異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第3部 周りと仲良くしろと言われました

40.ただひたすらに甘くて心臓に悪いです

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 入浴は勘弁してほしいと香子は思ったのだが、玄武も朱雀も許してはくれなかった。

『今宵は我らが香子を入れよう』

 玄武が色を含んだバリトンで告げる。なんだかとても機嫌がよさそうだった。

『……承知しました』

 黒月がぴくりと眉を動かしたが止めはしない。黒月はあくまで四神の眷属である。香子が本気で助けを求めない限り口を挟んでくることはないのだ。

(ううう……誰も味方がいない……)

 一応香子も抗議はしたのだ。一緒に入浴するのは嫌だと。とても恥ずかしいしのぼせるかもしれないからと。だが珍しく玄武と朱雀が笑んだ。それもなんだかとても嬉しそうに。そんな表情はなかなか見たことがなかった故に、香子は見惚れてしまった。相変わらず学んではいない。

『香子、そなたがそこまで心配する必要はない』
『全て我らに任せよ』

 任せた結果この間はとてもいたたまれないことになったのだが、そこは全く考慮してもらえないのだ。

『やです……』

 香子は頬を染めて抵抗しようとした。玄武は少し悲しそうな表情をする。そんな表情ばっかり覚えて! と香子は思ってしまう。四神は元々そんなに表情が動く方ではないのだ。

(あ、でも……)

 玄武は先代の花嫁を見守っていた時期がとても、とても長かった。その時はもしかしたらずっとこんな表情をしていたのかもしれないとも香子は思った。
 が、今はそんな感傷に浸っている場合ではない。

『何故? 我らと共にあればのぼせることもないだろう。何をそなに拒むのだ』

 朱雀が楽しそうに聞く。朱雀は香子の葛藤などをだいたいわかっていて聞いてくるからたちが悪い。香子はムーッとした。

『朱雀様は性格が悪いです!』

 香子は朱雀にビシッと指を突き付けた。これは茶室でのやりとりである。その指から手を、朱雀の手がやんわりと包んだ。

『これ、そう簡単に指さすものではない』

 そう言いながら香子の手に顔を寄せた。指先に口づけられて、香子は一気に赤くなる。
 こういうことはしてはいけないと香子は思う。四神は香子に対して当たり前にこういうことをするが、香子はそんなことを元の世界でされたことは一度もないのだ。ときめいてしまうからやめてほしかった。

『香子、そなたのすみずみまで見たいと、愛でたいと思うのはいけないことか?』

 秘儀、朱雀の流し目を向けられ、香子はうっとつまってしまった。

(いやあああーーーーっ! 言ってることはアレだけどカッコよすぎる素敵すぎるぅっ!)

 自分の魅力をよく理解している朱雀が憎い。

『行くぞ』

 いつのまにか席を立っていた玄武に軽々と抱き上げられ、とうとう香子は浴室に運ばれてしまった。その後のめくるめくは言うまでもないだろう。
 そして、入浴後の上気した肌をまた玄武の室で、玄武と朱雀によって丹念に愛でられたのだった。


(……恥ずか死ぬ……)

 翌朝、香子は例のごとく朱雀の胸に顔を埋めて悶えていた。昨夜のことがいつも通りありありと思い出され、それだけは何か月経っても慣れない。心が落ち着いた故か、香子は自分の身体の感度が上がっているのではないかと思った。

(今日は朱雀様と、なんだよね……)

 どんな恥ずかしいことになってしまうのか考えただけで身震いする。それは嫌なのか期待故なのかも今の香子にはわからなかった。
 ただそれよりも。

『……おなか、すきました……』
『伝えてはある。しばし待て』
『はい……ありがとうございます』

 香子が目を覚ました時点で、眷属に念話を送ったようだった。厨房では眷属たちのゴーサインを待ってちゃちゃっと調理してくれるので、それほど待たずとも朝食が運ばれてくるだろう。
 後ろから逞しい腕が回され、香子は抱きしめられた。玄武だった。

『今日は朱雀とか……昨日はあまりそなたと二人きりではいられなかった……』

 そんな、嫉妬するような言い方をされて香子は驚いた。もしかしたら拗ねているだけかもしれないが、香子にとっては意外だった。

『玄武様、その……また今度……』

 そう言いながら照れてしまう。二人きりになるとどうしてもエロエロになってしまうので、香子としてはあまり二人きりにはなりたくなかった。玄武が好きだからたいへんなのである。応えたいけど応えたらたいへんというやつである。

『ああ、そなたとまた一日二人きりで過ごしたいものだ』

 素直に言われてしまい、香子は頬を染めた。

『香子、我を忘れてはおるまいな』

 胸に顔を寄せている相手を忘れるはずがない。それも含めて香子は照れていた。甘いテナーが至近距離で香子を包む。

『……忘れてないです』

 香子は後ろから玄武に抱きしめられながら、朱雀の胸に顔をすり寄せた。傍から見たらすごい構図だが、幸い誰も見る者はいない。そうしているうちに室の表から声がかかった。朝食が運ばれてきたようである。

『我が見てこよう』

 玄武がすっと立ち上がり、軽く身支度を整えて居間に出て行った。その所作もまた洗練されている。香子はそれを横目で見、また内心ひどく悶えたのだった。
 だめ、無理、カッコよすぎると。
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