334 / 653
第3部 周りと仲良くしろと言われました
31.ずっと理由を探しています
しおりを挟む
陰暦では8月になったばかり。太陽暦では9月。陰暦の八月十五が中秋節だ。
秋の風が吹いているのに8月とはこれ如何に、と香子は思ってしまう。大陸もカレンダーは太陽暦だったが、春節(旧正月)、端午節、中秋節は陰暦を採用していた。だから年間のスケジュールなどいろいろ毎年日付が変わってよくわからなかった。
(二学期の始まりとかも春節が基準だったよね。おかげで毎年微妙に開始日とか休みとか違ったなー)
日付をチェックしておくのが面倒だったなと香子は思う。陰暦だと歳の数え方も違う。数え年というのがよくわからない。産まれた時はすでに1歳で、正月に2歳になる。そう考えると香子はこちらでは23歳になるはずだ。年が明けたら24歳かと思ったら、香子はなんか嫌になった。別に年を取るのが嫌なわけではない。まだ自分は22歳だと思っていたから24歳? と考えたら嫌になったのだ。
青龍と穏やかに外でお茶を飲み、とりとめもない話をした。香子の留学時代の話がどうしてもメインになってしまうのだが、四神はみな機嫌よさそうに香子の話を聞いてくれる。助言が欲しいなと思えば四神なりに考えた言葉をくれたりして、もちろん的を射てない答えも多いのだが、香子は怒ったり笑ったりしながらもこの日々を愛しく感じていた。
(いつまでも不安定な状態じゃ困るよね)
周りにとってもそうだが、何よりも香子自身がつらい。
(情緒を安定させる為に抱かれるのかぁ……)
ちょっと抵抗はあるが、それはそれでありかなと香子も思った。大祭に出る為に抱かれるよりは理由としてしっくりしている気がしたのだ。
青龍の室に移動し、居間の長椅子に腰掛けて、香子は青龍の腕をぎゅーっと抱きしめた。
『香子……あまりそういうかわいいことをしてくれるな』
青龍が苦笑する。
『青龍様は何もしちゃだめです』
『酷なことを言う』
『私が抱きしめたいんです』
『……抱きしめるぐらいはよかろう?』
笑いを含んだ声に、香子は少しだけ考えた。
『口づけ禁止、胸とか、その……下半身に触るのも禁止です』
『足に触れるのもだめか』
『……膝から下でしたら……』
『……わかった。だが髪に口づけることは許してくれまいか』
『っっ! だ、だめですっ!』
髪に口づけるぐらい、と思うかもしれないが、この四神という連中は髪を一房取って香子の目の前で口づけたりするのだ。もうなんていうか恥ずかしくていたたまれなくなるからだめだと香子は思っている。
『香子が厳しい……』
落胆したように言われてもだめなものはだめなのである。口づけだけなら……なんて答えたら全身に口づけしたりするのだ。もちろんそれは足の間も例外ではない。昼間から甘く啼かされるのは、香子としては勘弁してほしいところである。
『しかたないな……だがそなたを領地に連れ帰ることができたなら……わかっているな?』
(いやあああ~~~愛欲の日々はいやあああ~~~)
エロマンガのような日々を思い浮かべて香子は真っ赤になった。青龍がふふっと笑う。
『愛らしいものだ』
むかつく、と香子は思ったがしょうがない。生きている年数も経験も違うのだ。そのわりにはかなり子どもっぽいところもあるのだが。
ふと香子は考える。
『その……青龍様の初めての相手ってどんな女性だったんですか?』
『気になるのか?』
『いえ、別に。ただ、どんな人とどんな風に抱き合ったのかなーって』
嫉妬も何もなく純粋な興味である。ここらへんが香子に色気がない所以だろう。それでも四神に抱かれた影響で周りを色気で悩殺していたりもするのだが。
青龍は少し黙った。記憶を辿っているのだろうと、香子は茶杯に手を伸ばした。丸一日飲んでいても飽きない。お茶を飲むのは幸せである。
『ふむ……あまりよくは覚えていないが、確かそれなりに男に慣れた女性であったな。一から手ほどきをしてもらい、何度か相手をさせた記憶はある。我はあまりそういうことに興味は持てなかった故、すぐに眷属に下げ渡したが……』
『それって、何年ぐらい前の話ですか?』
『成人してすぐだ。そうだな……五十年ほど前だろうか』
普通に考えたらその女性はもう生きていないだろう。だが眷属に下げ渡しと言っていた。
『その方の消息はご存知ですか?』
『いや……知らぬな』
『そうですか』
それならそれでいいだろうと、香子は追及しないことにした。青龍に抱かれたとはいえ、その女性が眷属の誰かの”つがい”であったらいいなと思ってしまった。”つがい”であればその眷属と共に長い時を過ごすことになる。まだ当時の美貌を留めたまま青龍の領地で暮らしているのではないかと思ったら、なんだか嬉しくなった。本当にそうだったらいいと香子は思う。でもそうでなかったら悲しいから、香子は聞かないことにした。だからその女性は、香子の想像の中で幸せに過ごすのだ。
光石が光り始めた。表が暗くなってきたのだろう。
香子はなんとなくおなかがすいてきたなと思った。
さて、夕飯に雪菜炒毛豆(漬物と枝豆の炒め物)は出てくるだろうか。
秋の風が吹いているのに8月とはこれ如何に、と香子は思ってしまう。大陸もカレンダーは太陽暦だったが、春節(旧正月)、端午節、中秋節は陰暦を採用していた。だから年間のスケジュールなどいろいろ毎年日付が変わってよくわからなかった。
(二学期の始まりとかも春節が基準だったよね。おかげで毎年微妙に開始日とか休みとか違ったなー)
日付をチェックしておくのが面倒だったなと香子は思う。陰暦だと歳の数え方も違う。数え年というのがよくわからない。産まれた時はすでに1歳で、正月に2歳になる。そう考えると香子はこちらでは23歳になるはずだ。年が明けたら24歳かと思ったら、香子はなんか嫌になった。別に年を取るのが嫌なわけではない。まだ自分は22歳だと思っていたから24歳? と考えたら嫌になったのだ。
青龍と穏やかに外でお茶を飲み、とりとめもない話をした。香子の留学時代の話がどうしてもメインになってしまうのだが、四神はみな機嫌よさそうに香子の話を聞いてくれる。助言が欲しいなと思えば四神なりに考えた言葉をくれたりして、もちろん的を射てない答えも多いのだが、香子は怒ったり笑ったりしながらもこの日々を愛しく感じていた。
(いつまでも不安定な状態じゃ困るよね)
周りにとってもそうだが、何よりも香子自身がつらい。
(情緒を安定させる為に抱かれるのかぁ……)
ちょっと抵抗はあるが、それはそれでありかなと香子も思った。大祭に出る為に抱かれるよりは理由としてしっくりしている気がしたのだ。
青龍の室に移動し、居間の長椅子に腰掛けて、香子は青龍の腕をぎゅーっと抱きしめた。
『香子……あまりそういうかわいいことをしてくれるな』
青龍が苦笑する。
『青龍様は何もしちゃだめです』
『酷なことを言う』
『私が抱きしめたいんです』
『……抱きしめるぐらいはよかろう?』
笑いを含んだ声に、香子は少しだけ考えた。
『口づけ禁止、胸とか、その……下半身に触るのも禁止です』
『足に触れるのもだめか』
『……膝から下でしたら……』
『……わかった。だが髪に口づけることは許してくれまいか』
『っっ! だ、だめですっ!』
髪に口づけるぐらい、と思うかもしれないが、この四神という連中は髪を一房取って香子の目の前で口づけたりするのだ。もうなんていうか恥ずかしくていたたまれなくなるからだめだと香子は思っている。
『香子が厳しい……』
落胆したように言われてもだめなものはだめなのである。口づけだけなら……なんて答えたら全身に口づけしたりするのだ。もちろんそれは足の間も例外ではない。昼間から甘く啼かされるのは、香子としては勘弁してほしいところである。
『しかたないな……だがそなたを領地に連れ帰ることができたなら……わかっているな?』
(いやあああ~~~愛欲の日々はいやあああ~~~)
エロマンガのような日々を思い浮かべて香子は真っ赤になった。青龍がふふっと笑う。
『愛らしいものだ』
むかつく、と香子は思ったがしょうがない。生きている年数も経験も違うのだ。そのわりにはかなり子どもっぽいところもあるのだが。
ふと香子は考える。
『その……青龍様の初めての相手ってどんな女性だったんですか?』
『気になるのか?』
『いえ、別に。ただ、どんな人とどんな風に抱き合ったのかなーって』
嫉妬も何もなく純粋な興味である。ここらへんが香子に色気がない所以だろう。それでも四神に抱かれた影響で周りを色気で悩殺していたりもするのだが。
青龍は少し黙った。記憶を辿っているのだろうと、香子は茶杯に手を伸ばした。丸一日飲んでいても飽きない。お茶を飲むのは幸せである。
『ふむ……あまりよくは覚えていないが、確かそれなりに男に慣れた女性であったな。一から手ほどきをしてもらい、何度か相手をさせた記憶はある。我はあまりそういうことに興味は持てなかった故、すぐに眷属に下げ渡したが……』
『それって、何年ぐらい前の話ですか?』
『成人してすぐだ。そうだな……五十年ほど前だろうか』
普通に考えたらその女性はもう生きていないだろう。だが眷属に下げ渡しと言っていた。
『その方の消息はご存知ですか?』
『いや……知らぬな』
『そうですか』
それならそれでいいだろうと、香子は追及しないことにした。青龍に抱かれたとはいえ、その女性が眷属の誰かの”つがい”であったらいいなと思ってしまった。”つがい”であればその眷属と共に長い時を過ごすことになる。まだ当時の美貌を留めたまま青龍の領地で暮らしているのではないかと思ったら、なんだか嬉しくなった。本当にそうだったらいいと香子は思う。でもそうでなかったら悲しいから、香子は聞かないことにした。だからその女性は、香子の想像の中で幸せに過ごすのだ。
光石が光り始めた。表が暗くなってきたのだろう。
香子はなんとなくおなかがすいてきたなと思った。
さて、夕飯に雪菜炒毛豆(漬物と枝豆の炒め物)は出てくるだろうか。
5
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です
氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。
英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる