思った時に開けた視界が、他の学問でも見えたのではないか。そう思うと真面目に学ばなかった自分が残念でならなかった。

『上手になっているな』
『え? 字が、ですか?』
『ああ、少しずつだが形がよくなってきている』
『嬉しいです。じゃあ、張老師に声かけてもいいですかね』
『あやつでなくても書は教えられるだろう』

 青龍がほんの少しだけ不機嫌そうな声を発した。香子は笑みを浮かべる。

『青龍さまでは、この国の歴史を私に教えることはできないでしょう?』
『玄武兄ならば……』
『長く生きていればいいってものじゃないんですよ』

 もちろん歴史学者だからといって張の教え方がうまいわけではないだろう。ただ、玄武の場合個人が自分の経験を歴史として語ることはできても、その時国に何が起こっていたか、制度はどうであったかなど全てを知っているわけではない。特に四神はヒキコモリなので、この国の歴史を語れるとは香子も思っていなかった。

『専門で研究しているとか、教師でないと歴史を教えることはできませんよ。私、まだまだ知りたいことがいっぱいあるんです』

 書を学び、書き言葉を学び、歴史書を読み、歴史を学ぶ。これだけのことを真面目に学ぶなら時間はいくらあっても足りないだろうと香子は思う。
 四神についても知りたいし、この大陸全体のことについても知りたい。もし行けるなら他の大陸にだって行きたい。知りたいこと、やりたいことは沢山あるのだ。

(その時、四神が側にいてくれたらいいよね)

 自分が四神の花嫁だと言われ、玄武と朱雀に抱かれてから香子は自分の寿命について考え始めた。
 香子は四神と共に生きる。それは途方もない年月を過ごすことと同義だ。まだ二十何年間かしか生きていないのにその十倍、いや二十倍かもしれない時を生きるには、四神への愛だけでは無理だと香子は思う。

(ヒキコモリの夫とずっと一緒って、下手すると嫌いになってしまうのでは?)

 今は側にいるだけで楽しいし胸も高鳴る。触れられればときめいたりもするが、それが百年も続くとは思えないのである。香子はなかなかに現実的だった。

『青藍、趙に、張老師に明日以降また来ていただけるように伝えてもらえるかしら』
『承知しました』

 集中力が切れてきたのでここらへんで切り上げることにし、香子はお茶を淹れた。茶壷の横に置かれている暖壷にはお湯が入っている。暖壷の中には熱石が入っていて、常に熱い温度で保温されているのだ。元の世界の暖壷は魔法瓶のことだが、この国の暖壷はこういうものである。
 これら便利な石は唐の国でしか産出されないらしい。しかもどこでも採れるというものでもない。光石を最初に確認した時はラピ○タかとツッコミを入れたものだった。

(便利だよね)

 これも四神の恩恵なのだろうか。食事時にでも聞いてみようと香子は思った。



ーーーー
「貴方色に染まる」42、43話辺りです。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/977111291/934161364
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