383 / 653
第3部 周りと仲良くしろと言われました
80.眷属の態度が悪すぎると思うのです
しおりを挟む
その夜、香子の支度はなかなか整わなかった。
黒月にこんこんと説教をされていたからである。おかげで部屋に戻った時、居間ではすでに玄武が待っていて侍女たちが慌てていた。香子は悪いことをしたなと反省した。
でもあの胸はずっと狙っていたのだ。どんなに弾力があって、触れたら気持ちいいだろうかと手がわきわきしてしまうぐらい触りたくてたまらなかったのである。
ただそれをしたのがエロオヤジだったとしたらどうだろうか。香子だったから黒月も説教と拳骨ぐらいで許してくれただけであり、これがそこらへんのただの男だったら殺されても文句は言えない。
(セクハラしてしまったあああああ!)
香子は内心頭を抱えた。もちろん黒月には平謝りに謝った。本当に申し訳なかった。
(嫌われたかも……)
自業自得である。黒月が香子を嫌いになったとしても守護ではあるから側を離れることはないだろうが、それはそれでキツいものはある。
黒月は嘆息した。
『……花嫁様』
『はいっ!』
『断りもなく人の身体に触れてはなりません。守れない場合は……』
香子は縋るような目で黒月を見た。
『玄武様の言うことを一日聞いてもらいます』
『え』
それは香子にとって反省を促す材料になるのか、香子にはよくわからなかった。黒月が珍しく口元に笑みを浮かべた。美人の微笑は心臓に悪い。
『私はそういうことはまだしたことはございませんが……私の両親はとても仲睦まじいのです。子どもが側にいてもいなくても父は触れたい時に母に触れます』
それは情操教育的にどうなのだろうと香子は思う。
『母は父に触れられるのが好きだと教えてくれましたが、丸一日抱かれるのはたいへんだとたまに愚痴をこぼしていましたよ?』
黒月の口元が意味深に上がる。香子は背筋を冷汗が流れるのを感じた。
『玄武様も、花嫁様を丸一日抱きたいと思っていらっしゃるのではありませんか?』
『ごめんなさいっ! もうしませんっ!』
丸一日など冗談ではない。確かに最近は青龍の相手もするから丸一日抱かれるなんて日もある。確かに四神は好きだが抱かれ続けるのはできれば勘弁していただきたいと香子は思った。
『わかっていただけたならいいのです』
最近眷属たちは香子に四神をけしかければいいと思っているのではないだろうか。今回は誰がどう見ても香子が悪いが、侍女頭や延夕玲、そして紅児の件に首を突っ込むともれなく四神が呼ばれてしまう。眷属たちは四神を煽るものだから始末に負えない。結果的に香子が床から出られない時間が増えるのだった。
部屋に戻ったら居間で玄武が待っていたことで、黒月もまた動揺したようだった。
『香子、少々遅かったな』
『はい、黒月と話したいことがあったので。ごめんなさい』
『謝るほどのことではない。このまま、よいか?』
玄武はそう言うが早いか香子を抱き上げた。胸がきゅん、と甘く疼いた。
まだ紅もさしてないし、睡衣も身にまとってはいない。今身に着けているのは湯あみ着に毛が生えたような漢服だ。下にズボンも履いているし色気がない。それでも玄武はいいようだ。
香子は侍女たちを窺った。彼女たちはとんでもないという顔をしていた。
『すぐ、すみますからお待ちいただいても?』
『……わかった。だがここにいるぞ』
『はい』
ここで侍女たちを無視してもよかったが、彼女たちは香子を着飾りたいのだ。それを無下になどしようものなら明日は一日恨みがましい目を向けられてしまうに違いなかった。
(おかしいなー。私が一応主なんだよねー?)
香子は首を傾げたかったが髪を丁寧に梳かされていたので無理だった。薄い睡衣を着せられ、その上から長袍を羽織らされる。移動の際できるだけ香子の肌をさらさせないようにという配慮だった。唇に紅をさされ、鏡を見せられる。この鏡も映りがいいとは言えないが、肌がどんどん透き通るように白くなっているようには見えた。
『如何でしょう?』
『綺麗にしてくれてありがとう』
侍女たちに礼を言えば、彼女たちは満足そうに笑んだ。彼女たちにとって香子は腕の振るい甲斐ある主人である。髪は簡単に結い上げられているだけなので床に横たわれば解けてしまうだろう。そこらへんの調整もまた絶妙で、香子はプロだなぁと思うのだ。
『お待たせしました』
居間に戻ると、長椅子に腰掛けていた玄武がスッと立ち上がった。その立ち居振る舞いがもうカッコよくてたまらないと香子は思う。
(萌える……なんでいつもこんなにカッコいいのぉ~)
心の中で盛大に叫んでいたら玄武に抱き上げられた。
『湯上りのそなたも美しいが、紅をはいた姿は格別だ』
至近距離でそんなことを言われて顔に熱が集まる。
『恥じらうそなたはたまらぬな』
そんなに嬉しそうに言わないでほしいと香子は思う。もう心臓が早鐘を打ちすぎて早死にしてしまいそうだった。
『……もう、言わないんです……』
『何故? 我はそなたが愛しくてならぬというのに……』
ストレートに言われて香子はぱくぱくと口を動かすことしかできなかった。香子は玄武の胸に顔を埋めた。玄武は笑んで、そのまま香子を己の室に運んだ。
その夜も、とても甘かった。
ーーーーー
黒月の両親の恋物語については「初恋は草海に抱かれ」をご覧ください。
ライト文芸の新作を4月末から連載しています。
「離島で高校生活送ってます」
南の離島の高校に通う少年たちの青春物語です。動物いっぱいの大自然の中でちょっと変わった生活を送ります。
楽しく書いておりますので読んでいただけると嬉しいです。
もし興味を持っていただけましたら、マイページから覗いてやってくださいませ~
黒月にこんこんと説教をされていたからである。おかげで部屋に戻った時、居間ではすでに玄武が待っていて侍女たちが慌てていた。香子は悪いことをしたなと反省した。
でもあの胸はずっと狙っていたのだ。どんなに弾力があって、触れたら気持ちいいだろうかと手がわきわきしてしまうぐらい触りたくてたまらなかったのである。
ただそれをしたのがエロオヤジだったとしたらどうだろうか。香子だったから黒月も説教と拳骨ぐらいで許してくれただけであり、これがそこらへんのただの男だったら殺されても文句は言えない。
(セクハラしてしまったあああああ!)
香子は内心頭を抱えた。もちろん黒月には平謝りに謝った。本当に申し訳なかった。
(嫌われたかも……)
自業自得である。黒月が香子を嫌いになったとしても守護ではあるから側を離れることはないだろうが、それはそれでキツいものはある。
黒月は嘆息した。
『……花嫁様』
『はいっ!』
『断りもなく人の身体に触れてはなりません。守れない場合は……』
香子は縋るような目で黒月を見た。
『玄武様の言うことを一日聞いてもらいます』
『え』
それは香子にとって反省を促す材料になるのか、香子にはよくわからなかった。黒月が珍しく口元に笑みを浮かべた。美人の微笑は心臓に悪い。
『私はそういうことはまだしたことはございませんが……私の両親はとても仲睦まじいのです。子どもが側にいてもいなくても父は触れたい時に母に触れます』
それは情操教育的にどうなのだろうと香子は思う。
『母は父に触れられるのが好きだと教えてくれましたが、丸一日抱かれるのはたいへんだとたまに愚痴をこぼしていましたよ?』
黒月の口元が意味深に上がる。香子は背筋を冷汗が流れるのを感じた。
『玄武様も、花嫁様を丸一日抱きたいと思っていらっしゃるのではありませんか?』
『ごめんなさいっ! もうしませんっ!』
丸一日など冗談ではない。確かに最近は青龍の相手もするから丸一日抱かれるなんて日もある。確かに四神は好きだが抱かれ続けるのはできれば勘弁していただきたいと香子は思った。
『わかっていただけたならいいのです』
最近眷属たちは香子に四神をけしかければいいと思っているのではないだろうか。今回は誰がどう見ても香子が悪いが、侍女頭や延夕玲、そして紅児の件に首を突っ込むともれなく四神が呼ばれてしまう。眷属たちは四神を煽るものだから始末に負えない。結果的に香子が床から出られない時間が増えるのだった。
部屋に戻ったら居間で玄武が待っていたことで、黒月もまた動揺したようだった。
『香子、少々遅かったな』
『はい、黒月と話したいことがあったので。ごめんなさい』
『謝るほどのことではない。このまま、よいか?』
玄武はそう言うが早いか香子を抱き上げた。胸がきゅん、と甘く疼いた。
まだ紅もさしてないし、睡衣も身にまとってはいない。今身に着けているのは湯あみ着に毛が生えたような漢服だ。下にズボンも履いているし色気がない。それでも玄武はいいようだ。
香子は侍女たちを窺った。彼女たちはとんでもないという顔をしていた。
『すぐ、すみますからお待ちいただいても?』
『……わかった。だがここにいるぞ』
『はい』
ここで侍女たちを無視してもよかったが、彼女たちは香子を着飾りたいのだ。それを無下になどしようものなら明日は一日恨みがましい目を向けられてしまうに違いなかった。
(おかしいなー。私が一応主なんだよねー?)
香子は首を傾げたかったが髪を丁寧に梳かされていたので無理だった。薄い睡衣を着せられ、その上から長袍を羽織らされる。移動の際できるだけ香子の肌をさらさせないようにという配慮だった。唇に紅をさされ、鏡を見せられる。この鏡も映りがいいとは言えないが、肌がどんどん透き通るように白くなっているようには見えた。
『如何でしょう?』
『綺麗にしてくれてありがとう』
侍女たちに礼を言えば、彼女たちは満足そうに笑んだ。彼女たちにとって香子は腕の振るい甲斐ある主人である。髪は簡単に結い上げられているだけなので床に横たわれば解けてしまうだろう。そこらへんの調整もまた絶妙で、香子はプロだなぁと思うのだ。
『お待たせしました』
居間に戻ると、長椅子に腰掛けていた玄武がスッと立ち上がった。その立ち居振る舞いがもうカッコよくてたまらないと香子は思う。
(萌える……なんでいつもこんなにカッコいいのぉ~)
心の中で盛大に叫んでいたら玄武に抱き上げられた。
『湯上りのそなたも美しいが、紅をはいた姿は格別だ』
至近距離でそんなことを言われて顔に熱が集まる。
『恥じらうそなたはたまらぬな』
そんなに嬉しそうに言わないでほしいと香子は思う。もう心臓が早鐘を打ちすぎて早死にしてしまいそうだった。
『……もう、言わないんです……』
『何故? 我はそなたが愛しくてならぬというのに……』
ストレートに言われて香子はぱくぱくと口を動かすことしかできなかった。香子は玄武の胸に顔を埋めた。玄武は笑んで、そのまま香子を己の室に運んだ。
その夜も、とても甘かった。
ーーーーー
黒月の両親の恋物語については「初恋は草海に抱かれ」をご覧ください。
ライト文芸の新作を4月末から連載しています。
「離島で高校生活送ってます」
南の離島の高校に通う少年たちの青春物語です。動物いっぱいの大自然の中でちょっと変わった生活を送ります。
楽しく書いておりますので読んでいただけると嬉しいです。
もし興味を持っていただけましたら、マイページから覗いてやってくださいませ~
3
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です
氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。
英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる