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第3部 周りと仲良くしろと言われました
27.夜の散歩は真っ暗なのです
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……玄武はガメラな動きはしなかった。
香子としては残念なような、そうでないような微妙なかんじではあった。だって蛇が絡みついた亀が天を翔けているのだ。その蛇は飾りなのかそれとも両方とも玄武なのか。聞きたくもあり、聞きたくもなし。不思議なかんじである。
蛇は香子を支えるように絡みついてきたので、香子はおっかなびっくりではあったが蛇を撫でた。
会話は念話でしかしないというから飛んでいる間は何も話さなかった。(できないわけではなさそうである)今日は天壇まで連れて行ってもらうことにした。天壇は紫禁城から南東方面に約五公里(5km)いったところにある祭壇である。春の大祭で祭祀を行った場所だ。
元の世界ならば祈年殿がライトアップされていたりするのかもしれないが(これはあくまで香子の想像である。夜見に行ったことはない)、こちらの世界では全てが真っ暗である。門には見張りの兵士がいるのはわかった。天壇の内側に入るとところどころ光石の灯りが見える。兵士の詰め所かもしれないし、四神の神官がいるところかもしれない。
『神官って、ここにいるんですかね?』
『いるだろう』
バスよりも低い声で白虎が答えてくれた。ならいくつか見える灯りは神官が詰めている場所なのだろうと、香子は思った。
神官とはこういうところに何人いて、普段どのようなことをしているのだろうか。そういえば張錦飛はここの神官長に抜擢されたようだが天壇に詰めているわけではないようだ。今度聞いてみようと、香子は心の中にメモをした。
白虎と玄武は祈年殿の前の少し広くなっている場所にふわりと下りた。思った通り真っ暗である。
香子は白虎から下りて玄武の甲羅に触れた。さすがに蛇に触れることは怖くてできなかった。
(ここでよいのか)
(はい、誰もいない天壇を見てみたかったんです)
心話ならできるからと玄武に触れたのだ。
真っ暗で本当に何も見えない。でもここに祈年殿があるから、と香子はあの日の情景を思い出した。
(少し歩いてもいいですか)
(ここだけならば)
(ありがとうございます)
玄武から手を離し、白虎に寄り添ってもらって石畳を歩く。ただそれだけのことが楽しくて香子は笑んだ。
『ご機嫌だな』
『自分の足で歩くって大事なんですよ』
『……領地内であればかまわぬぞ』
『それは心揺れますね』
まだ行くつもりはないけれど。
けれど香子はすぐに白虎の背に乗せられてしまった。
『白虎様……』
『落ち着かぬ』
どうしてもだめなようだ。これでは領地では自分の足で歩いてもいいと言われたって信じられないではないか。
『しょうがないですねぇ』
香子は白虎の毛を撫でた。そして好きだなぁと思った。
(この毛に包まれて、抱かれる?)
どんなに考えても実感が湧かない。やはり朱雀に手伝ってもらった方がいいだろうと思う。朱雀の”熱”を受ければ逃げることもできないだろうし。
(玄武様と朱雀様に抱かれた時も”熱”に頼ったわ)
そして青龍に抱かれた時もそうだった。だから別におかしなことではない。白虎の毛を撫でながらそろそろ観念しないといけないだろうなと香子は思う。流されたっていいではないか。香子は白虎が好きだと思う。それできっと間違いはないはずだ。
でもさすがにそれは今夜ではない。
明日は張が来てくれる日だ。神官について少し聞かせてもらおうと思う。
『ありがとうございました。帰りましょう』
『わかった』
本当は昼間に来たいがそうするわけにはいかない。いくら姿を隠したとしても誰にも見えないわけではないらしいから。勘がいい人とか、固定観念のない子どもには姿を見られてしまうこともあるという。さすがにそんなリスクは負えない。
玄武が近づいてきた。香子は許可を取って玄武の甲羅に触れる。
(これだけでいいのか)
(はい、今日はこれで十分です)
表の空気に触れるのと、どこにでも行けるという安心感がほしいだけだ。本当は頤和園にも円明園にも行きたいし、長城だって見に行きたい。でもそれは今ではない。
(どーせ夜じゃ真っ暗で何も見えないし)
一瞬朝方ならどうかと思ってみたが、そんな時間に香子が起きられるはずはないし、起こしてもくれないだろう。そういえばこちらの世界ではまだ朝日を見ていない。見たいなどと言ったら朝までコースで抱かれ続けることになってしまうかもしれないので遠慮したい。
したいことを言い出したらきりがないのだ。
白虎の背に乗ってまた天を翔ける。ところどころ見える灯りが幻想的でなんだか現実味がない。
だけど。
『外ですね』
『ああ』
王城の外に出られるということが、香子には何よりも代えがたかった。
四神宮に着けば、白虎と玄武が人の姿に変わる。
『白虎様、今宵も楽しかったです』
『ならばよかった』
白虎の腕の中から、香子は玄武に渡された。そのまま白虎は踵を返した。まだ抱かれていないとはいえ、香子は白虎の花嫁でもあるはずだ。なのにどうしてそんなに簡単に玄武に渡せるのだろう。別に葛藤してほしいわけではないがやはり香子には理解できそうもない。嫉妬されたり渋られたりしたらそれはそれで面倒だとは思う。
(違う、一番面倒なのは私だ)
『香子、よいか』
『……はい』
玄武に声をかけられて香子は頬を染めた。異論はなかった。
香子としては残念なような、そうでないような微妙なかんじではあった。だって蛇が絡みついた亀が天を翔けているのだ。その蛇は飾りなのかそれとも両方とも玄武なのか。聞きたくもあり、聞きたくもなし。不思議なかんじである。
蛇は香子を支えるように絡みついてきたので、香子はおっかなびっくりではあったが蛇を撫でた。
会話は念話でしかしないというから飛んでいる間は何も話さなかった。(できないわけではなさそうである)今日は天壇まで連れて行ってもらうことにした。天壇は紫禁城から南東方面に約五公里(5km)いったところにある祭壇である。春の大祭で祭祀を行った場所だ。
元の世界ならば祈年殿がライトアップされていたりするのかもしれないが(これはあくまで香子の想像である。夜見に行ったことはない)、こちらの世界では全てが真っ暗である。門には見張りの兵士がいるのはわかった。天壇の内側に入るとところどころ光石の灯りが見える。兵士の詰め所かもしれないし、四神の神官がいるところかもしれない。
『神官って、ここにいるんですかね?』
『いるだろう』
バスよりも低い声で白虎が答えてくれた。ならいくつか見える灯りは神官が詰めている場所なのだろうと、香子は思った。
神官とはこういうところに何人いて、普段どのようなことをしているのだろうか。そういえば張錦飛はここの神官長に抜擢されたようだが天壇に詰めているわけではないようだ。今度聞いてみようと、香子は心の中にメモをした。
白虎と玄武は祈年殿の前の少し広くなっている場所にふわりと下りた。思った通り真っ暗である。
香子は白虎から下りて玄武の甲羅に触れた。さすがに蛇に触れることは怖くてできなかった。
(ここでよいのか)
(はい、誰もいない天壇を見てみたかったんです)
心話ならできるからと玄武に触れたのだ。
真っ暗で本当に何も見えない。でもここに祈年殿があるから、と香子はあの日の情景を思い出した。
(少し歩いてもいいですか)
(ここだけならば)
(ありがとうございます)
玄武から手を離し、白虎に寄り添ってもらって石畳を歩く。ただそれだけのことが楽しくて香子は笑んだ。
『ご機嫌だな』
『自分の足で歩くって大事なんですよ』
『……領地内であればかまわぬぞ』
『それは心揺れますね』
まだ行くつもりはないけれど。
けれど香子はすぐに白虎の背に乗せられてしまった。
『白虎様……』
『落ち着かぬ』
どうしてもだめなようだ。これでは領地では自分の足で歩いてもいいと言われたって信じられないではないか。
『しょうがないですねぇ』
香子は白虎の毛を撫でた。そして好きだなぁと思った。
(この毛に包まれて、抱かれる?)
どんなに考えても実感が湧かない。やはり朱雀に手伝ってもらった方がいいだろうと思う。朱雀の”熱”を受ければ逃げることもできないだろうし。
(玄武様と朱雀様に抱かれた時も”熱”に頼ったわ)
そして青龍に抱かれた時もそうだった。だから別におかしなことではない。白虎の毛を撫でながらそろそろ観念しないといけないだろうなと香子は思う。流されたっていいではないか。香子は白虎が好きだと思う。それできっと間違いはないはずだ。
でもさすがにそれは今夜ではない。
明日は張が来てくれる日だ。神官について少し聞かせてもらおうと思う。
『ありがとうございました。帰りましょう』
『わかった』
本当は昼間に来たいがそうするわけにはいかない。いくら姿を隠したとしても誰にも見えないわけではないらしいから。勘がいい人とか、固定観念のない子どもには姿を見られてしまうこともあるという。さすがにそんなリスクは負えない。
玄武が近づいてきた。香子は許可を取って玄武の甲羅に触れる。
(これだけでいいのか)
(はい、今日はこれで十分です)
表の空気に触れるのと、どこにでも行けるという安心感がほしいだけだ。本当は頤和園にも円明園にも行きたいし、長城だって見に行きたい。でもそれは今ではない。
(どーせ夜じゃ真っ暗で何も見えないし)
一瞬朝方ならどうかと思ってみたが、そんな時間に香子が起きられるはずはないし、起こしてもくれないだろう。そういえばこちらの世界ではまだ朝日を見ていない。見たいなどと言ったら朝までコースで抱かれ続けることになってしまうかもしれないので遠慮したい。
したいことを言い出したらきりがないのだ。
白虎の背に乗ってまた天を翔ける。ところどころ見える灯りが幻想的でなんだか現実味がない。
だけど。
『外ですね』
『ああ』
王城の外に出られるということが、香子には何よりも代えがたかった。
四神宮に着けば、白虎と玄武が人の姿に変わる。
『白虎様、今宵も楽しかったです』
『ならばよかった』
白虎の腕の中から、香子は玄武に渡された。そのまま白虎は踵を返した。まだ抱かれていないとはいえ、香子は白虎の花嫁でもあるはずだ。なのにどうしてそんなに簡単に玄武に渡せるのだろう。別に葛藤してほしいわけではないがやはり香子には理解できそうもない。嫉妬されたり渋られたりしたらそれはそれで面倒だとは思う。
(違う、一番面倒なのは私だ)
『香子、よいか』
『……はい』
玄武に声をかけられて香子は頬を染めた。異論はなかった。
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