異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第3部 周りと仲良くしろと言われました

15.安定させる方法が難しくて困ります

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 その日の夜は黒月も一緒に湯に浸かってくれた。最近は三、四日に一度ぐらい一緒に入ってくれる。
 黒月はいつ見ても白く美しい肌をしており、その胸はたわわである。すごく揉ませてほしいと香子は思っているが、当然のことながら叶えられたことはない。手をついわきわきさせてしまい、冷たい目でギロリと睨まれてしまうぐらいである。自分のは小さくて揉みがいがないのだ。(試してはみたらしい)せめて一揉み……というのは明らかにセクハラだろうか。

『花嫁様……』
『はい、ごめんなさい!』

 香子は素直に謝った。
 そういえば香子が四神の誰かに抱かれる、抱かれない問題について黒月はどう思っているのだろう。

『ねえ、黒月』
『はい』
『私まだ白虎様とは肌を合わせていないのだけど、それについて何か思うことってある?』

 黒月はその動かない表情に少しだけ変化をみせた。

『……私は玄武様の眷属ですので特に何も』
『そっか……』

 そうなると気にするのは白雲だろうか。でも香子としても白雲に聞くのは憚られる。その気になったのですねと期待されても困るのだ。

『んー……じゃあ例えばなんだけど、黒月の立場が白雲だったとしたらどう?』
『白雲兄ですか……』

 しばらく間が空く。表情があまり動かないのでぼーっとしているようにしか見えないが、その実すごく真面目に考えてくれていることが伺えた。

『……花嫁様、私は白雲兄ではありません』
『そうね』
『ですのでこれはあくまで私の想像にすぎません』
『はい』

 前置きをする辺りやはり黒月は真面目だと香子は思う。

『私が白雲兄の立場であれば、何故花嫁様は白虎様に抱かれないのかと考えてしまうと思います。花嫁様の恐れも想像できないわけではないのですが、何故白虎様だけど思ってしまうかと』
『……そうよね。でも……怖いものは怖いのよ』

 香子は湯を掬って自分の顔にかけた。湯に映る顔が途方に暮れている。

『黒月、ありがとう』

 白雲の心理はわからない。だが眷属としてどう思うのかを黒月に聞けてよかったと香子は思う。

『花嫁様、礼を言われるようなことは……』
『私がありがとうって言いたかったの。それぐらいはいいでしょ』
『……今回だけですよ』

 なんだかんだいって黒月も香子には甘い。それをわかっていて言っているのだから自分は性格が悪いと香子は思った。
 玄武に触れられた時も、朱雀の”熱”を受けた時も、まだここにきて何日も経っていなかった。確か出会って一週間ぐらいで玄武と朱雀に抱かれたのだ。いくら縋る存在が欲しかったとはいえ、それはそれでどうなんだと香子は思う。

(あれからもう半年かー……)

 春の始めに召喚されてもう夏の終りだ。もうノートはいっぱいになり、贈物の紙を使って日記をつけている。もう使うことはないだろうけど日本語で。

香子シャンズ、如何した?』

 入浴の後玄武の腕に抱かれて、ふと考えたことに泣きたくなった。

『いいえ、いいえ……』

 自分は中国語が話せる。だから最初からそれほど苦もなくコミュニケーションが取れている。この国の歴史も好きだし、食べ物だって大好きだ。
 だけどもう二度と日本語を話すこともないし、その書籍を読むこともない。和食もある程度は作れるだろうが、気軽に食べられないと思ったらたまらなくなる。
 心配そうな玄武と朱雀に悪いなと思っても涙がぽろりとこぼれた。

『あれ……?』

 朱雀に頭を優しく撫でられる。

『不安定なのだろう』
『しかしこればかりは……』

 香子を安定させるには四神をみな受け入れさせなければならないが、白虎に対しては尻ごみしてしまう香子の気持ちも四神には伝わっている。

『もうやだ……』

 こんなに泣いてばかりいる自分が香子は嫌だった。
 ふと、目隠しをしたらどうかと香子は考える。白虎には失礼かもしれないが、ただ受け入れるだけならそれで解決するのではないかと思ったのだ。
 でもそれはそれでどうなんだとも思う。白虎の困ったような顔が浮かんだ。

『わかんない……』

 どうしたら白虎に抱かれることができるかどうかばかり考えて、香子は白虎への気持ちが見えなくなった。自分は抱かれたいと思うほど白虎が好きなのだろうか。

『もうわかんないいい……』

 ひとしきり泣いて、香子は玄武と朱雀の腕の中に囚われた。

『香子、愛している……』
『香子、もっと……』

 二神の愛で全身を満たされて、香子はやっと愛しいという気持ちを思い出した。

(好き、大好き……愛してる……)

 胸がしめつけられるような多幸感。勘違いだと言われてもこの感覚だけは本物だ。我を忘れるほど愛されて、身体がもう自分のものではないと思うほどである。
 改めて白虎と過ごしてみようと香子は思った。
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